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【書籍1巻発売中】モブの俺が悪役令嬢を拾ったんだが〜ゲーム本編無視で、好き勝手楽しみます〜(旧サブタイトル:ゲーム本編とか知らないし、好き勝手やります)  作者: キー太郎
第六章 新年度は出会いがいっぱい

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本日休載のおしらせ+おまけ


 ランディが教官達にとっ捕まり、説教を受けていた頃、旧王都の大通りにあるカフェには、あの場から逃げ出し合流したセシリアやキャサリンなど、いつもの面々が顔を揃えていた。


「あー。危なかったわ。あのまま捕まってたら、アタシの優秀すぎる経歴にキズが付くところだったわ」


 パタパタと手で顔を仰ぐキャサリンに、「もうキズだらけじゃん」とレオンが横で溜息をついた。


「ちょっと、どーゆーことよ」

「そーゆ所だよ」


 舌を出すレオンに、「キー」とキャサリンが顔を顰める様子を、セシリアやルーク、そしてユリウス達が呆れたように眺めている。


「それにしても……思わずランドルフ様だけ置いてきましたが――」

「間違いなく怒ってるでしょうね」


 ルークの言葉に、その場の誰もがブルリと身を震わせた。


「だ、大丈夫でしょうか」

「僕、今から先輩のところに――」


 慌てるコリーとアナベルに、ルークが「待てって」と声をかけた。


「アレだ。まあ……コリーとアナベル嬢は大丈夫だ」


 ルークの言葉に、全員が頷いた。それは日頃の行いというか、とにかくランディはコリーとアナベルだけは責める事はないだろう。全員の脳裏には、逆にこの二人だけを逃がそうとするランディが映っている。


「大体お前たちは、あの実験に反対してたろ?」


 ルークの言葉に、コリーとアナベルがゆっくりと頷いた。止めといたほうが……と言っていた人間に、「何逃げてんだよ」という男ではない、とルークがコリーとアナベルに笑いかけた。


「なら俺も大丈夫だな」


 ドヤ顔のユリウスが、自分もコリーやアナベルと一緒にあの実験を止めようとしていた、と話すのだが……


「いや、多分お前は駄目だ」

「は?」

「いやだから、お前は駄目だって」

「なぜだ!」


 思わず立ち上がってしまったユリウスに、周囲から視線が集まる。注目を集めたことを恥じるように、ユリウスが「コホン」と小さく咳払いをして、また椅子に座り直した。


「……なぜ、俺は駄目なんだ?」

「なんとなく……」


 呟くルークに、「な、なんとなく……だと?」とユリウスの顔が強張る。


「俺は止めた方だぞ? やめといたほうが……と」

「やめろ。お前がそんな事言ってみろ。『分かってんならもっと大声で止めろ。声が小せえんだよ』ってぶん殴られるぞ」

「理不尽!」


 机をに両拳を叩きつけたユリウスの頭を「よーしよーし」とリヴィアが撫でている。


「とりあえず……ユリウスはぶん殴られるとして――」

「決定なのか……」


 うなだれるユリウスを他所に、ルークがキャサリンとレオンへ視線を向けた。


「あと一人くらい、ぶん殴られときゃ、あいつも気が済むだろ。馬鹿だし」


 ルークの言葉に、キャサリンとレオンが顔を見合わせ、同時にルークへ視線を移した。


「……なんでアタシ達?」

「そうっすよ」


 同時に口をとがらせる二人に、ルークが「いいか」と身を乗り出して声を落とした。


「あいつは馬鹿だが、人は見てる。レオンなら軽く小突くくらい、キャサリン嬢なら恐らくお咎めなしだ」

「嘘よ! アイツ、アタシの事なら嬉々として殴るわよ」


 頬を膨らませるキャサリンに、「大丈夫だって、多分」とルークが語尾を濁した。


「多分って駄目じゃない。大体アンタが殴られれば――」

「俺はもう頭数に入ってんだよ」


 肩を落としたルークに、全員が「あー」と微妙な声をもらした。恐らく何を言おうともルークが殴られるのは決定事項で、ユリウスともう一人くらい生贄に捧げれば、怒りが収まるだろう、というルークの予想なのだ。


「てか、そもそもあの二人はどうなのよ」

「そうっすよ。エリザベス様も、エレオノーラ様も」

「ランディがあの二人に手を上げると思うか?」


 ルークの疑問に全員が黙って首を振る。


「それなら、あの二人を味方につければ良いんじゃありませんこと?」


 セシリアの発言に、キャサリンが全力で同意した。今からでもランディ達の家に行き、ランディが帰って来る前に二人を味方につけて、怒りを収めさせようという作戦だ。


 そうと決まればセシリアの馬車にアナベル、コリーも同乗する形で、キャサリンの馬車とセシリアの馬車の二台でランディ達の借りている家へと急いだ。


 ブツブツ呟くユリウスの頭を撫でるリヴィア。来たるべき戦いへ向けて手首足首の関節を解すルークなど、各々が準備を整えながらランディ達の家にたどり着いた時には、既に日も暮れた後だ。


「最悪だ……あいつ、帰ってきてやがる」


 家の中に感じるランディの気配に、ルークが顔をしかめるのだが、ここまで来て帰るわけにはいかない、と両頬を叩いた。


「よし、行くぞ――」


 生唾を飲み込むルークが門を開いたその時――


『アハハハハハハ』


 ――大きな笑い声が屋敷の中から響いてきた。


「今の……」

「リザの声ですわ」


 怪訝な表情で顔を見合わせるキャサリンとセシリアに、ルークとユリウスが恐る恐る扉に近づき、ドアノッカーで扉を叩いたのとほぼ同時、扉がゆっくりと開いた。


「よぉ。雁首揃えて何しに来たんだ?」


 満面の笑みのランディを前に、「いや、ちょっとな……」とルークが声を上ずらせた。


「大方リズとエリーを味方につけて、俺を押さえようって魂胆だったんだろ?」


 完全に行動を見抜かれた事に、ルークとユリウスが思わず頬を引き攣らせた。


「残念だったな。既にリズとエリーは俺サイドだ。つまりテメーらは……」


 ランディがポキポキと指を鳴らして扉から出てきた時、「ま、待って下さい」と頬を上気させ、息の荒いリズが扉から顔を見せた。


「ランディ……ハァ……わ、私達に免じて、皆を――」

「ハァ……そ、そうじゃ。妾達を腰砕けにした事で……ハァ…今回は満足しておけ」


 こちらも頬を上気させ、息の荒いエリーが現れた事で、全員の冷たい視線がランディへと突き刺さった。


「腰砕け?」

「顔も赤いし、息も荒い……」

「アンタ――」


 どうも怪しい雲行きに「は? え?」とランディが慌ててキョロキョロするのだが、勘違いしたキャサリンとセシリアが盛大に顔をしかめて「「破廉恥(ですわ)」」と声を荒げた。


「ちっげーよ! そんなんじゃ――」

「じゃあ一体何なのよ! その……顔も赤いし!」

「息も荒いですわ!」


 まくしたてる二人に、「やめろ、大声を出すな!」とランディが周囲を気にするのだがもう遅い。


「ランドルフ様、詳細をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 現れたのは家を見張っていた侯爵家の影である【暗潮】だ。


「こ、これには深いわけが――」

「ええ。ですからその深いわけをお聞きかせ下さい」


 マスク越しでも分かる「ニッコリ」とでも言ってそうな笑顔の横から、キャサリンとセシリアが顔を出した。


「私もですわ」

「アタシも」


 そうしてランディは怒っていたことなど忘れ、女性陣と【暗潮】に詰められ、必死で誤解を解くのであった。

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