第7話 鎖という選択
「鎧は俺がやる」
短く言い切る。
それだけで、黒い鎧はドルガンのものになる。
視線が、床に広げられた素材へ落ちる。
「で」
「その素材で、何を作る気だ?」
間。
リッカの口元が、ほんの少しだけ歪む。
「決まってるでしょ」
一歩、前に出る。
「鎖」
ドルガンは、眉を寄せる。
「鎖はやめとけ」
短く、切り捨てる。
間を置かず、リッカが返す。
「この素材見て、それ言う?」
視線がぶつかる。
炉の音だけが、やけに響く。
「流れがいいんだよ、これ」
角を指で弾く。
「振るより、流す方が――この子は活きる」
「だから鎖か?」
「固定武器にしたら、半分は死ぬね」
ドルガンは鼻で笑う。
「扱えねぇもんは武器じゃねぇ。昔、それで何人も潰れてきた。」
角を手に取り、断面に触れる。
「鎖はな、間合いも重さも毎回変わる」
「普通はね」
「その普通が大事なんだ」
被せるように言う。
「毎回同じ動きができるのか?」
誰も答えない。
「一度できても意味がねぇ。再現できて、初めて扱える」
炉の中の火が弾ける。
「でも、この人ならできる」
リッカの視線が、スノウへ向く。
ドルガンもまた、同じように視線を向ける。
「……」
スノウは何も言わない。
「反応が良すぎる素材だ」
ドルガンは静かに言う。
「流せば流すほど、返ってくる」
角を拳で軽く叩く。
「制御しきれなきゃ、こいつは暴れるぞ」
「それでも、活かす価値はある」
リッカは一歩も引かない。
「この素材は、“そう使え”って言ってる」
「扱えなきゃ、死ぬぞ」
「でも、扱えるなら?」
視線が、スノウに集まる。
選択を待つように。
スノウは、ゆっくりと口を開く。
「鎖でいい」
短い一言が落ちる。
ドルガンは、しばらく何も言わない。
手の中の角を、もう一度見下ろす。
「……好きにしろ」
低く、吐き出す。
リッカが、わずかに笑う。
「ただし」
空気が締まる。
ドルガンの視線が、スノウを射抜く。
「こいつは、遊びで扱うもんじゃねぇ」
「制御を誤れば、自分を削る。周りも巻き込む」
静かに言い切る。
「条件だ」
リッカの眉がわずかに動く。
「扱えねぇと判断したら、即捨てろ」
「もう一つ、こいつが暴れないように“首輪”をつける」
リッカが反応する。
「制限かけるの?」
「当たり前だ」
即答。
「最初から全部引き出そうとすんな」
視線が、リッカに向く。
「壊れるのは武器だけじゃすまねぇぞ」
重い一言。
「……いいよ、その条件」
「長さは絞る」
「まずは制御だ。伸ばすのは後でいい」
静かに言い切る。
「段階を踏め。死にたくなきゃな」
スノウは、短く頷く。
「……分かった」
7話です。
今日は仕事がハードでした。
毎日投稿出来ているだけでも良しとします。
また明日もよろしくお願いします。




