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第108話 メイド長の仕事

メイド長マーサの動きは早かった。

雷龍王の許可を取る前に、ある程度お茶会の手配をしていた。

必ず雷龍王はスノウとの時間を最優先する。

確信はあった。


城には庭園が二つある。

来客用と雷龍王の関係者専用のプライベートな庭園。

迷わず関係者専用の庭園をお茶会の場としてセッティングする。

そのプライベートな庭園に予想しない人物が現われた。

雷龍王の側近の一人、ハイエルフのセリオン・ヴァルディア。

宰相に次ぐ地位、内外務の顧問・宮廷魔導長。

雷龍国ノクティスの実質ナンバー3が庭園に現われたのだ。


「ここは雷龍王様のプライベートな庭園ですが?」


マーサはこのハイエルフが大嫌いだ。

冒険者ギルドのローレライ様とは全く違う。

ハイエルフ至上主義で、自分の認めた者以外は見下す傾向が非常に強い。

人族のメイド長マーサは舐められていた。


「ここでお茶会が開かれると聞いたが、誰が来るんですかね?」


雷龍王の前では絶対にしない、明らかに見下した態度で接してくる。


「雷龍王様の親しい関係者とお聞きしています」


メイドとして礼を忘れず、淡々とお茶会の最終確認をしながら話す。


「だから誰が来ると聞いている!」


癇に障ったのか、口調が荒い。

ハイエルフとして優秀な人物であるが、性格はプライドの塊。


「守秘義務がありますので」


冷静に話すが、マーサの腹の中は怒りゲージが徐々に上昇してきている。


「頑固なメイドは本当にダメだな」


雷龍王の椅子に勝手に座り、テーブルに足を置く。

自分が王の如く振る舞う態度にマーサは切れた。

セリオンの真後ろに立ち、首元にナイフを突き立てる。


「三流エルフが調子に乗るな。殺しますよ」


ナイフの先は微かに出血している。


「えっ」


目の前にいたはずなのに。

いつの間にか後ろを取られ、ナイフを首に突き立てられている。

宮廷魔導長であるハイエルフは、この現実が受け入れられない。


「早く席を立ちなさい!」


いつものメイド長の口調ではない。

このメイドは一体何者なのか?

死の恐怖なのか、セリオンは緊張して動けない。


「あらっ?早く解毒しないと本当に死ぬかもしれませんね」


マーサはナイフを収める。


「お前、何をしたっ」


ハイエルフは椅子から立てない。

口から泡を吹き、首を押さえながら地面に崩れ落ちる。

ナイフには即効性の毒が塗られていた。


「このまま死にますか?」


マーサの殺気でハイエルフはそのまま失禁、失神してしまった。


「お茶会の準備で忙しいのに。余計な仕事を増やされましたね」


溜息をつきながら、他のメイドたちを呼ぶ。

大嫌いなハイエルフだが、この国ではナンバー3。

雷龍王の許可なく殺すのは良くないだろう。


「この失禁した馬鹿エルフにこの解毒剤を飲ませて。身ぐるみを剥がして、政務室に運びなさい。あと洗浄の魔法をこの場にかけるように」


何があったのか分からないが、口から泡を吹いている高慢なハイエルフの姿にメイドたちも吹き出して笑ってしまう。


「誰かに何か言われたら、雷龍王様の庭園に勝手に入って泥酔されていたようですと伝えなさい。メイド長マーサから運ぶように指示されたと」


メイドたちに指示を出していく。

身ぐるみを剥がした物は清掃代としてこのまま頂きましょう。

呪紋が消えたマーサには雷龍王の制約は完全に無くなっている。

生命を刈り取れるようになっている。


「さて、そろそろスノウ様の所に戻りましょうか」


簡単な掃除を終えた程度の足取りで、新しい主の元に向かう。


108話です。

仕事をしながら小説を書く。この両立は本当に大変です。

小説はマーサの話になってますが、個人的に好きな内容です。

今後どう主人公に絡んでくれるのか(笑)。楽しみにしてください。

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