第98話 触るな危険
『時を止める予定なら、前もって相談しなさい!10秒くらいよ』
焦っている神の声が、どこか嬉しそうだ。
賭けに勝ったことで、神は消滅するリスクを回避できた。
魔力念糸で寄生呪紋をぐるぐる巻きにして、凝縮して丸める。
直接触らなければ、呪紋の時は止まったまま。
魔力念糸で球状になった呪物ができた。
「あれはどこにあるんだっけ?」
空間収納のどこかにしまってある壺を探す。
暇なときに漬け物でも作ろうと思って、買っておいた壺がどこかにあるはず。
「あったあった、これよ」
掌の上に置けるくらいの蓋付きの壺。
空間収納は基本生きているものは収納できない。
だが、時を止めた状態であれば生命活動は止まっている。
壺に封じて、そのまま空間収納の中に入れたら収納できると考えたのだ。
“触るな危険”この言葉を紙に書いて蓋に貼付ける。
呪紋の入った壺は問題なく収納できた。
時が動き始めたら、空間収納の中の寄生呪紋がどうなるのかはわからない。
もしかしたら消滅するかもしれないし、壺自体が無機物だからそのまま保存される可能性が高いと思っている。
呪紋が、漬け物みたいに熟成されたら何か嫌だな。
不味そうな漬け物はいつか処分しよう。
『そろそろ時間よ。ソエルもローレライも大変ね』
「んっ?なんか言った?」
神の言葉が上手く聞き取れなかったのだが。
時が再び動き始める。
マーサの胸の呪紋は完全に無くなっている。
驚愕したマーサの顔を初めて見たので、これはかなり貴重だ。
「なんで胸の呪紋が消えているんですか?人では解呪ができないはずなのに……」
きっと自分なりに解呪の方法を試みたんだろう。
神と同格の呪いを、人が解呪できるはずがない。
加護の力を使っても、雷龍王の怒りが強すぎて解呪はできなかった。
そのため解呪ではなく、マーサから呪紋を剥がす選択肢をしたのだ。
『あとで魔石を補給させなさいよ』
全身に少し神のビリビリ攻撃を受ける。
相談もせずに、無理やり時を止めさせた仕返しなんだろう。
なるべく良い魔石をあとで献上しよう。
「胸の呪紋は無くなった。これでマーサは俺のものだよね?」
マーサの満面の笑みを見て、ほっとしてしまう。
あれっ?体に力が入らない。
華奢なマーサに倒れ込んでしまう。
「私はこれからずっと、スノウ様のものですよ」
自分の耳元で嬉しそうなマーサの声を聞いて、ブラックアウトした。
98話です。
マーサの呪紋の話はこれで終わります。お風呂場でやることではないですけどね(笑)。
今後もどんどん面白くなります。楽しんで頂けたら嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。




