第七話
雪山の登山をする場合は、念入りに寒さ対策や雪崩、休憩やベースキャンプなどの場所の確認や現地の情報が大事になる。ダンジョンクエストもしかりだ。本来ならパーティで地図のマッピングをして、周囲を警戒しながら進んで行く。ダンジョン内で、31層の洞窟エリアを私服のパーカーで進んで行く・・・裸で雪山を登山する死にたがり、大馬鹿やろうと思われるかもしれない。
各職業にはスキルが存在し、ドールマスターにも魔力念糸というスキルがある。簡単に言うと魔力の糸を体から放出し、操作するスキルと言った方が説明しやすい。
人形劇の人形が糸で吊り下げられカクカクと動くとこを見たことはあるだろうか?お祭りの大道芸人が人形と一緒に踊ったりしているのを見たことがあるだろうか?
ドールマスターも手から魔力の糸を出して操っていると思われている。間違いではないが、正解でもない。魔力念糸は体から放出できるため、手でも足でも頭でも目でも・・・体の細胞から出すことができる。手でしか出せないと思われていること自体が知名度もなく、研究されていない不人気な職業なのだ。
適当にダンジョンを進んでいるわけではない。きちんとマッピングをしながら進んでいる。端から見るとパーカーを着てちょっと散歩をしているように見えるが、実際は体から透明な魔力の糸を放出しダンジョン内で索敵を行っている。意外とこれが便利で、地形の構造や罠の位置、魔物・魔獣の数や動きまでわかってしまう。
魔力念糸に4つ反応があった。こちらに向かってくる反応が2つ、30m位先の天井に2つ何かがある。マナキャンディーを口に咥えながら、前方から向かってきている二匹の魔物に対して迎撃態勢を整える。魔力念糸の感覚だと四足系の魔獣が二匹。魔獣が目視でも確認できる距離に来ても焦って歩くペースを崩すことはない。なぜなら二匹の魔獣は直前で蜘蛛の巣に引っかかっているように止まっているのだから。
透明な魔力念糸は通常はそよ風程度、肌に何か触れたかな?位の魔力の微調整をしているが、ダンジョン内では自分にある程度距離が近づくと透明な魔力念糸が濃くなるように調整しているため直前で動きが強制的に止まってしまう。目視で確認できる距離であれば魔力念糸により確実に拘束することが可能なわけだ。
魔力念糸は拘束魔法と変わらないことができる。加えてスカウトの初期スキル気配察知も使用しているため、不意打ちに引っかかることはまずあり得ない。問題なのは魔力消費が非常に悪い(燃費が悪すぎるのだ)。
二匹の魔獣はロックウルフ。外皮が岩石系のため切断武器が入りにくく殴打・打撃系の武器で攻撃するか、ひっくり返すまたは盾で受けて内側の柔らかい皮膚を狙うのが定石である。今回は残念なことに戦いという戦いが起こることはない。
例えるなら肉屋が吊された肉を卸す作業。二匹の無防備なロックウルフの喉と胸にダガーを入れ、魔石を取り出す作業。手で直接行う必要もない。魔力念糸でダガーを動かせばすむのだから。これが自分の通常の戦いなのだ。
北海道は連日30℃超えています。
小学校・中学校が休校になった地域もありました。
暑い・・・本当に暑いです。涼しい北海道はどこにいったのやら。
また2週間後会いましょう。