第69話 帰還への道
「そろそろ帰ろうか」
こっちが恥ずかしいのに、顔が真っ赤なアイシャは眼すら合わせてくれない。
あまりに滑稽すぎて笑いしかでない。
魔女は恋愛の伝道師、百戦錬磨のイメージはもう無い。
色々あったが、35層の岩窟エリア(Bossエリア)をやっと後にする。
25層のセーフティゾーンまで、戦闘らしきことはほぼ無かった。
向かってきた魔物は、全て魔力念糸で拘束する。
拘束された魔物たちは、蜘蛛の巣に引っかかったように動きを止めている。
アイシャの槍さばきの餌食。
餌食になった魔物を空間収納に収める。
この単純作業の繰り返しだった。
「スノウさんって……凄い便利ですね」
「命を助けた恩人を便利な道具扱いするんじゃない」
道中、アイシャとは軽口をたたけるくらいの仲にはなった。
25層のセーフティゾーンの物価はぼったくり価格である。
本来ならスルーしたい所。
だが連戦でボロボロになった体の汚れを早く洗い流して、ベッドに飛び込みたい。
セーフティゾーンの酒場がやたら騒がしい。
近くの冒険者に何があったのか、話を聞く。
ダンジョン下層で魔女の要人が遭難、生死不明のため大規模な捜索隊が地上から送り込まれるらしい。
緊急救出クエストらしく、レイドクエスト並みに募集をかけているみたいで、隅から隅まで捜索するようだと。
物資の補充や宿の手配、先に救出して一儲けしようと、酒場は賑わっているわけだ。
魔女の要人……間違いなく隣にいるアイシャのことだろう。
「かなり大事になっているようだけど、どうする?」
早く帰るか、ここで休憩していくか。
本人だけ帰しても問題はないだろうが、セーフティゾーンに入った時からアイシャはかなり目立ってしまっている。
この場に似合わない美人な冒険者。
加えてアイシャの服装も問題だ。
パーカーが大きすぎて、下を履いていないように見える。
このままだと絶対に絡まれる。
冒険者たち野獣の群れの中に迷い込んだ獲物にしか見えない。
「やっぱり無理だ。休まずにすぐに帰還しよう」
アイシャの返答を待たずに結論を出す。
空間収納の転移石は残り二個。
しばらくダンジョン下層へのショートカットは無理のようだ。
転移スポットの周りに他の冒険者が居ないことを確認する。
「スノウさんにお願いがあります。私を鎧の中に隠して、連れ帰って貰えますか?」
アイシャの言っている意味がわからない。
「生死不明なので、私は死んだことになっても良いわけですよね?魔女の現代表、おばばの真意を確かめたいのです」
アイシャを助けた時点で面倒なことが起きることはわかっていた。
どんどん俺は巻き込まれている。
地上に帰還しても休むことが出来ない気がしてきた。
風呂に入って、ゆっくりベッドで寝る。
簡単な日常が、いまは一番難しいようだ。
69話です。
皆さんこんにちは。暑い日なので、お昼はそう麺を茹でて食べました。
来週から北海道は涼しくなりそうです。早く温度が落ち着いて欲しいですね。
主人公はやっとBossエリアから脱出します。ゆっくり休めない主人公ですね(笑)
明日も投稿予定です。よろしくお願いします。




