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【書籍1巻発売中】モブの俺が悪役令嬢を拾ったんだが〜ゲーム本編無視で、好き勝手楽しみます〜(旧サブタイトル:ゲーム本編とか知らないし、好き勝手やります)  作者: キー太郎
第六章 新年度は出会いがいっぱい

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第285話 選挙戦から遠ざかってますが、見守り下さい

 昼食後、午後の休みを利用して魔道具研究会の訪問を決めたランディ達は、目的の研究会が入っている場所を目指していた。


 オカルト研究会などがあるクラブハウスを抜け、第二クラブハウスで、怪しげだが楽しそうなクラブや研究会に後ろ髪を引かれ、そうしてたどり着いたのは、学園の裏庭だ。


 自然豊かな森の様な裏庭。その木々を抜けた先、小さな階段の向こうに聳えるのは、クラブハウスより少し小さな建物。


 煉瓦造の二階建て。苔むした壁や、古びた扉、そして曇ったガラスと、かなりの年季を感じる建物だが、処々確実に増築されたあとや、あちこちから出る煙突のようなパイプが、異様な現役感を醸し出している。


 歴史ある建物に施された、違法増築と魔改造パイプ。何ともアンバランスな見た目に、ランディがため息混じりで口を開いた。


「ここが?」

「はい。魔道具研究会ですね」


 リズが頷きつつゴクリと唾を飲み込んだ。


「なんつーか、出そうな場所だな」

「実際、出るらしいぞ?」


 ニヤリと笑ったエリーに、「な、何で知ってるんですか!」とリズが慌てて振り返った。


「つい最近まで、誰かさんと記憶を共有していたゆえな」


 ケラケラと笑うエリーに、リズが不満げに頬を膨らませた。実際エリーの言う通り、ここは七不思議とまではいかないが、学園時代から「ゴーストが出る」と噂される場所の一つなのだ。


「大丈夫です。ゴーストの正体は、この淀んだ空気と、皆の恐怖で――」

『ポヒー』

「きゃっ!」


 不意に響いた音に、リズが飛び上がってランディに抱きついた。


 謎の音とリズの悲鳴が、静かな森に反響する中、


「あれだ、あれ」


 苦笑いのランディが指差す先には、蒸気を吐き出すパイプがあった。


「し、知ってましたよ」


 声を裏返らせ、何事もなかったように振る舞うリズに、ランディとエリーが顔を見合わせ笑みを浮かべた。


「本当ですからね!」

「分かってるって」

「そういう事にしておいてやろう」


 ニヤニヤと笑う二人に、リズが「本当です」と頬を膨らませて扉へ近づいた。見るからに重そうな木製扉は、上に『魔道具研究会』とこれまた年季の入った看板が掲げられている。


「ごめんください」


 扉同様、年季の入ったドアノッカーで、リズが扉を数回ノックした。まだ午後の授業もある時間だが、この研究会に所属しているのは、大抵が〝変わり者〟らしく、大体誰かがいるらしい。


 そんな事前情報通り、『はーい』と扉の向こうから元気な声が聞こえ……重そうな扉がゆっくりと開く。


「何か御用でしょうか?」


 開いた扉から、三つ編みメガネの女子生徒が顔を覗かせた。


「あれ?」


 見覚えのあるその顔は、間違いなく遺跡探索キャサリン班にいた女子生徒である。


「あ、ランドルフ君、エリザベス様、久しぶり」


 フランクな言葉で手を振る女生徒に、「こちらこそ」とランディも手を挙げ。


「それと初めまして、エレオノーラ……さん、でいいのかな?」


 エリーの事はランディの従者として、学院に届けてある。まさか初代聖女で、古の大魔法使いとは知らぬ女生徒のフランクな態度に、エリーは「うむ、くるしゅうない」と満足気に笑顔を返した。


「面白い子ね」

「まーな」


 肩をすくめたランディに、「大歓迎よ」とエマは笑みを返した。


「にしても、アーカナムさん……? は魔道具研究会の人間だったんだな」


 首を傾げたランディに、「エマでいいよ」と微笑んだエマが、一年時からずっと魔道具研究会に所属していた事を教えてくれた。


「そりゃ凄い。ならちっと見てもらいたいモンがあるんだが」


「いいよ。中で話を聞こうか」


 エマが重そうな扉を全開にし、三人を中へと促した。



 研究室、という名の謎建築物の中に入った三人を迎え入れたのは、何とも言えない異空間であった。まず目に飛び込んできたのは、元はホールだったのだろう場所に置かれた、ソファやコーヒーテーブルだ。まるで応接室のような雰囲気で、今も数人の生徒がそこで談笑中だ。


 誰もがランディ達に気付いても、「ようこそ」と歓迎を示すだけで、特に敵意などは感じられない。


 そんな生徒達の向こうに見えるのは、二階へ向かうための両階段だ。残念ながら右側は瓦礫の山で埋まっているのだが、それを乗り越えて二階へ向かう生徒が見える。


「なんつーか、工房って雰囲気じゃねーな」


 周囲を見回すランディに、エマがここは所謂談話室だと教えてくれた。


「憩いの場を決めとかないと、全部が埋まっちゃうから……」


 遠い目をして両階段を見つめるエマに、ランディ達も「ああ……」と納得する声をもらした。あの階段を埋め尽くしているのは、単なる瓦礫ではなく、素材や試作の山なのだろう。


 ランディ達も夢中になれば、似たような事をするので分からなくもない。


「それにしても、存外歓迎モードなんじゃな」

「それ、私も思いました」


 頷く二人は、談笑中の生徒達を見た瞬間、身を引き締めてただけに、肩透かしだったのだろう。


「あー。今ランドルフ君大変だもんね」


 苦笑いのエマが教えてくれるのは、魔道具研究会のメンバーは、良くも悪くも自分達の研究にしか興味がない事だ。


「学院の成績ギリギリな人とか、生活力皆無な人とかもいるよ」


「何となく想像出来るな」


 苦笑いを返すランディに、エマが「こっち」と談話ホールの右を指差した。


「とりあえず、設計室で話を聞くよ」


 ホールから右に見える部屋へ歩くエマに、ランディ達が頷いて後に続いた。


「うちは放っとくと、色々物が増えちゃうからね。設計、試作、実験は決められた部屋で、ってルールがあるんだ」


 設計室の扉を開けたエマが、実験に限っては外でやる場合もあると付け加えた。


 通された設計室は、少しカビと埃の臭いがする薄暗い部屋だった。


 壁に掛けられた黒板と、それ以外を埋め尽くす本棚。部屋の中央には寄せ集めた机と椅子が乱雑に並び、それらを囲むのは、本棚から溢れたノートやメモ書きだ。


 外にあった僅かな光すら遮るカーテンのせいで、魔導灯が照らす光だけが、この部屋を怪しく照らしている。


「スゲー本の数だな」

「こっちの黒板には、分解された魔導回路ですね」


 本棚の中には、それぞれ先輩が残した設計図や、手書きのノート、更には古い文献まで、様々な物があるのだという。


「その分解された魔導回路は――」


「伝達、と……共鳴、秘匿、あとは転送じゃな」


 エリーの言葉に、エマが驚いて振り返った。


「分かる……の?」

「妾を誰と心得る」


 カラカラと笑うエリーだが、「いや、俺の従者だろ」とランディがジト目で突っ込んだ。


「ここ最近魔道具研究会で、ホットな魔道具の案だけどね……」


 現在完全に暗礁に乗り上げているのだという。


「魔道具研究会は、【星詠みの塔セレスティアン・ピナクル】へのパイプもありましたよね?」


 首を傾げるリズが言う通り、魔道具研究会出身の卒業生の中には、【星詠みの塔セレスティアン・ピナクル】へ勤めている人間も少なくない。


「先輩達の殆どが、帝国に引き抜かれちゃって」


 王国が自治区となってしまった事で、【星詠みの塔セレスティアン・ピナクル】に在籍していた、優秀な魔導士や、魔道具士が軒並み帝国の研究機関へ出張という名目で引き抜かれたそうだ。


 その影響で、【星詠みの塔セレスティアン・ピナクル】では人手不足のため、魔道具研究会の面倒まで見ていられないのだとか。


「帝国も迷惑極まりねーな」


 王国が良かったとは言わないが、それでも普通に暮らしていた生徒や市民からしたら、変化全てを歓迎できるわけではないだろう。


「まあ仕方ないよね」


 寂しげに黒板を見つめたエマに、ランディが「よし!」と机を叩いた。


「交換条件と行こうぜ。俺達の試作を手伝ってくれるなら、俺達が魔道具研究会の試作を手伝うぜ」


 胸を叩いたランディに、「でも……」とエマが困った表情を見せた。


「いいの? だって――」

「いいんだよ。ギブアンドテイク、それに楽しそうは正義だ」


 高らかに笑うランディから、エマがリズへと視線を移した。その顔にありありと書かれているのは、「生徒会長選挙は?」という疑問だ。


 リズが出来るのは、エマに苦笑いで首を振るだけ。もうランディの頭の中は、生徒会よりも、「楽しそう」という興味が完全に埋め尽くしている。


 そしてそれは、ランディだけでなくエリーと、そしてリズもだ。


「じゃあ早速私達の用事を済ませましょうか」


 リズに促され、ランディが胸元からコピー機の設計図を取り出した。



 ※明日は所用のため、更新出来ないかもしれません。

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