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第32話 黒鎧の救援者

35層Bossエリア前。

黒い全身鎧に身を包んだ冒険者が準備体操をしている。


「ふう……」


少し長めの深呼吸をする。

Boss戦に関しては、場数を踏んでいるが緊張しないわけではない。

駆け出しの頃はよく大怪我もしたし、命からがら逃げ帰ったこともあった。

いまはあの頃とは違う。

Aランク冒険者オブシディアンなのだから。


「スノウ不味いことが起きてる、チェンジするよ」


先行しているソエルより連絡があったのだが、口調が厳しい。

かなり不味い状況なのだろう。


空間魔法:チェンジ

使用者の位置と指定した対象者の位置を交代する魔法。


一瞬にして視界が変わる。


視界が変わった先では、吐血している冒険者を抱きかかえていた。

そして目の前には黒紫色のクイーンアントの大きな口が迫っている。


「どっどういう状況?」


クイーンアントに捕食される寸前でチェンジって、ドSの所業だろう。


「ソエルあとでお仕置きだな」


口の中に入る寸前


「肉食系にいきなり喰われる貞操観念はねぇ」


冒険者を抱きかかえているため両手が塞がってしまっている。

魔装スキルで足元にタワーシールドを3枚展開し、クイーンアントの口の中に突っ込む。

その勢いと右手の鎖を利用して、捕食から離脱することで手一杯、足一杯だった。

クイーンアントはいきなり口の中にタワーシールドを突っ込まれてしまい、異物を取り出そうと悶絶してのたうち回っている。


抱きかかえている冒険者は瀕死状態。

魔女の帽子、顔を隠すベールがあることから未婚の魔女。

出血量も多く、手に血液が溢れてくる。

いつ死んでもおかしくない。


「サークル・レギオン」


声を出した瞬間、空間収納から武装した白い全身鎧の軍団が自分を中心に出現し円陣を組む。


「ディフェンスモード」


白い武装した全身鎧の軍団がタワーシールドと槍を持って隙間を埋めるように密集する。

端から見ると、白いイガグリが出現したようにも見える。


「これを使うしかないか」


深層のダンジョンBossでドロップした箱入りポーション。

完全回復薬エリクサーである。

国宝級の回復薬、闇オークションでも超高額の取引値がつく貴重品。


問題が二つある。

抱きかかえている魔女が瀕死状態のため、自力で飲めないこと。

そして顔をベールで隠した未婚の魔女だということ。


これは助けた後で何か言われるパターンか。


だが時間がない。

人命救助ということで、ベールを外してエリクサーを口移しで飲ませる。

未婚の魔女相手にこんなことをして大丈夫か。

助かった後で責任を取れと言われても困るのだが。


左胸にあった深い傷は一瞬のうちに修復され、静かに呼吸をし始めた。

危なかった。

本当にギリギリの状態だった。

意識はまだ戻っていないが、死ぬことはないだろう。


(ソエル、いまどこ?)


この場にいない、ドSの精霊に念話を送る。


(エリア入り口、クイーンの真後ろにいるよ)


最高の位置にいる。


(不意打ちで、そのクイーンやれる?)


(たぶんいける)


相棒の精霊の言葉で、一気に行動を開始する。


「スクエア・レギオン、突撃」


円陣状態の白い軍団が正方形の陣形になり、一糸乱れぬ動きでエリア入り口にいるクイーンアントに向かって突撃を開始する。


驚いたのは入り口のクイーンアントだろう。


「ギュギュ」


兵隊たちに何か指示を出そうとした瞬間


「スノウの邪魔をするものは許さない」


入り口のクイーンアントの首が、一撃で飛んだ。

相変わらず仕事が出来る、素敵な精霊である。


「入り口周囲の蟻を拘束する、下から突き刺せ」


「了解」


阿吽の呼吸。

魔力念糸を使って入り口付近にいた兵隊と将軍クラスのアントを縛り付ける。


「ダーク・ニードル」


ソエルの冷淡な声が響く。

縛り付けられたストーンアントたちの足元、影の中から出た黒い針に串刺しにされていく。


「このまま沼らせるよ」


黒い針に串刺しにされ、絶命したストーンアントたちは影の中に沈んでいく。

影の中に取り込まれたものは、空間収納の中にそのまま入る形になっている。

ソエルが空間魔法で何となく繋げたらしい。


ソエルは時々ポンコツになるが、実力は上級精霊クラス。

そうこうしているうちに、入り口付近は白い軍団が制圧した。


32話です。

皆さんこんばんは。華金ですが、体調不良です。

頸椎ヘルニアの影響で、左手の指が痺れててます。

最近痺れが増してまして……体はポンコツ祭りです。

皆さんも体調管理お気をつけてください。

小説の内容は楽しい場面になってます。

次読みたいと思われるように、今後も頑張ります。

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