第9話 綺麗すぎる報告
ギルドに戻ると、血と酒の匂いがまとわりつく。
朝ほどの混雑はないが、依頼帰りの冒険者たちも多い。
「報告だ」
リーダーが受付嬢に声をかけ、依頼書を出す。
スノウはリュックから素材をカウンターに乗せる。
受付嬢の視線が紙の上を滑る。
フォレストウルフ、七匹討伐。
負傷者、なし。
「……確認します」
淡々とした声で、事務作業を行っている。
「ずいぶん早かったな」
後ろから、別の冒険者が口を挟む。
「この辺り、群れに当たると面倒だろう」
「結果が全てだ」
リーダーが短く返す。
「パーティ三人と荷物運びで、よくやるもんだ」
納得していない顔だが、口を閉じた。
受付嬢が顔を上げる。
「討伐、確認しました。報酬はどうしますか?」
「全額硬貨で」
リーダーの顔は少しにやけている。
「この辺りの討伐依頼って、だいたい怪我しますよね?」
女メンバーが、何気ない調子で言う。
「そうですね」
受付嬢は小さく頷く。
「ここは雷龍国ノクティスですから。他の国より討伐依頼の難度は高いです」
硬貨を数えながら話す。
「今回は負傷者もなく、何よりです」
それで話は終わった。
報酬の分配はリーダーが決める。
荷物運びと解体だけだ。
報酬も、日雇いより少し色がついた程度。
「じゃあ解散だな」
ギルドの外に出て、リーダーが言う。
「急な荷物運び、助かった。また縁があれば頼む」
「ああ」
軽く手を上げて、パーティは解散する。
女メンバーだけが、少しだけその場に残る。
「怪我人が一人もいないって……普通あり得る?」
視線が、一瞬スノウを向く。
怪我しないように、誰かがあの場をいじってたのかな。
……やっぱり変な気がする。
すっきりしない表情のまま、女メンバーも去って行く。
「気にされてるね」
ソエルが呟く。
「そう?」
「今日の、ちょっとやり過ぎたんじゃない?」
「調整はしてる」
「その“調整”が普通じゃない」
小さく笑う。
「この国って、本当に実力、効率重視でしょ」
「雷龍国ノクティスだからな」
「でしょ?今日の無駄がなさすぎて気持ち悪いのよ」
否定はしない。
「まあいいけど」
ソエルはあっさり話を切る。
「どうせ誰も証明できないし」
気づかないなら、その程度だ。
「で、どうするの?」
ソエルが軽く言う。
「今日はもう休む」
短く答える。
「そうね。それがいいわ」
人通りの中に紛れ、宿を目指す。
今日はもう、何も起きない。
第9話です。
今日でGWも最後……ゆっくり出来ませんでした。
明日から仕事頑張ります。
また明日投稿します。よろしくお願いします。




