第101話 お嬢様と執事
メイドリーダーがソエルを連れ去り、自分も他のメイドに服を準備して貰った。
似合うかどうかわからないが、普段あまり気を使わない髪型もセットして貰う。
「スノウ様、お似合いです。本当にこの格好でよろしかったのでしょうか?」
準備を手伝ってくれたメイドが少し困惑している。
自分の今の姿は執事。
燕尾服を着て、眼鏡もかけている。
「馬子にも衣装だな。さて、ソエルお嬢様を迎えに行きますかね」
そう言って、メイドリーダーに連れ去られた部屋に向かう。
部屋の中では、ソエルとメイドリーダーの争う声が漏れている。
ノックして部屋の中に入る。
「ソエルお嬢様。お迎えに参りました」
執事のように丁寧に挨拶をする。
ソエルを見ると、顔を真っ赤にして何やら少し悔しそうな顔をしている。
自分からする悪戯は好きだが、されると恥ずかしいようだ。
「スノウは本当にずるいわね」
メイドリーダーはちゃんと仕事をやってくれたようだ。
紛れもなくお嬢様に仕上げて貰っている。
元々美人だが、化粧をするとどこかの王女様と呼ばれてもおかしくない気品がある。
「ソエルお嬢様とお外に行きたいと思いましたが、お気に召さなかったですか?」
プンプンしながらも、嬉しさが顔から漏れている。
「では、馬車の準備も終わっています。お嬢様、参りましょうか」
ソエルの手を引いて、手配した馬車に向かう。
お嬢様と執事の姿なら散歩しても目立たないだろう。
我ながら良い作戦だ。
『本当に上手くいくかしら?スノウは自分たちを過小評価しているわ』
神から何やら作戦失敗を示唆されたような気がするが。
馬車に乗って、貴族街からまずは宿屋に向かう。
街中はいつも通り平和だ。
お昼時は過ぎており、この時間なら喫茶店が混んでいるような感じがする。
宿屋の前で、馬車を停めて貰う。
「お嬢様、少しお待ちください」
そう言って、馬車から降り宿屋の中に入る。
宿屋に似つかわしくない服装が入ってきたため、注目されてしまう。
一般人、冒険者ではない気配と視線を感じる。
この場所は、やはり見張られているようだ。
「こちらに宿泊されているスノウ様より、宿の料金を預かっております。荷物も持って行ってよろしいでしょうか?」
丁寧な言葉使いで、宿屋の主人に料金を渡す。
もし宿屋が大丈夫なら、延長料金を支払うつもりだった。
「あの荷物運びは何をしたんだ?毎日色んな人が尋ねてくる。この前エルフの偉い人が来て、肝が冷えたぞ」
宿屋の主人に、色々迷惑をかけてしまったようだ。
迷惑料として、少し多めに支払いをする。
荷物を回収するため、二階の部屋に向かう。
三人、いや四人か。
後ろからついて来るが、足音がしない。
部屋のドアを開けた瞬間に拉致する気らしい。
(リハビリにちょうどいいか)
部屋のドアを開けて中に入った瞬間。
四人が部屋になだれ込んでくる。
「男を部屋に連れ込む趣味はないんだが」
魔力念糸で口を塞ぎ、全員を拘束する。
ダンジョンの魔物と同じように、四人は蜘蛛の巣に引っかかっているようだ。
全く歯ごたえがない。
リハビリにならない。
「他に何人潜んでいる?」
足音を立てない時点で、暗殺者ギルドの関係者だろう。
時間はかけたくない。
馬車の中でソエルお嬢様を待たせているからだ。
「まぁ、いい。どうせ喋らないだろうし、相手を間違えたことを後悔するんだな」
そう言って、四人全員を魔力念糸で絞め落とす。
勉強代として、身ぐるみを剥がさせて貰うけど。
少しはデート代の足しになるか。
久しぶりの部屋の中は少し荒らされていた。
空間収納の中に、私物をしまい込む。
一階に降りて、宿の主人に泥棒が入っていることを伝える。
四人が部屋で倒れているから、人を連れて来た方がいいと言付けして宿を出た。
101話です。
北海道はどんどん寒くなってきました。秋から一気に冬になりそうです。
早めに冬への衣替えを考えないといけません。
お嬢様シリーズの話が少し続きます。よろしくお願いします。




