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第72話 アイシャの生死

「最初にこの帽子を返そう。アイシャ嬢の帽子で間違いないと思うのだが」


現代表とバトルアクスの戦士が確認する。

表情はかなり複雑で悲壮感が見られる。


「魔女の帽子……ベールには私の付与魔法をかけているのさ。まあ変な男に騙されないように虫除けと言っているがね。持ち主が死ぬと管理している魔石が割れる。あの子は死んだんだね」


鬼の目にも涙、いや魔女の目にも涙か。

実際は隣の鎧の中に居て、ピンピンしているため騙しているような気分になる。

俺は死んだとは一言も言ってはいない。


「35層で何があったか教えてくれるかい?」


バトルアクスの戦士、パン屋の女主人から沈んだ声が聞こえる。


「その話をする前に、まずオブシディアンが受けたストーンアント一斉駆除の内容を見て貰う」


空間収納から兵隊のストーンアント、将軍クラスのアント、ストーンクイーンアント。

そして最後に黒紫色のクイーンアントを外に取り出す。

毎回のことだが、よくここまで空間収納の容量が増えたもんだと自分を褒めてやりたい。

ギルドの広場が一気に狭くなった。

この異様な駆除数はさすがにローレライの表情も驚いている。


「これはギルドで予測していた数ではないです。明らかにダンジョンの氾濫状態に近い。クイーンアントが三体いることは異常です」


いつもキリッとしているローレライの焦った顔は新鮮だ。


「この黒紫色のクイーンは特殊個体……こいつ皇帝クラスか」


女主人の呟く声から苛立ちがみえる。


「取り出すか悩んだのだが、これを鑑定して貰えたら事の重大さがわかると思う」


アダマンタイトの魔王の首を現代表に渡す。


「アダマンタイトアント・ロード……魔王か。35層にこんな化け物が居たのかい?」


さすがに現代表も持っている首が魔王とわかるとひっくり返りそうになる。


「居たと言うよりも、皇帝クラスのクイーンアントが死に間際に残した卵が孵化した。大変な目にあった」


その後、神さまに会ったりしていることはさすがに言わない。


「35層にこれだけの大群が居て、生き残れるかい?」


この状況は明らかに異常。

いま集まっている冒険者たちで、レイドクエストを検討するレベルなのだから。


「この状況なら一人で生き残ることは無理だ。私でも厳しいだろう」


女主人の落胆した声。

もしかしたらアイシャが、どこかで生きているかもと思っていたかもしれない。

騙している状況になっているため心苦しい。


「将来を期待されたアイシャ嬢には、自由がなかったと噂で聞いていた。もう自由と言うことで良いんだな」


現代表と女主人に問いかけてみる。


「魔女の一族の中で歴代最高の珠玉と思って厳しくし過ぎたね。最近は反発が多くて……それでダンジョンに行くことが増えていた。私が追い込んでしまったね」


現代表のうなだれた姿が嘘ではないことがわかる。


「面倒くさいことを婆さんに任せっきりで、代表を続けさせた私にツケが回って来たのさ」


「死んでしまったらもう自由さ。この老骨が先に逝けばいいのに、あの子には先があったのに」


二人の泣き崩れた姿をみると、俺がもう限界だ。


「副ギルド長にも立ち会って貰って、自由の言質は取った。いい加減出てこい」


隣に立っているオブシディアンの鎧をコンコンと叩く。


72話です。

皆さんこんばんは。本当は明日小説投稿予定でしたが、是非読んで貰いたくて出しました。

大人になれば自由はどんどん無くなります。小説を書いている時は何も縛られない自由です。

今後も楽しんで貰えるように頑張ります。次回は明日予定です。

応援よろしくお願いします。


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