第三十六話
スノウの帰還1
どのくらい時間が経ったのかわからない。
今わかっていることは右肩が異常に痛いこと。右顔が地面についてひんやりしていること。
右肩の痛みはあるが、手指・足趾の末梢から少しずつ動かして確認する。
そして魔力念糸を使って索敵してみると、まだ戦闘の反応がある。
すぐに隠蔽スキルを使用して完全に自分の存在を消す。
やっと戻って来られた・・・。不思議な体験をした。神さまにあった。
天国か地獄かわからない、そのまま昇天するかもしれないと思った。
起き上がって左手で痛みが残っている右肩をさするとちゃんと動くし生きている。地面がやたら湿っていると思ったら、右肩からかなり出血していたようだ。全身血まみれ状態。
空間収納を確認すると、神さまにあげたあの魔石はやはりない。やはり夢じゃないか。
自分の中に居るであろう神さまに声をかける。
「神さま生きてる?」
狂信者が聞いたら発狂するくらいの軽い口調で聞いてみる。
『これが外の世界なのね。感動している』
長い時間閉じ込められていたためなのか、外の世界への感動が強いのかジーーンとしている感じがわかる。
「感動しているところ悪いんだが、真面目にあの蟻の魔王をどうにかしたいんだが」
少し大きくなった相方の精霊?と魔女っ子が蟻の魔王と共闘している。
命のやり取りをしている姿は美しいと感じてしまうが、二人からは悪いイメージしか浮かばない。直感的に何かゾクゾクしている、死の臭いが近づいてきている感じがする。
よく見ると蟻の魔王の姿が人型から虫型に変わっている。知性を捨てて魔物の王を選んだようだ。
『スノウ単体では勝てない、魔王を倒せる武器がない』
その通り。アダマンタイトに覆われた体表を傷つける武器が自分にはない。
魔女っ子はきっと上位スキルを使って蟻の魔王と戦っている。ソエルは魔法で戦っている。ドールマスターの自分には魔王を倒すスキルも武器もない。
現実を突きつけられると辛いが・・・単体では勝てない?単体じゃなければ勝てる?
「単体じゃなければ勝てる方法はあるのか?」
軽い口調では無く真面目に聞く。
『勝てる方法はある』
神さまが言うことだから何かしらの方法があるのだろう。
『少し急がないと、数分であの二人は動けなくなる。このフロアに無味無臭の透明なガスが充満してきている』
死の臭いが近づいている感じはこのガスか。
「どうしたら勝てる?」
藁にもすがりたい。神さまがこの場にいるのだから勝って全員で帰還したい。
『魔石を破壊するか、首を取るか』
魔石を破壊できれば魔王は確実に死ぬ。ただソエルちゃんが皇帝クラスの魔石見てかなり欲しそうな顔をしてたから。できれば魔王の魔石をソエルちゃんにあげたい。
「首を取る方向で」
『難易度はこっちの方が高いが・・・私と一緒に戦えば勝てる』
神さまと魔王討伐作戦が始まる。
皆さんこんにちは。小説はやっと本編に戻りました。前回まで脱線しすぎました。反省。
北海道は寒くなってきました。最高温度15℃?朝方8℃?布団から出たくないですね。
皆さまも体調管理気をつけてください。しばらくは脱線せずに本編のままになりますのでお楽しみください。