第三十二話
とある鍛冶屋の回想
「カーン、カーン」
とあるドワーフの鍛冶屋で甲高い金属の音がする。一般的な鍛冶屋と違い特殊な炉が存在している鍛冶屋。
「ふう」
炉の熱気に加えて、一人で全ての作業をしなければならない。常に脱水気味だ。
50年以上前に隕鉄を打ってみないかとヘッドハンティングにあった。
ドワーフの中でも歴代最高の巨匠と言われている兄と比べられる日々に嫌気をさしていた。必ず兄を越える。稀少な隕鉄を打って周りの評価を見返す。ヘッドハンティングに来た白翼族の魅力的な甘い言葉に乗ってしまった。
その日以来、天空の孤島に住んでいる。いや軟禁されている。
白翼族は神の使い。プライドが高く自分たち以外の種族を認めない、認められない。
使えると判断した種族は道具として、奴隷として軟禁する。
白翼族が自分に求めていることは特殊な金属である隕鉄から武器・防具を作ること。
この天空の孤島には住居と鍛冶場以外は何もない。娯楽と言えば、月に一度だけ安いお酒が配給されるくらい。生かさず殺さず。楽しみは毎日隕鉄を打てることだけ。
そんな日々の中で、ある日変わった白翼族が迷い込んできた。
「へえ~こんな所に鍛冶屋があるんだ」
ツンケンしたプライドの塊である白翼族とは思えない変わったやつだった。
道具は勝手に触る、炉に触ろうとして火傷しかける、手伝うと言って研磨中に指を切る。
無邪気で自由奔放。プライドの塊とは真逆の存在。
時々遊びというかサボりに来ていたようだった。
「ナンバーズの装備はここで作ってたんだ」
白翼族の幹部クラスはナンバーズと呼ばれている。隕鉄の中でも特別品質の良い金属を使用した武器と防具を身につけている。
ナンバーズの装備品は特別な付与をしていて、契約者以外では特殊効果が使えないように制限をかけている。普通に使っても地上にある金属に負けることはないだろう。
たわいもない世間話、地上の話、隠れて持ってきてくれるお酒とつまみで変わった白翼族が来るのが楽しみになっていた。
エアリアルと名乗った白翼族が次のナンバーズ候補とはこの時は知らなかった。
「わたしに今度武器を作ってくれないかな」
いつもの自由奔放な口調では無く、真剣な言葉での依頼。
「どんな武器よ?」
「実は・・・」
ナンバーズの装備品を超える特別な武器。ただし見た目は白翼族が使用している一般モデル。契約者の制限が付いた武器。
「これはちょっと時間がかかるぞ」
「次に来るまでに欲しいから、任務終わって一ヶ月くらいでまた来るよ」
「一ヶ月?納期がきついじゃねえか。美味い酒忘れんな。あとそこの小瓶に血を入れておけよ」
「はい、は~い」
その日からナンバーズの装備品はそれなりに仕上げて、エアリアルの武器に取りかかった。
こんにちは。今日は金曜日ですが明日投稿ができないため、一日早く投稿させて頂きます。
投稿予約できるみたいですが、いまだに機能が使えず(笑)。
全国的にコロナがまた流行しているようです。お体に気をつけてください。
小説の内容は本編から少し外れていますが、次の次で戻しますので。
二週間後またよろしくお願いします。