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第110話 重力魔法と裸祭り

重力魔法を獲得した際、久しぶりに見たステータスに唖然とした。

今まで獲得したスキルがほとんど消えている。

剣術の初級スキルはどこにいった?

代わりに近接武器、神の権能、原初の※※……今まで見たことがないスキルもある。

中には文字化けしているスキルもあり、よく分からない。

そういえば神がスキル調整すると言ってたが、自分が知らないうちにスキルの断捨離をされた気分になる。


スキルをゆっくり確認したいところだったが、訓練場に再度お客さんが来たようだ。

中に入ってきたのは、五人組の冒険者パーティ。

暗殺者ギルドのメンバーとは装備が違う。

冒険者ギルドでも問題視されている、素行不良パーティ“猛るサソリ”だ。

真面目に訓練しに来るようなパーティではない。

ここに何しに来た?


「何が起きてる?」


訓練場の中は、テーブルと椅子に座ってくつろいでいる荷物運びが一人。

その周りには裸の姿で転がっているガラの悪い男たち。

異様な光景。


「おっ、お前がやったのか?」


猛るサソリのリーダーの声はびびっている。

冒険者はびびったら負けだ。

舐められたらこの世界では生きていけない。


「皆さん、親睦を深めるために裸祭りをしていたみたいですよ」


自分には関係ありません、そんな口調で話す。


「リーダー、なんかこいつやばくないですか?」


猛るサソリのメンバーがコソコソ話をしている。


「お前がスノウだよな?エリザベスからここに居るって聞いてるんだ」


受付嬢のエリザベスが俺を売ったらしい。

確かに受付での対応はおかしかった。


「それで?暇じゃないんだけど」


暇じゃないと言いつつ、訓練場の中でくつろいでいる自分を考えるとおかしくなってくる。


「何がおかしい?お前に話がある!」


話?

この素行不良パーティと接点はほとんどない。

首を傾げる。


「クイーンアントの討伐依頼は、猛るサソリと合同でやったことにしろ!」


なるほど、そういうことか。

受付嬢と組んで、過去のクイーンアントの討伐依頼を詐称したのはこいつらか。


「それならオブシディアンに直接話をすればいい。荷物運びには関係ない」


自分がオブシディアンだが、馬鹿と話をするつもりはない。


「オブシディアンはAランク。話をつけられる相手じゃねぇだろう!」


「それで荷物運びに仲介を頼みたいってことか?」


「そうだ!お前はオブシディアンの金魚の糞らしいからな。俺らの話は聞くよな?」


どの世界にも馬鹿はいる。

こういう馬鹿につける薬はないようだ。

話を聞くだけで疲れる。


「面倒くさい。話を聞かせたかったら力づくで来い」


テーブルを片付けて、椅子だけ残す。


「荷物運びが!調子に乗るな」


向かって来る馬鹿を、鎖で捕らえる。


「何だ?この鎖、ほどけねぇ」


「お前ら!見てないで、一斉にそいつを殺れ!」


冒険者ギルドの訓練場で発する言葉ではない。

リーダー以外の四人は慎重に間合いを取る。

裸で転がっている暗殺者ギルドよりマシなようだ。

椅子を片付ける。


「前は俺が押さえる!挟撃するぞ。魔法はいつでも放て」


鎖で捕らえているリーダー以外は、及第点をあげてもいい。

戦士が盾を構えて突っ込んで来た。

盾で吹き飛ばされるはずだったが、寸前で動きが止まる。

横から剣士が大剣を振ってくるが、これも空中で止めた。


「なんだ、何が起きている」


透明な魔力念糸で前衛二人を捕らえていることに気がついていない。

鎖に捕まっているリーダーは信じられないものを見たようで、声が震えている。


「ファイアーボール」


魔法使いが火の玉を投げてくる。

こちらに着弾する前に、地面に落ちた。

魔力念糸で軌道を操作し、重力魔法で火の玉を地面に落としたのだ。


「前の二人、お疲れ様でした」


前衛の二人を、重力魔法で地面に押しつける。

重力魔法のさじ加減がわからない。

鈍い音と同時に、訓練場の床が砕け、二人の体が半分ほど埋まってしまった。

どうやら、押さえつけたつもりが床ごと破壊してしまった。

二人は微かに呻き声を上げている。

ちょっと、やり過ぎた。


「アイスランス」


もう一人の魔法使いが、後ろから仕掛けてくる。

五本の氷の槍。

鎖で捕まえているリーダーを引き寄せて、盾にする。


「痛てぇぇ、この野郎」


リーダーの背中には氷の槍が突き刺さっている。


「ファイアーボール」


再度、火の玉が来る。

背中が冷たそうなので、溶かしてあげよう。

残念ながら、火の玉はリーダーの正面に当たった。

溶かす場所を間違ってしまったようだ。

背中は凍傷、前面はこんがり。

ミディアムレアくらいにはなったか?


「魔法使いの二人も、そろそろ眠たいでしょ?」


二人の足に魔力念糸を巻き付ける。

かかった魚はそれほど大きくない。

一気にこちらに引き寄せる。

自分の足元には震えている魔法使いが二人。

こんな相手と戦ったことがないのだろう。


「おやすみなさい」


魔法使い二人も地面に押しつける。

盾に使っていた猛るサソリのリーダーの意識もすでにない。

パーティのリーダーとは思えないみすぼらしい姿になっていた。


さっきよりは少しリハビリになったようだ。

猛るサソリのパーティは冒険者ギルドに引き渡す予定なので、真っ裸にはしなかった。

服以外は、すべて身ぐるみを剥いだけど。


そうこうしていると、出入り口が騒がしくなっている。

暗殺者ギルドの害虫の残りが到着したようだ。


「お前が仲間をやったのか?」


「無関係です」


「そんなわけあるか!やっちまえ!」


出入り口に見張りはいない。

きっと、こいつらで最後だろう。

白銀の鎖をぶん回す。

重力魔法で鎖を軽くしているため、異常な風切音が響いている。

そして、向かって来る暗殺者ギルドのメンバーに命中する瞬間、鎖を重くする。


ドゴォン。


鈍い音と同時に、数人が紙くずのように飛んでいく。


「あっ、ごめん。死んでないよね?」


さっき獲得したばかりの重力魔法の調整が難しい。

初級スキルのため、軽くする、重くするしかできない。

自分が思ったような微調整がまだできていない。

彼らの安否は大丈夫だろうか?


「ふっ、ふざけるなぁ!」


怒号と共に残り全員が向かって来る。

可哀想に……。

微調整ができていない鎖の餌食になってしまった。


訓練場は静かになった。

吹き飛ばした暗殺者ギルドのメンバーを集め、身ぐるみを剥がす。

ドールマスターから盗賊に転職したような気分になる。

肉体的な疲れよりも、身ぐるみを剥がす行為に精神的に疲れる。


しばらくしてギルド職員が訓練場に入って来た。

あれだけの大人数が訓練場に向かったのに、誰も戻ってこない。

不審がって様子を見に来たようだ。


「ここで一体何をされていたのですか?」


この光景を目にしたギルド職員は恐る恐る聞いてくる。


「暗殺者ギルドに襲われて、正当防衛ですね」


裸祭りのこの状況で、正当防衛が通じるかは分からない。


「副ギルド長を呼んで貰えますか?」


笑顔で言ったつもりだが、ギルド職員は絶叫して戻っていった。

ちょっと傷つくのだが。


110話です。

久しぶりに長めの字数になってしまいました。いつもは読みやすくするため1000字程度に抑えています。

長い字数でも、楽しく読んで頂いたら嬉しいです。

明日も投稿予定となります。今後も楽しい話を予定しています。

ブックマークもよろしくお願いします。

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