第六十二話
貴重な転移石を使って冒険者ギルドに帰還した。25層のセーフティゾーンと地上の冒険者ギルドが繋がっているから出来る芸当だが、転移石が貴重過ぎていつでも使えるわけでもない。
冒険者ギルド内は午前中の喧騒と違う異様な雰囲気になっている。
ざっと見て6人パーティ×7組、後方支援の5~6人×3組のだいたい60人規模の冒険者と魔女が集められている。確かにレイドクエストに行ける募集人数となっているようだ。
魔女の現代表が各パーティのリーダーと打ち合わせをしているようだが、隣にいるバトルアクスを背負った全身鎧の戦士はギルドでは見たことがない。凄腕の傭兵なのか直感が常に警戒しろと訴えてくる。魔王と似たような異様な圧を感じてしまう。
ただあのバトルアクスはどこかで見たような・・・。
数分もしないうちにローレライ嬢(副ギルド長)に見つかり抱きつかれてしまう。
「スノウ様どうしてこんな姿に?お怪我は?」
心配してくれるのは嬉しいのだが、抱きつかれるとレイドクエストで集まっている冒険者の目線が一斉にこっちに集まるため視線がもの凄く痛い。
直後にオブシディアンの左手で小突かれてしまう。何で??
「大丈夫だから。とりあえずこの現状を説明してくれ」
はっと気付いて現状をすぐに説明してくれる。
魔女の要人が36層までは仲間と一緒に居て無事だったこと。仲間をスクロールで強制帰還させた後は生死不明。現在緊急救出クエスト発動中で、偵察を兼ねた先行部隊の1パーティだけすでに出発していると。
こっちに気が付いた魔女の現代表とバトルアクスの戦士が近付いてくる。
「クエストから帰って来たばかりみたいで悪いんだが、オブシディアンとポーターのあんたには救出クエストに参加して欲しい」
ポーターという職業柄どうしても冒険者よりも下という扱いを受けてしまうため、上から目線の高圧態度には慣れているんだが、心身共に疲れているせいかポーカーフェイスが出来ずにイライラした顔が出ているようだ。
「何だいその顔は?オブシディアンお抱えのポーターって話だから、あんたも一緒に誘ってあげているのに。嫌ならオブシディアンだけでもどうだい?報酬ははずむよ」
オブシディアンの中にいるアイシャよりも先に魔力念糸で拒否のポーズをする。
「討伐クエストしか受けないあんたにゃ、救出クエストは無理かい?討伐と違って繊細なクエストは合わなそうだしね」
魔女の現代表=王としてのプライドが高いせいもあるためか、言葉がきつい。嫌みしか言わない失礼なクソ婆だなこいつ。
オブシディアンが拒否したため、クエストに誘うの無理と判断してきびすを返していく。
穏便に済ます予定だったが喧嘩を売られてしまったので買いましょうか。
「副ギルド長、ギルドの広場借りても良いかい?ついでに広場の人払いを」
自分のイライラしている顔を見て何かを察したのか、すぐに手配をしてくれる。
きびすを返している魔女の現代表と戦士に向かって声をかける。
「魔女の現代表か知らんけど、そこのもうろくした婆さんに面白いものを見せてやるよ」
ポーターが魔女の現代表に喧嘩を売った。正確には喧嘩を買ったのだが。レイドクエストで集められている冒険者たちにもピリッとした空気感に変わる。
隣のオブシディアンが笑いを堪えて吹き出しそうな姿をしているが、頼むから声を出すなよ。
「はあ?ポーターが私の行動を止めて意見するなんて100年早い。親に言葉も礼儀を教わってない輩かい」
短気な婆さんなのか、悪口に乗ってくれてありがとう。
ただ周りの魔女たちが先に動いた。魔女の現代表を守る近衛兵?みたいな魔女3人が無礼なポーターを潰しにきた感じね。
近付こうとした魔女3人は動きを止められ、一瞬でそのまま床に叩きつけられた。
「もう一回だけ言う。面白いもの見せてやるから広場に来い」
オブシディアンの金魚の糞と揶揄されることも多いポーターから、あり得ない威圧感。床と仲良くなっている3人中、2人は泡を吐いて失神している。
現代表の横にいる戦士が背中のバトルアクスに手をかけようとする。
皆さんこんにちは。北海道は秋空になってまして、朝方は寒くなってきました。
風邪を引かれないようにお気をつけください。
小説は楽しい内容になってきてます。今回の文字数が少し多かったので二回に分けます。
書いてて楽しいと、気が付いたら時間が過ぎてますね。また二週間後に投稿します。よろしくお願いします。