第29話 Bossエリア前のお茶会
冒険者はBossエリアに突入する前に必ずやることがある。
体の損傷具合の確認、装備品の確認、疲労や空腹の確認である。
しかし自分は違う。
空間収納から椅子とテーブルを取り出す。
Bossエリアの前でお茶会の用意をする。
ダンジョン内は常に神経を削り、魔物の襲撃を警戒する必要がある。
ずっと気を張ってダンジョンにいるのは疲れる……楽しくないのだ。
ダンジョン内での楽しみがこのお茶会。
テーブルの上にはティーセットを2セット。
ケーキスタンドには今日魔女系列のスイーツ店で買った、高級マカロン、白桃のショートケーキ、ベリーのタルトを置く。
「今日の気分は南部の紅茶かな」
テキパキと紅茶の用意も済ませる。
「ソエルちゃん起きてる?」
誰もいないBossエリアの前で自分の声だけが響く。
「どうしたの?」
「いまからお茶会するよ」
「それなら起きる」
フードの中にいた相棒の精霊は、目をこすりながらテーブルの上に座る。
Bossエリアの前で、お茶会を始める。
本来のお茶会は楽しく世間話や恋バナで楽しんでいるはずだが、Bossエリアの中が妙に騒がしい。
魔力念糸から伝わる反応もよろしくない。
「この白桃最高!」
満面の笑みのソエルは二日酔いでさっきまで寝ていたはずなのに……寝起きのスイーツは別のようだ。
紅茶を飲みながらテンションの低いため息しかでない。
「どうしたの?何か変な反応があった?」
ソエルの頬にベリータルトの後が残っているのを指で拭う。
そのまま指を口に入れてしまうのは毎度のこと。
「今回のクエストは貧乏くじ引いたかも」
「前と同じくエリアにいる蟻を一斉駆除するだけでしょ?」
「そうなんだけど、Bossが複数いる感じがする」
マカロンを口に含む。これは紅茶に合う。
「Bossは基本エリアに一体じゃないの?」
一呼吸置いて、紅茶をテーブルに置く。
「エリアの地形もかなり変わっているし……何か嫌な感じする」
「ソエルにお願いがあるんだけど?」
真面目な言葉のトーンなので精霊も真面目な顔に変わる。
長年一緒にいるとonとoffの切り替えは早い。
「命令じゃなくてお願いなのね?」
「うん、先行して状況確認して貰える?危険度はMax、出し惜しみなくフル戦闘予定。」
魔力念糸の感じだと、これは人間か。
「あと誰か死にかけてる冒険者が一人いるから」
「わかったわ。あなたの望みを叶えることが私の存在意義だから」
そう言って、目の前の精霊は一瞬で姿を消す。
光と闇は本来ならば相反する。
光と闇の属性を持つソエルはなぜか相反することが全くない。
光にも闇にもなれる。
本人は言わないがすでに上級精霊に達していると思う。
さて、そろそろ自分もお仕事モードに切り替えますか。
お茶会の余韻をもっと楽しみたい所だが、Bossエリアの中にいる冒険者があまりもたないような感じがする。
空間収納でお茶会セットを一気に片付ける。
魔装スキルで黒色の全身鎧を装着し、左手にはメイスを持つ。
Aランク冒険者、オブシディアンの仕事が始まる。
29話です。
皆さんこんばんは。今日は運動会……終わって二時間後に雷雨でした。
危なかった(笑)。雨天延期になるので、明日が潰れるところでした。
小説はこの後ストーンアント駆除に入ります。どんどん面白くなります。
明日も投稿予定です。よろしくお願いします。




