第二十一話
黒色の鎧からでてきた人物は予想とは違い大柄な人物ではなかった。全身鎧を装備できるような体型ではなくやや細身の若い青年に見える。どこかで見たことがある。どこかで会ったことがある青年だ。黒髪でやや細身の体型、冒険者っぽくない感じ・・・どこかで見ている。
あっ・・・母のパン屋だ。魔女の麦畑の朝限定の常連客、ちーちくパンを毎回買う客だ。この常連客のために母が必ず毎回特別なパンを作っている。冒険者というかポーター(荷物運び)というか将来が面白いやつがいると母が嬉しそうに話していた。朝の手伝いに行った時に少し見かけたくらいの人物がまさかオブシディアンとは。
じっと見ていると自分の眼が勝手に人物の詳細を鑑定してしまう。意識を失った、いや一度死んでしまったと思うのだが生き返ってから私の眼が自分の眼ではない感じがする。眼に映る世界が前よりも鮮明に詳細に見えてしまう。
彼の名前はスノウ・ノクティス。ノクティスは特別な名前・・・雷龍王(女王)の名前だからだ。この名前を使っているということは雷龍王の関係者ということになる。
とんでもない人物に助けられてしまったようだ。これは個人レベルのお礼では済まない可能性が出てくる。おばばと母になんて説明すればいいのか・・・。
そう考えているうちに特殊個体のクイーンの首が飛んだ。彼と精霊の戦いは終わったように見える。地面に転がっている彼の安堵と、目を輝かせているように魔石を持っている精霊を見ると微笑ましく思うのだが、私の眼がずっと警告している。
戦闘はまだ終わっていない。首を切られた特殊個体のお腹に生命反応が残っているからだ。特殊個体よりもっと大きな力を持ったものが隠れている。そのことに彼らはまだ気が付いていない。
そしてその存在が出現してしまう。黄金色の卵から生まれた魔王、私の眼にはアダマンタイトアント・ロード・・・魔王の名前が見えている。そして不完全体と。
生まれるには早すぎた魔王は体の維持が出来ていない。左腕が落ちて、アダマンタイトの黄金色の体表面が脆弱化している。これならば、いまならまだ討伐はできる。
そう思っていると彼と目があったような気がした。
皆さんこんにちは。2週間ぶりです。今回少し短めですいません。話の切り方が悪くて前回に加えるべき内容でした。反省。小説の中の言葉ですが一部修正します。ミスリルを精霊銀に変更します。
ミスリルという言葉を使用すると著作権の問題で今後色々ありそうな感じです。オーク、ホビットも今後使用が難しいかもしれません。
また2週間後に投稿予定です。