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第102話 お嬢様と魔女

「遅かったわね。何かあったかしら?」


ソエルは少し退屈していたようだ。


「お嬢さま、少しお散歩されますか?」


ソエルを馬車から降りるように促す。


「では、少し歩きましょう」


馬車から降りたソエルを見て、周りの人々から驚きの声があがる。

ソエルが美人すぎた。

明らかに目立っている。

見張っている虫たちを一斉におびき寄せるつもりが、一般人までおびき寄せる結果になってしまった。

ここまで騒ぎが大きくなると、さすがに暗殺者ギルドも手出しはしないだろう。


「お嬢様が美しすぎて、皆さまが驚いているようですよ」


自分は執事を演じることを忘れない。


「少し喉が渇きました。どこかで休みましょう」


ソエルお嬢様の演技も完璧だ。


「今度お茶会の予定があります。お菓子の用意も忘れずに」


空間収納の中のお菓子もほとんどない。

義母とのお茶会もあるので、お菓子の補充を一緒にしておこう。


どこかの王族を思わせるお嬢様と白い髪の執事は堂々と街中を歩いて行く。

休眠前に比べて、街中でエルフとすれ違うことが多い。

すれ違うたびに、ソエルを見て足を止めている。

ソエルの美しさは種族を問わないようだ。


(スノウ、これで本当に大丈夫?)


ソエルお嬢様が心配している。


(このまま堂々と歩いていいよ)


賞金を懸けられているため、街を一度偵察したかった。


(それに美人なソエルお嬢様を見られて、俺は嬉しいよ)


前を歩いているソエルの顔が少し赤くなったように見える。

いつもと違ったデートもたまにはいいだろう。

そのまま魔女系列のスイーツ店に入る。

清潔感に溢れた店内、そして甘い匂い。

魔女の服装をした店員たちが、自分たちを見て何やら騒いでいる。


「甘く良い匂い。どれがいいかな」


一瞬、素のソエルが出てしまう。

目の前にこれだけスイーツがあれば仕方ないか。


「お嬢様、こちらからここまで買ってもよろしいでしょうか?」


ソエルへのご褒美も大切だ。


「こちらからここまで、二セットずつ頂けますか?」


魔女の店員に話しかける。

ベールを着けているため、未婚の魔女なのだろう。

自分と目が合うと、魔女の店員は顔を真っ赤にしてあたふたしてしまう。


「少し、おっお待ちください。オーナー代理に変わります」


オーナー代理?

スイーツを買いに来ただけなのにオーナー代理に変わる必要があるのか?

裏から見たことがある魔女が現われた。


「新人が失礼致しました。すぐに用意させて頂きます。あれっ?どこかで会いませんでしたか」


魔女の代表の孫、アイシャ・ブラックフォレスト。

何故ここにいる。

それに何故かベールを着けていない。

動揺したら、バレるかもしれない。

話を変えるしかない。


「こちらのスイーツ店が美味しいと聞きまして、初めて来ました。お嬢様も喜ばれています」


この店には、何回か来たことがある。

この姿では初めてきた……嘘は言っていない。

ソエルの顔を見ると、超機嫌が悪くなっている。

美人が台無しだ。


(ソエルお嬢様、バレないようにして)


(ちっ、またこの魔女かっ)


念話なのに舌打ちが聞こえてくる。

ソエルはアイシャ嬢に対して、出会った当初から警戒心が強い。


「お勧めはこちらのフルーツタルトです。うんっ?」


アイシャ嬢に不審がられている。


「では、それも二セット包んでください」


ソエルはアイシャ嬢と話したくないのか、他のスイーツを見ている。

会計は無事に終わった。

あとは買ったスイーツが来るのを待つだけ。

アイシャ嬢の目線が、ずっとこちらを見ている。


「お待たせしました。たくさんありますが持てますか?」


大量にスイーツを買いすぎた。

二セットずつ買ったため、両手では持ちきれない。


「大丈夫です。こうすれば大丈夫なんで。あっ」


完全にやらかした。

魔力念糸でスイーツの入った袋を持ち上げてしまった。

もしかしたらアイシャに誘導されたのかもしれない。


「少しお待ちを……」


アイシャの眼が光る。

ここで神眼を使うのは反則だ。


「スノウさん!」


「誰のことでしょう?」


全身から汗が吹き出る。

完全にバレましたね。

猫の前の鼠、蛇に睨まれた蛙とはこのことか。

目の前にメデューサがいるようだ。


「スノウさん……確保、確保」


アイシャ嬢の号令で、魔女の店員が一斉に襲ってくる。


「結局こうなるんじゃないの」


ソエルの闇魔法で店員の足を引っかけて転ばす。


「何で逃げるんですか?」


「確保って言われたら、普通逃げるでしょ」


アイシャにバレてしまった以上、スイーツの袋を手に持つ必要はない。

全て空間収納の中に入れ込む。


「スノウっ、行くわよ!」


他のお客さんもいて、出入り口まで逃げきれそうにない。


『使う?』


神から救いの声がかかる。


「お願いします」


『パーフェクトワールド(完璧な世界)』


神の力で時を止める。

スイーツ店から、無事にソエルと脱出した。


102話です。

小説のタイトル通り、内容は見て頂けると楽しめると思います。

次回もお嬢様シリーズです(笑)。内容は少し真面目に書いています。

いいね、ブックマークも、是非よろしくお願いします。

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