第64話 新たなソエル
「そこのあなた、何をしに来たんだっけ?」
いつものソエルの声ではない。
冷淡で威厳のある言葉。
言葉から受けるプレッシャーで、上級精霊は震えている。
「私の大事な人は、雷龍王の息子よ。意味わかる?」
ソエルの雰囲気や言葉には、前と違った明らかな格の違いを感じる。
上級精霊の絶望した眼がこちらを向くが、敵対した相手に恩情を与えるほど聖人君主な自分ではない。
この精霊本人が自ら招いたこと、自己責任だ。
「死ぬ前に、何か言うことあるかしら?」
「ア……アリエナイ」
言葉にもならない声を発して、ゆがみに向かって一目散に逃げようとする。
「傲慢で救いようもない、万死に値する」
そう言うとソエルの指先から光が放たれる。
逃げようとした精霊に光が当たり、その先に影ができる。
光と影に挟まれた瞬間、精霊の姿が歪んだ。
次の瞬間。
そこにいた精霊が跡形もなく消えていた。
何が起こったのか正直わからない。
わかっていることは、逃げようとした上級精霊の存在自体が消滅したこと。
「力加減が難しいわね」
ソエルはあっけらかんとしている。
魔王を倒したとき、魔王の残骸と魔石は残った。
今回のソエルの攻撃は、精霊の存在を完全に消滅させてしまっている。
「ソエルちゃん……ちょっとやり過ぎでは?」
「良いのよ。同族でも礼儀もなく話もできないなら、虫以下よ。」
明らかにオーバーキルなのだが、当の本人は全く気にしていない。
ソエルは精霊界で存在を否定されている過去がある。
敵と味方の区別をはっきりする子だった。
やりすぎは、後に禍根を生み出すきっかけにもなり得る。
少し釘を刺す程度に、あとで話をしておこう。
「さて、残りはどうするかしら?」
同族に対しての言葉では無い。
明らかに敵として見ている。
捕縛されている精霊は、戦意喪失している状態。
上級精霊を一瞬で消し去る相手が目の前にいる。
生殺与奪はソエルの一言で変わるからだ。
「完全に敵意も無くなっていますね。あの上級精霊に無理矢理に連れて来られた感じなんでしょうかね?」
アイシャの分析はありがたい。
捕縛された精霊の現状は、判決を待っている虜囚にしか見えない。
「ソエルはどうしたい?」
一番の当事者はソエルだ。
一応メッセンジャーとして一人は残したいんだが。
「私の大事な人に攻撃した時点でギルティなんだけど。敵意がもうないならスノウに任せるわ。」
精霊王の考えがどうなのか確認したい点はある。
本当に連れ戻しを考えているのであれば、場合によっては全面戦争もある。
敵意のない精霊をいま処分しても後味悪い、二体とも精霊界に戻すか。
「今回は見逃す。次に敵対したときは容赦しない。あと精霊王に今回の件について、雷龍王の息子として話を聞きに行くと伝えておいて。」
捕縛している精霊に殺気混じりの口調で話す。
精霊の一体は殺気に当てられて意識を失った。
もう一体は完全に動けない。
ここまでやれば次の襲撃はないだろう。
残り一カ所のゆがみの中へ、魔力念糸で精霊を簀巻きにして放り込んで閉じてやった。
「さすがに色々ありすぎて疲れたな。帰ってゆっくりしたい」
ストーンアントの一斉駆除のクエストが、ここまで面倒なことになると思わなかった。
しばらくクエストは受けるつもりはない。
無事に終わって、モジモジしているソエルちゃんの姿を見るのが愛らしい。
前と違って、甘えたいのに甘えるのが恥ずかしいようだ。
「ソエル、おいで」
両手を出すと正面から抱きついてくる。
Bossエリアの前くらいまでは、パーカーのフードの中にいた小さな精霊だったのに。
大人の女性になってしまった。
抱きつかれていると、こっちもドキドキする。
魔女のアイシャの方から冷たいオーラを感じる。
この余韻を楽しみたい所であるが、長く居れば居るほどまた何か起きるかもしれない。
ソエルを引き離した直後、全身鎧(執事?)に肩をトントンされる。
64話です。
皆さんこんばんは。進化したソエルの話でしたが、いががでしょうか?
圧倒的に強いです。主人公よりも強いですね。
明日は出かけますので、日曜日に小説投稿が出来たらと思ってます。
楽しんで頂けたら嬉しいです。よろしくお願いします。




