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第65話 しばしの眠り

「どうした?何かあった?」


全身鎧のため会話が出来ない。

ジェスチャーで理解する感じだが、天井を指さしている。

遠距離のゆがみを潰す際にバリスタを使っていたが、天井の窪みにバリスタの矢が突き刺さっている。

ジェスチャーからして、バリスタの矢の周囲を調べろと言っている感じがする。


「刺さっているバリスタの矢の周りを調べたらいいんだな」


全身鎧(執事?)は縦に首を振る。

会話が出来たらもっと楽なのだが……。

魔力念糸で天井のバリスタの矢を引き抜くと、崩れてきた天井と一緒に宝箱と鉱石が落ちてきた。


「えっ?何で天井に宝箱あるわけ?」


魔王を倒した後、このエリアのマッピングをしていたが、さすがに天井の中まではわからない。

本来Bossを倒せば宝箱が出現する。

今回に限って、Bossを倒しても宝箱は見つからなかった。


「私がこのエリアを抜けようとした際に、上から皇帝クラスが降りてきた感じでしたね」


魔女のアイシャはこのエリアに単独で突入し、一度死にかけている。

クイーンアントが三体いるだけでも異常。

冒険者を欺くために巣が天井にあった可能性は高い。


「ソエルちゃん、上を見て来てくれる?」


いつも癖で、ソエルに頼んでしまう。

次世代の精霊王と神に言わせた精霊に、小間使いをさせてしまっている。


「貴重な鉱石が色々あるよ。とりあえず収納しておくね」


嬉しそうな声の感じからたぶん大量のようだ。

全身鎧(執事?)は役目を終えたようで、会釈をして再度姿を消した。

落ちてきた宝箱の罠の解除をどうしようか悩んでいると。


「鑑定したら罠はないですね」


優秀な魔女が横にいた。

これだけ優秀なら、なぜ単独でBossエリアに突入したのか。

何かに引き寄せられたのか?

お腹が減って、頭に血が足りてなかったかもしれないと思うことにする。


「何か失礼なこと考えてました?」


その魔眼はどこまで見えているんだ?

自分の頭の中まで鑑定されたら嫌だな。


「さすがに頭の中までは見えませんからね」


アイシャの笑顔がちょっと怖い。

ソエルが戻ってきたら、開けてみますかね。


「上の掃除は終わったよ。そろそろ休みたいかな」


連戦続きに加えて、進化のコード解除もしているため疲労はかなり高いようだ。


「宝箱の中身は見ないのかい?」


ソエルに聞いてみる。

Boss討伐の醍醐味は終わった後の宝箱の開封だと思う。

だが、今回の宝箱はあまり興味がなさそうな気配だ。


「宝箱よりもお願いがあるんだけど……」


そういえばクエスト前に言ってた。


「魔石が欲しいの。出来れば価値の高い魔石が」


食事やスイーツ以外で、日頃わがままを言わないソエル。


「これで良い?」


空間収納の中から、金色の魔石をソエルの前に出す。

蟻の魔王の魔石だ。


「えっ?これ貰っていいの?」


ソエルと魔女のアイシャの目が点になっているのがおかしくて笑いそうになる。


「構わないよ。持ってる魔石の中で、これが一番価値があると思うんだけど?」


魔王の魔石はまず市場には出回らない。

加工すれば伝説級の武器防具が作成可能といわれる魔石。

国が買えるくらいの価値がある魔石。

売れば一生遊んで暮らせる、末代まで不自由がない生活を約束してくれる魔石。


「スノウはその魔石の価値をわかってる?」


魔王の魔石を貰えると思っていなかったようで、半信半疑になっているようだ。


「ソエルにはいつも助けて貰っているから。この魔石じゃだめかな?」


この魔石じゃないと言われたら、神クラスの虹色の魔石を献上しなければならなくなる。


「本当にいいの?」


涙目になって聞くのは反則だよ。

魔女のアイシャが羨ましそうに見ている。

ソエルの頭を撫でながら渡す。

この癖は直らないようだ。


「ありがとう、これでずっとスノウの隣にいることができる」


笑ったり泣いたり喜んだり。

今日のソエルは表情がころころ変わるのでかなり新鮮だ。


「しばらく休眠状態で会えなくなるから、浮気しちゃだめよ」


満面の笑顔でウインクする。

そして金色の魔石を持って、ソエルはその場から消えた。

きっと空間収納内にある秘密の部屋(お昼寝部屋)に移動したに違いない。

空間収納内に部屋を作ることはリスクを伴うのだが、作った本人は気にしていない。


「さて、宝箱を開けてみますかね」


魔女に声をかけて宝箱に手をかける。


65話です。

皆さんこんにちは。ソエルはしばらく休眠期間に入ります。

主人公の周りの女子が、ソエルがいないことで色々ちょっかいかけてきます。

読んで、にまにまして頂けたら嬉しいです。応援して頂けると励みになります。

次回は明日、月曜日予定となります。よろしくお願いします。

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