第73話 オブシディアンの中身
オブシディアンと呼ばれるAランク冒険者。
その黒色の全身鎧の前側の装甲が外れる。
その中から、パーカー姿の女の子が現われた。
死んだと思われている魔女のアイシャだ。
「アンデッド魔女のアイシャです」
ゾンビのような動きをしながら出てくる。
本人は場を明るくするために、冗談のつもりだと思うのだが……これはたぶん滑っている。
もう少しマシな登場の仕方がなかったのかと苦笑いするしかない。
「はぁぁぁぁ?」
現代表と女主人は驚愕の声、そして副ギルド長はワナワナしている。
ローレライの顔を見てはいけなかった。
般若の如く怒りのオーラが見える。
「スノウ様、これはどう言うことでしょうか?」
凄く丁寧で優しい声。
ただ眼が怖いのよ。
顔は笑っていても眼が、突き刺さる視線が痛い。
目の前にメデューサがいるようだ。
あと両手に魔力の反応があるのですが、今から何をしようとしていますか?
「色々と話すことはあるんだが、アイシャは35層で一度死んでいる。エリクサーですぐに蘇生して命を取り留めた。アンデッドじゃないから。あとは本人から聞いてくれ」
本当は自分から今回の事の顛末について説明する予定だったが、ローレライの殺気からそれができないと判断。
アイシャ本人に、説明を丸投げすることにした。
「あらためて、おばば、お母さん。ただいま。アイシャは無事に戻ってきましたよ」
その言葉に、魔女の現代表と女主人が駆け寄ってアイシャを抱きしめる。
冒険者は死んだら終わりだ。
生きて戻ってくるまでが冒険なのだから。
生きて戻れたこと、家族と再び会えたこと、感動する場面だ。
こっちはローレライ嬢に後ろから抱きしめられて嬉しいのだが、実際はチョークスリーパー(首締め)で昇天しそうになっている。
「詳しい説明を求めます!」
ローレライの言葉に怒気を感じるので、なだめながら説明する。
アイシャの方はパーカーをめくっているので、きっと左胸をクイーンアントに貫かれた説明をしているのだろう。
さて今回の35層のクイーンアント三体について、疑惑が残っている。
「副ギルド長ローレライに調査を頼みたい。オブシディアンからの依頼で、35層クイーンアントの最近の討伐について調査して欲しい。」
真面目な声でローレライに話す。
「クイーンアントは定期的に間引きしているはずです。今回のクイーンアント三体、ストーンアントの異常な数、そして魔王の誕生。明らかにおかしい。すぐに調査をします。」
ギルドは定期的にクイーンアントを間引いている。
だが実際はBossが三体もいた。
おまけに魔王が誕生するまでに至っている。
おかしいのだ。
普通ではあり得ない。
人為的な何かを疑ってしまう。
「あとこれを。」
35層の宝物庫らしき場所にあった冒険者のタグと遺品を渡す。
「ここ最近見なくなった冒険者パーティですね。35層で亡くなっていたんですね」
受け取ったローレライは、辛そうな顔をする。
「遺族がいれば遺品を届けて欲しい。オブシディアンの預金から少しお金を包んであげてくれ」
これで話も終わってゆっくりできる、そう思っていると広場の外が騒がしくなってくる。
レイドクエストで集まっていた冒険者たちが痺れを切らして、集まってきたのだ。
広場にこれだけストーンアントやクイーンアントの残骸があれば、周りがガヤガヤして来るのは当たり前。
魔王の首は現代表と女主人に見せてすぐに回収しているため、魔王の存在はわからないだろう。
ある冒険者が声をあげる。
「オブシディアンの中身は女の子なのか?」
この声に注目が集まってしまう。
全身鎧の回収を忘れていた。
先に広場に向かったのは五人。
魔女の現代表、バトルアクスの戦士、副ギルド長、ポーターの自分、そしてオブシディアン。
オブシディアンの鎧の前側の装甲が外れている。
その中から現われたのは“アイシャ”になるわけだ。
やってしまった。
これはまた面倒なことになりそうだ。
73話です。
皆さんこんばんは。アイシャの登場シーンと滑った所を想像すると、にまにま出来ます。
キャラの個性を文章に書くことは、簡単なようで難しいです。
これからもキャラの個性を見て、皆さんに推しができると嬉しいです。
次回は金曜日予定です。さすがに、明日は投稿出来ません。
次が気になる作品をまた書いて行きます。よろしくお願いします。




