第二話
ここ雷龍国ノクティスは、大陸全土から冒険者が集まってくる。元々南部の毒沼地域で人が住めない地域とされていたが、20年前に現女王（雷龍王）が毒沼を完全浄化し、勝手に建国。
その毒沼の下にダンジョンが見つかったため、大陸全土の冒険者たちが一攫千金や名声のため、欲望を満たすために集まってきている。帝国や王国は自国の領土として、何度かノクティスと小競り合いを起こしているが、人が龍にかなうはずもなく全て返り討ちにあっている。
冒険者養成所は冒険者ギルド施設内に併設されており、午前中は嵐のような喧騒になる。クエストボードにはランクごとに探索や討伐、素材採取などのクエストが掲示板に張り出されているが、毎回クエスト争奪戦は戦場と化す。
時間帯が少し遅くなるだけで割の良いクエストがなくなるため、ポーター募集の掲示板を見ていると、ギルド受付嬢の一人から声をかけられてしまう。
金髪ロング、見た目やスタイルは中よりも上くらい。ただ性格が意地悪で、ランクが低いとゴミを見るような目線をするエリザベス嬢だ。一部の冒険者からは、その目線がたまらない、ゾクゾクすると人気があるようだが、自分は正直関わりたくない。
「ちょうど良いところに、万年Fのスノウさんに良いポーターの仕事がありますが」
営業スマイルだが万年Fと発言し、見下している目がチラチラ覗えるのは受付嬢としてどうかと思うが・・・
「結構です・・・条件に合わない仕事は受けないので」
自分の素っ気ない態度が気に食わなかったのか、目が笑っていない。
「クエストを受けられないFランクのスノウさんには、是非C級パーティの猛るサソリのポーターをおすすめします」
確かにC級以上のポーター報酬は良い。ただ猛るサソリというパーティは素行不良で、問題ばかり起こすパーティとして有名なのだ。ポーター契約なのにサポーター（戦闘支援）をやらされる、奴隷のような扱い、挙げ句にはクエスト終了しても賃金を全額払わないというケチぶりで有名である。ギルドの幹部クラスから何度か苦情で呼び出し食らっているが、素行不良は治る気配はない。リーダーは小心者で、そこら辺のチンピラと変わらない。
困っていると、他の受付嬢から声がかかる。すらりとしたスタイルに褐色の肌、知的な眼鏡に特徴的な耳先を持つ傾国の美女。ダークエルフの受付嬢であるローレライ・エルフィン嬢（副ギルド長）である。
雑誌月刊冒険者ギルドの表紙を8連続水着で飾り、帝国の王太子からの縁談や大陸全土・王国・貴族からの求婚、A・Bランク冒険者80人以上の告白をあっさり断った才色兼備の受付嬢である。ちなみにCランク以下の告白はカウントすらされていない。
その傾国の美女より声をかけられてしまっているので、周りの冒険者の一斉注目が辛い。
「スノウさんにオブシディアン（黒曜石）よりポーターの指名が入っていますが、どうされますか？」
ローレライ嬢の声を盗み耳していた周りの冒険者たちは、オブシディアンの名前を聞いて一斉に歓声を上げる。最初に声をかけてきたエリザベス嬢の舌打ちが聞こえそうだが、副ギルド嬢にはかなうはずもなく気が付いたらそそくさに退散している。
オブシディアン（黒曜石）の称号を持つ重戦士風の冒険者・・・冒険者登録して半年で仮免許FランクからAランクまで一気に駆け上がった全身黒色の鎧に包まれた猛者。クエスト成功率100％、現在ソロ討伐クエストの成功記録更新中というローレライ嬢と同じく超有名人である。
称号は本人の行動によって出現する神（女神）の祝福と言われているが、勇者や英雄以外にも宝石や星座等の称号がでる冒険者がいる。
「クエスト内容と期間によりますが・・・ちなみに何系でしょうか？」
周りの冒険者の歓声に、声がかき消されそうだが聞いてみる。
「オブシディアンからの依頼とあれば、討伐クエストですね」
「ですよね・・・で、何を討伐ですか？」
討伐クエストの受注とわかりきっているのだが、大抵困難なクエストなのは明らかだ。
「ダンジョン35層の岩窟エリアのストーンクイーンアントにちょっかいをかけた冒険者がいるようで、繁殖期と重なってしまい兵隊のストーンアントがエリアにワラワラと。可能な限りストーンアントの一斉駆除をお願いします」
笑顔とともに毎回無茶ぶりのクエスト依頼が来るのだが、繁殖期のストーンクイーンアントには基本手を出さないことが暗黙のルールになっている。
本来はC～Bクラスのパーティで討伐できるが、繁殖期は凶暴性が一気に増すためBクラス以上のパーティが複数で対応するレベルに難易度が跳ね上がる。ただ繁殖期のストーンクイーンアントは様々な貴重な鉱石と魔力を含む無機物・有機物を溜め込む習性があるため、冒険者たちは貴重な鉱石に目がくらんだかもしれない。
基本ローレライ嬢からのクエストは断れない。オブシディアンとパートナー契約をしているから。冒険者は希望すれば受付嬢とパートナー契約を結ぶことができる。お互い同意の上になるが、凄腕の受付嬢と契約できればクエストボードに貼り出される前にクエストを予約受注することが可能となる。
クエストが成功すれば、パートナー受付嬢にもボーナスが発生。受付嬢からすれば高ランク冒険者と契約できれば玉の輿も夢ではない。契約した場合は、冒険者ギルドのカードにパートナーの名前も記載されることになる。
受注のために自分の冒険者カードを渡す。
Aランク 称号：オブシディアン（黒曜石） ドールマスター/ポーター
名前：スノウ・ノクティス パートナー：ローレライ・エルフィン
これが自分の冒険者ギルドカードである。
皆さん、こんばんは。北海道は暑いのか寒いのかわからない天気です。
コロナも第9波と言われており、体調管理に気をつけてください。
やっと小説は序盤に入ってきました。第二話で最初の最初って・・・本当にすいません。
あと1～2週間後に投稿しますと言って、早く投稿してごめんなさい。
この後少しずつ面白くなっていくと思います。
宜しくお願いします。
