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第35話 皇帝の断末魔

「ソエル、まずい。特殊個体のお腹にたぶんもう1体いる」


気が付いてしまった。

あの特殊個体のお腹の中にはもう一体のBossが隠れていることを。

特殊個体が皇帝クラスならお腹の中にいるのは皇帝クラス以上のBoss“魔王”がいる可能性がある。

もう一体のBossを産み出すためにあえて戦闘に参加しなかったのであれば、いまの状況に説明がつく。


魔王とは

最強の魔物、魔族の王。

魔に属する最上位クラスの総称、意志を持った大災厄。

通常個体の魔物や魔族が進化を経て行き着く、“最終形態”。

皇帝以上の魔物、魔族が産み出した最上位の魔の存在。


通常個体(兵隊)→将軍(隊長)→王(女王)→皇帝→魔王


この進化のピラミッドは、上に行けば行くほど数は少なくなる。

冒険者ギルドのランク制度、食物連鎖と同じピラミッドともいえる。


魔王が何故最強と呼ばれるのか?

個体の身体的なスペック、魔力、スキル、生存能力など規格外。

その中でも魔王に共通するスキルがある。


“吸収”のスキル

最弱の魔物=スライムの“吸収”スキルを魔王は必ず持っている。


“吸収”……体力が尽きなければ、全てを分解し体内に血肉として吸収する。

体力があれば(死ななければ)、攻撃も魔法も状態異常もスキルも分解吸収できるということ。


例を出そう

一匹のスライムが冒険者と戦って、火の魔法攻撃を受けて瀕死で生き延びたとする。

その後回復したスライムは、再度冒険者と戦って斬撃を受けて瀕死で生き延びたとする。

それを何度も繰り返し生き延びることで、ある時スライムに変化が起きる。

火の魔法に強く、斬撃も効かない(効きにくい)耐性がついたスライムに成長、進化する。

もし冒険者の亡骸を捕食し吸収できれば、持っているスキルを獲得する可能性がある。

唯一の救いは、最強のスキルを持ったスライムは体力面では最弱であるということ。

スライムの核さえ攻撃できれば子供でも倒すことができる魔物である。

ただ最弱と言われるスライムの魔石の中に、何百万分の一個に吸収のスキルがついた物が存在する。


特殊個体の黒紫色のクイーンは、35層Bossエリアでの生態系の頂点。

稀少な鉱石や様々な魔石を食事として体内に入れているはず。

つまり吸収の魔石を取り込んでいる可能性がある。

今まで発見されなかったこの特殊個体のクイーンは、時間が経てばいずれ魔王に進化する可能性もある。

余談だが人は魔石を取り込めない。

魔石を体内に持っていないからだ。

そのため魔石は武器や防具、魔道具、アクセサリーに加工して使っている。

亜人種と言われるエルフ、ドワーフたちは魔石を体内に持っている。


「Bossが新たに産み出される前に仕留める」


魔力念糸を最大に展開して、壁役になっている灰色のクイーンと将軍クラス2体を強制的に地面に拘束する。

魔力消費は半端ないが、数秒程度は完全拘束できる。

この状態を維持するために自分の動きがいつもより遅くなってしまう欠点はあるが、右手の鎖がそれを補ってくれる。


「ソエル、動かない特殊個体やれる?」


特殊個体のクイーンがこのまま戦闘せずに動かないのであれば、ソエルの力で倒せるはず。

ただ間に合うかわからない。


「ダーク・ジャベリン」


空中に描かれた複数の魔方陣から、黒い槍が何本も特殊個体の身体を突き刺していく。

その間に完全拘束している灰色のクイーンと将軍2体の首に鎖を巻き付け、縛り上げる。

鎖を外そうと3体は足掻くが、魔力念糸と鎖はそれを許さない。

そのまま絶命させた。


「これで終わったかな?」


全身に黒い槍が刺さっている特殊個体は、絶命したのか動く気配がない。

警戒を解いたソエルは不用意に近づいてしまう。


「ギュアアアア」


断末魔の悲鳴の様な叫び声とともに、特殊個体の口から黒緑の液体が吐き出される。

不意を突かれたソエルは驚いて回避できない。


「油断しすぎでしょ」


特殊個体のクイーンとソエルの間に、2枚のタワーシールドと自分の身体を捻じ込む。

ソエルの身体に液体がかからないように抱きしめる。

液体のかかったタワーシールドは、泡立ちながらどんどん腐食し溶けていく。


「やばい、パージ」


黒緑の液体がかかった黒色の全身鎧を解除する。

タワーシールドよりも強化されている鎧だが背部表面はすでに溶け、内部のミスリルコーティングすら溶かしている。

そのまま着ていたら中まで液体が貫通していたかもしれない。

鎧を放置することが出来ないため、現状の状態で空間収納に戻す。

帰ってから鎧の修理ができればいいけど……

この間メンテナンスしたばかりだから、ドワーフの親方に怒られそうだ。


「スノウ……大丈夫なの?」


ソエルは青ざめた表情で震えている。


「鎧はやられたけど、大丈夫。後ろ髪少し触れた?」


「やばい、ちょっとハゲてない?」


その言葉にソエルは吹き出して笑う。

鎧を溶かすこの液体がソエルにかかっていたらと思うとゾッする。

完全回復薬のエリクサーはもう持ってないからだ。

本来のストーンクイーンアントでは見たことがない特殊攻撃。

速効性のある腐食効果の唾液(たぶん毒もある?)は間違いなく初見殺し。


「完全拘束する、ソエルやって」


魔力念糸を展開して、特殊個体の身体を拘束する。

あの唾液を再度吐かさないように、右手の鎖で口を塞ぐ。

魔力消費がやばい。


「油断した私は本当に最低、もう消えろ」


冷酷な言葉とともに、特殊個体のクイーンの首が跳んだ。


35話です。

皆さんこんばんは。仕事のお昼休憩がほとんど取れず、疲労感でいっぱいです。

次回の小説投稿は水曜日を予定しています。面白くなってきますので、是非読んでください。

よろしくお願いします。

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