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第107話 雷龍王の憂鬱

雷龍王ノクティスは、ここ一週間ずっと溜息をついていた。

雑誌月刊冒険者ギルドの臨時版を見たときの衝撃は、今も忘れることができない。

義理の息子であるスノウの名前と写真が載っていた。

冒険者ギルドの副ギルド長と駆け落ちした記事の内容に、城を破壊するところだった。

過保護と言われてしまうかも知れないが、裏でスノウを捜索し、保護(奪還)しようと動いた。

だがエルダーエルフであるローレライの足取りは全く追えなかったのだ。

スノウの安否を確認しようと、バード(魔法伝書鳩)で直接お茶会の誘いをローレライにしたが返事はなかった。

返事がない……スノウの安否がわからない。

不安な毎日を過ごしていた。


雷龍王ノクティスは実の母親では無かったが、スノウを赤子の時から育てている。

やんちゃな実の娘よりもスノウには甘い。

その証拠に自身の金色の髪を一部黒色に染めている。

黒髪のスノウが物心ついた時に傷つかないように配慮していたのだ。

ノクティスはスノウの特殊な出自を知っている。

母親である白翼族のエアリアルを看取ったのはノクティス本人なのだから。


G・O・D・Sと呼ばれる自称神、その尖兵である白翼族。

スノウの実母であるエアリアルは元々敵であった。

白翼族のことを良く思っていなかったが、エアリアルは白翼族の中でも洗脳されていない特殊な個体であった。

一言で言えば“自由奔放”。

初めて会ったとき、龍とドラゴン……何が違うの?って聞いてくる。

白翼族の中でも変わり者だった。

白翼族の幹部ナンバーズと呼ばれる地位に就いてから、エアリアルは焦っていた。

次に会ったときは息も絶え絶えで瀕死の状態。

ボロボロの体で赤子を守っていた。

エアリアルの命を助けることは出来たが、本人はそれを拒んだ。

必ず追っ手が来ると。

いまの白翼族は何かに汚染されており、神を越えたい、神になりたい奴がいる。

自分の死体が見つからない限り赤子が守れないと覚悟をしていた。

エアリアルとの約束で赤子の命を保護する。

その証として、スノウに加護を与えた。

白翼族と表だってばれないように体内の魔石を封印し、雷龍王の加護を持つ龍王の家族として育てた。

スノウの安否がわからないこと、自ら探しに行けないことに苛立つ毎日。

雷龍王ノクティスのフラストレーションはピークを迎えていた。


執務室がノックされる。

ノックの仕方からメイド長マーサだろう。


「失礼します。スノウ様が無事に戻られたようです。二日後にお茶会の希望をされていますが、どうされますか?」


「スノウはいまどこにいる!」


嬉しさと苛立ちで、声のトーンが抑えられない。


「貴族街の住居にいらっしゃいます」


マーサはどこと言われてそのまま答えた。

もしいつから戻っていると聞かれたら、誤魔化すつもりだった。

呪紋の制約があれば嘘はつけないが、いまは違う。


「お茶会の準備を!」


スノウが無事に戻って来た、お茶会で会えるという嬉しさでマーサの呪紋が外れていることに気が付いていない。


「では、お茶会の準備をします。二日後、迎えに行って参ります」


雷龍王のメイドとして、このお茶会が最後の仕事になるだろう。

スノウに終身雇用されたマーサは、自らの心のままに動くことを再度決意する。


107話です。

小説の内容は少し進みまして、雷龍王の話になっています。

これからも刺激ある日常生活が楽しめると思います。

よろしくお願いします。

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