本日休載のおしらせ+おまけ
セドリック・がアランに頼み込んで決定した、ヴィクトールでの稽古。その初日、セドリックはガラにもなく緊張した面持ちで、ヴィクトール邸に設置された転移門から現れた。
「お久しぶりっす」
「ウォーカー卿……?」
迎え入れてくれたハリスンに、セドリックが思わず眉を寄せた。本来ならハリスンは、既に旧王都に向かったランディ達に同行しているはずなのだ。
「若から初日の案内を頼まれまして」
肩をすくめたハリスンが「こっちっす」と廊下の先へと促した。
「ウチは良くも悪くも実力主義っすから」
歩きながら笑うハリスンに、セドリックも成る程と頷いた。
「歓迎されてない、わけか」
自嘲気味に笑うセドリックに、「いえ、逆っす」とハリスンが振り返った。
「逆?」
「はい。逆っす」
再び歩き始めたハリスンが言うのは、あのエリザベスの兄が来るという事で、全員が歓迎ムードらしいのだ。
無理もない、とハリスンが続ける。エリザベスには、皆が世話になっている上、確実にランディの伴侶となる人間だ。
つまり自分達にとって、仕えるべき人間の兄がくるのだ。皆が歓迎しないわけがない。
「でも、それじゃあ面白くないっすよね? エリザベス様の兄上だからと、忖度されたいっすか?」
振り返りニヤリと笑ったハリスンに、セドリックが黙ったまま首を振った。
「成る程……実力主義、つまり皆に実力で参加していると思わせろ、と」
「そーゆー事っす」
再び歩き出したハリスンが、その役目としてランディがハリスンを遣わしたのだと言う。
「どのみち放っておいても、セドリック様なら実力を示せるでしょうけど……。『やるなら始めっから全開の方が良いだろ』、だそうっす」
いつの間にか屋敷を抜けた二人の前には、ヴィクトールの訓練場が見えてきた。
「なので、皆の前であっしと手合わせしましょうか」
訓練場を前に振り返ったハリスンに、セドリックはブルりと身を震わせた。そのくらいハリスンから発せられる気配が、大きく強かったのだ。
「……望むところです」
それでも頷いたセドリックに、ハリスンが笑顔で「良いっすね」と頷き返した。
こうしてセドリック・フォン・ブラウベルグは、真の意味でヴィクトールに迎え入れられる事になる。
高みを――いや、深淵を目指す、セドリックの長い旅路がはじまったのである。
ちなみにランディの耳に届いた、セドリックのヴィクトール騎士隊初参加の内容は……
「こ、これがリザの愛の重さか」
ヴィクトール養成マントを重ね着し、喜びに満ちた笑顔を浮かべるツワモノとしての話であった事は、言うまでもない。





