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第103話 お嬢様と鍛冶屋

スイーツ店から三つ先の区画で、時はまた動き始めた。

ソエルをお姫様抱っこしていたため、周りから見られてしまう。

執事がお嬢様をお姫様抱っこしていたら、確かに目立つ。

ここも危ないな。

ソエルをゆっくりと降ろす。


「しばらくあのスイーツ店には行けないな」


まさかアイシャがいるとは思わなかった。

普通にスイーツを買いに行っただけなのに。

悪いことは一切していない。

そもそも逃げる必要はなかったのだが、確保と言われると人は逃げたくなる。

恋愛と一緒かもしれない。

追うよりも追われたい、あれはアイシャが悪い。


「面白かったけど、そろそろ休みたいわね」


せっかくのデートが台無しだ。

この場所から次の区画まで歩けば、鍛冶屋がある。


「このままドルガンの鍛冶屋に行くか」


「さすがにあの騒ぎじゃ、もう中心部は歩けないわね」


お嬢様と白い髪の執事は目立ちすぎる。

ここにいます、捕まえてくださいと言わんばかりだ。

どこかで着替えたい。

二人で鍛冶屋に向かって歩いて行く。

途中で暗殺者ギルドの害虫に見つかったが、生れたままの姿で下水道に流しておいた。

身ぐるみは剥がしておいたが、たいした物は持っていない。

下っ端じゃスイーツ代にもならないか。


飾り気のない外観の鍛冶屋が見えてくる。

鉄と火の匂いがするドアの前に立つと、金属音が中から聞こえてくる。


「今日は誰かいるわね」


美人なお嬢様と鍛冶屋。

何かの小説のタイトルになりそうだ。

ドアを開けて中に入る。

鍛冶屋の中は、外と違う熱気で覆われている。

場違いな服装もあって熱い。


「お客さん、お店間違えてない?」


リッカの声がする。

見た目がお嬢様と執事だから、店を間違えたと思われたようだ。


「久しぶり。親方いるかい?」


リッカに挨拶をするが、ピンと来てない。

仕方ない。

白銀の小手を見せる。


「あのお兄さんか。見た目が全く違うから分からなかったよ」


白銀の小手で持ち主が分かる。

この子は対人関係がやはり苦手なようだ。


「着替えさせて欲しいのと、装備を色々と見て欲しいんだけど。親方いるかい?」


「親方は二階で酒飲んでるよ。着替えはそっちの部屋使っていいから。ちょっと待ってて」


リッカに言われた物置らしい部屋で着替える。

ソエルは着替えたくなかったようだが、渋々着替えてくれた。

服を替えても、美人は変わらないと褒めておく。


「お前かっ、有名人が何をしに来たんだ?」


雑誌月刊冒険者ギルドの臨時版を読んでいるな。


「お兄さんは有名人なの?彼女さんの方が有名だと思った」


「あなたは良い眼をしているじゃない。でも彼女じゃない!私は正妻よ!」


リッカはそうなのって顔をする。

リッカとソエルは女子トークに夢中。

二人をそのままにして、ドルガンに鎧が壊れたことを伝える。


「この間、鎧の調整をしたばかりなのに。もう壊したのか!」


酒を飲んでいるせいもあって、怒気が強い。


「皇帝クラスと戦って生き残れた。あの鎧が無ければまずかった」


鎧への感謝の気持ちを伝える。

作り出した我が子を簡単に壊されたと思っていた親方も、皇帝クラスと聞いて渋い顔をする。


「壊れた鎧はどうした?」


「空間収納の中にある。腐食の毒をかけられているから、この場で出せない」


「裏について来い。専用の鍛冶場がある」


ソエルに買ったスイーツを食べて良いと伝えて、ドルガンについて行く。


103話です。

やっとお嬢様シリーズが終わります。今後主人公が鍛冶屋でどんな装備品を考えるのか、楽しみにしてください。

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