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第52話 魔王の最期

「ソエル、首を遠くに飛ばせ!」


魔力念糸で拘束している魔王の身体には、首はない。

首は空中に飛ばされているからだ。


『残り3秒!!』


ソエルが首を飛ばしたが安心できない。

目の前にいるのは魔王。

首を再生する可能性もある。

このまま息絶えればそれでいい。

だが確信している。

この魔王は、首が飛ばされても動く。

虫は人間と違い、脳が頭部に集中していない。

全身に神経節が分散しており、頭部(首)が無くても体が動き出す可能性がある。

まだ終わってない。


「このまま魔石を引き抜く」


魔王の胸部外殻は、さっきの右手の一撃で切り裂かれている。

外殻を魔力念糸で開くと、中から剥き出しになった金色の大きな魔石が目の前に現れる。

その瞬間。

神の力が解除され、時が再び刻み始める。


(間に合え!!)


両手で金色の魔石を引き抜く。

足も使うが魔石が引き抜けない。

生命の危機を感じたのか、固定された状態でも魔石を奪われまいと異常な動きを始める。

魔王の四肢が地面をえぐるように暴れ出す。

固定が意味を成さないのであれば、魔力念糸と鎖で自分と魔石を一つの塊にする。

上手くいけば……

そして、呆気ない幕切れが起きた。

頭部のない虫の魔王は、四肢で魔力念糸と鎖の塊を引き離した。

引き離された塊の中の自分の両手には、魔王の魔石がある。

虫の魔王は最後まで魔石を守ろうと暴れた。

その力が皮肉にも、自ら魔石を引き抜く結果となる。


「終わった……本当に死にかけた」


そう言うと手に持った金色の魔石と一緒に地面にへたり込む。


「本当に魔王を倒したのね」


気が付けば、魔力を宿していた右手は、いつもの右手に戻っていた。

大人の姿になった精霊は抱きしめてくる。


「何とか生き残れたな」


「今回は本当にダメかと思った……」


結果として、魔王に勝った。

内容は辛勝。

死人がでてもおかしくない、死線をくぐり抜けた感じだった。

ソエルに抱きしめられていると安堵感から一気に疲労がでてくる。

このまま地面に寝そべりたい。

場所が場所だけにゆっくりは出来ない。


「魔女っ子は生きているかな?」


そう言うと精霊は、少しふてくされた顔をする。


「あの魔女は、しばらくほっといても大丈夫よ」


さっきまで魔王を倒すために魔女と共闘していたはずだが、同性に対しての圧は変わらない。


「ソエルは魔石と魔王の残骸を影に沈めといて。ちょっとマッピングしてくるから」


黒い槍が刺さっている頭部と魔王の残骸を見るが、動く気配はない。

本当は休憩したい所だが、他の冒険者がこのエリアに来る可能性もある。

今の自分は黒い鎧を身につけたオブシディアンではない。

完全にボロ雑巾になっている荷物運び。

これ以上、面倒が起こる前に早くこの場を撤収したい。

ソエルが抱きついた腕を離すのに少し手間取ったが、エリアのマッピングをするため歩き出す。


52話です。

皆さんこんにちは。何とか投稿出来ました。

身内の不幸で、さっき自宅に帰ってきました。

精神的に疲れがどっと来ますね。明日から仕事です。

本当は休みたいのですが、許して貰えないようです。

次回は水曜日予定となります。よろしくお願いします。

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