第97話 強欲なスノウ
「目を閉じて、少し触るよ」
そう言って、胸の呪紋に優しく指で触れる。
「んっ」
普段聞いたことないマーサの声に少し動揺してしまうが、煩悩を抑えて今は集中する。
雷龍王が直接付けた呪紋は、人族が付ける呪紋とは格が違う。
この世界の神と同格とされる存在が付けたもの。
神の呪いと同じだ。
運が良いのは自分が雷龍王の加護を持っていること。
解呪を試してみる。
雷龍王の加護に反応して胸の呪紋が浮かび上がる。
呪紋の一カ所が心臓に根付いているようで離れない。
心臓に直接繋がっている?
無理に呪紋を剥がすとそのまま死ぬだろう。
『思ったより呪紋の根が深い。雷龍王の怒りの凄さがわかるわ』
自分の中にいる神が冷静に話す。
マーサは雷龍王の暗殺に失敗したが、義母を大激怒させる何かをしたのだろう。
この華奢な体なのに何をしたのか、今度聞いてみたい。
『生きている呪紋、寄生するタイプと思っていいわ』
加護の力で呪紋を解呪しようとするが、糸一本くらいで繋がっていて離れない。
「生きている呪紋か……」
自分の中で悪い考えが思いつく。
この呪紋を自分に寄生させたらどうなる?
『もしかしたら呪紋を自分に移そうとしてない?失敗したらマーサの代わりに貴方が囚われる。最悪私も消えるかもしれない』
無言になったことで、神が自分の考えていることを予測したようだ。
神の声から、少し意気消沈している感じが分かる。
失敗した時のデメリットが大きすぎるからだ。
いまの自分にはマーサの呪紋を剥がす方法しか思いつかない。
「強欲と呼ばれたからにはマーサの全ては貰う。それが呪紋であっても」
ゆっくりと浮かび上がった呪紋を自分の心臓に近づける。
魔力念糸で呪紋を自分の心臓に誘導する。
「心配しなくていい。何とでもなる」
マーサに向けたものだったのか、自分の中にいる神に向けたものか自分でも分からない。
マーサの胸の呪紋から触手のようなものが出てきた。
自分の心臓を次の宿主として、細部を観察するように触れてくる。
次の瞬間。
マーサの心臓から呪紋が離れ、自分の心臓に向かって飛びついてくる。
「神さま!!」
『パーフェクトワールド(完璧な世界)』
自分の周囲にある、生命あるもの全ての時を止める。
呪紋が生き物なら、時が止まるはず。
賭けに勝った。
呪紋は、マーサと自分の体の隙間、空中で動きを止めていた。
97話です。
皆さんこんばんは。仕事帰りに雨に当たりまして、全身びしゃびしゃに濡れています。
明日風邪を引かなきゃいいんですが。
次回水曜日の小説投稿は朝早いか、夜遅いかのどっちかになりそうです。
仕事はしんどいですが、小説を書くことは苦にならないです。
楽しみにして頂いたら幸いです。よろしくお願いします。




