第十七話
「魔王が出てくるまでに片付ける」
魔力念糸を最大に展開して壁役になっているクイーンと将軍クラス2体を強制拘束する。魔力消費は半端ないが、数十秒程度は完全拘束できる。
ただこの状態をキープするために自分の動きがいつもより遅くなってしまう欠点もある。
「ソエル、動かない特殊個体やれる?」
特殊個体がこのまま戦闘せず動かないのであれば、最初に倒したクイーンと同じく倒せるはず。間に合うかわからない。
「ダーク・ジャベリン」
黒い針ではなく、空中に描かれている複数の魔方陣から黒い槍が何本も特殊個体を突き刺している。その間に完全拘束しているクイーンと将軍2体の頭と首だけを狙って一撃で葬りさる。
「クイーンやれたかな?」
相棒の精霊は黒い槍が複数刺さった状態の動く気配がない特殊個体に近づく。
「ギュアアアア」
断末魔の悲鳴の様な叫び声とともに、特殊個体の口から黒緑の液体が吐き出される。不用意に近づいた相棒の精霊は驚いて回避できない。
「油断しすぎでしょ」
特殊個体と相棒の精霊の間に2枚のタワーシールドと自分の体を捻じ込んで、精霊に液体がかからないように抱きしめる。2枚のタワーシールドはどんどん腐食していきあっという間に溶けている。
「これやばい、パージ」
黒緑の液体がかかった黒色の鎧を解除する。タワーシールドよりも強化されている黒色の鎧の背部表面はすでに溶け、内部の精霊銀の糸のコーティングすら溶かし始めている。
そのまま着ていたら中まで液体が貫通していたかもしれない。
このまま鎧を放置することが出来ないため、現状の状態で空間収納に戻す。
装備品を溶かす攻撃とか反則だから。帰ってから鎧の修理ができればいいけど・・・ドワーフの親方に間違いなく怒られるなあ。
「スノウ大丈夫?」
精霊は青ざめた表情で震えている。
「鎧はやられたけど、体は大丈夫。後ろ髪少し触れた?」
「やばい、はげてない?」
その言葉に相棒の精霊は吹き出して笑うが、鎧を溶かすこの液体が相棒の精霊にかかっていたらと思うとゾッとしかしない。
本来のクイーンアントではあり得ない特殊攻撃。速効性のある腐食効果+毒効果の液体と考えた方が良いか。
「完全拘束する、ソエルやって」
魔力念糸を再度最大展開して、特殊固体の口を開かせないように塞いで強制拘束する。
「油断した私は本当に最低・・・もう消えて」
冷酷な言葉とともに、特殊固体の首が飛ぶ。
「何とかなったな」
そう言って地面に転がる。Boss3体、その中の1体が皇帝クラス・・・さすがに疲れた。
相棒の精霊は自分よりも大きな黒紫色の魔石を嬉しそうな顔をして見ている。
普通の魔石と違って、皇帝クラスの魔石はまず市場に出回ることがほぼない。
売れば間違いなく一財産、装備品に加工してもSクラスの武器・防具になるだろう。
特殊固体の亡骸が徐々に影の中に沈んでいく。空間収納に収まるのも時間の問題だろう。
早く帰って風呂に入って、甘い物食べて、蜂蜜酒を飲んでゴロゴロしたい。
しばらく休みにして、どこか温泉旅行に行っても良いかな。
あとは今回の件はギルドに苦情報告だな。
今後のことについて考えていると
「スノウ・・・あれ何?」
特殊固体が沈んだ場所に、金色がかった丸みのある物が残っている。
12月30日になりました。温かくお過ごしでしょうか?
北海道は気候が良ければオーロラが見られるかもしれないと言われています。
肉眼で見られる機会はないと思っていたので、チャンスがあれば見てみたいです。
皆さん良いお年を迎えてくださいね。来年もよろしくお願いします。