第71話 魔女の帽子
「失礼なそこの婆さん以外に喧嘩を売るつもりも買うつもりもない。あといつも美味しいパンをありがとう」
後半は威圧のない優しい声で反応を伺う。
周りの冒険者は美味しいパン?何を言ってる?と渋い顔をしている。
もしこの言葉に反応するなら、バトルアクスの戦士はきっとあの人だろう。
違っていたらかなり無意味で恥ずかしい発言だが、近付いて来た時に微かにパンの香ばしい匂いがしていた。
あの戦士はパン屋の女主人、間違いないはず。
戦士は背中のバトルアクスに手をかけるのをやめ、現代表の顔を伺う。
正解だったようだ。
「救出クエストの段取りで忙しい私の時間を取らせる面白いものがあるとは思えないね」
現代表としてのプライドがある。
ここはさすがに乗って来ない。
明らかな拒否。
「じゃあ後悔はするなよ」
空間収納からある物を取り出して頭に被る。
魔女の帽子、正確にはアイシャの帽子を被る。
クイーンアントを倒した時に引っかかっていた帽子をそのまま収納していたのだ。
「何故その帽子を……お前が何故それを持っている」
現代表の驚きの表情から怒号と殺気は放つ。
怒髪天とはきっとこのことだろう。
場の雰囲気が一触即発、戦闘がいつ始まってもおかしくない異様な雰囲気に変わっていく。
「私の目の前で、ギルド内で私闘を始めるんですね?やるなら冒険者ギルド全支部を敵に回す覚悟でやってくださいね」
副ギルド長、ローレライが怖い。
笑っているけど眼が笑っていない。
それはどこの女の持ち物よ?と眼で訴えている。
現代表を煽りすぎてしまった感もあるため、一度クールダウンへ。
「オブシディアンは35層のクイーンアントの討伐クエストを受けて戻って来ている。この帽子が35層にあった理由を説明したいが、たかがポーターの話を聞きたくないならこの話はなしでいい」
隣の戦士に促され、観念した現代表が渋々ながら頷く。
床に倒れている3人の介抱を頼んで、オロオロしたオブシディアン(アイシャ)と先に広場に向かう。
さて落とし所をどうしようか。
うん、後でアイシャにお仕置きしよう。
71話です。
皆さんこんにちは。最近PVが徐々に増えてきています。
イカの一夜干しのように、噛めば噛むほど、読めば読むほど楽しいと思って頂けると嬉しいです。
次読みたい、気になると思って頂けるように頑張ります。
次回は水曜日予定です。よろしくお願いします。




