レナン大陸に向けて
レナン大陸。
ギー婆さんの住む、横に長い大陸だ。
目指す火山はその大陸の果てにある。
一度行った場所だから、ジェニファーのテレポートで飛ぼうと思えば飛べるのだが、距離があるし、彼女の魔力ばかりに頼るのも忍びない。
しかもテレポートは、船を飛ばす事はできない。
さすがに船は重すぎるか。
せっかく頂いた船を置き去りにするのはもったいない。ガルディスにも、船旅を楽しんでもらおうと、あえてテレポートは使わず船で行く事にした。
テュッティ戦で頭に怪我を負ったロック。
ジェニファーのキュアリーでだいぶ良くなったものの、大事を取って休んでいた。
体を起こすとまだフラフラする。
彼のベッドの横で、ルナンが介抱してくれていた。
シトラス達も様子を見に来てくれる。
ひんやりしたタオルが額に置かれた。
「ロック様。ご気分はいかがですか?」
「ありがとルナン。タオルが冷たくて気持ちいいよ。痛みはまだあるけど、大丈夫だよ」
「そうですか。あまりご無理はしないで下さいね。もう少し様子を見ましょう。まだ横になっていて下さいませ」
「ああ、分かったよ」
「わたくしは、氷を取り替えて参ります。それではのちほど」
ルナンが出て行った部屋。
ロックは一人思い返す。
失敗したなあ。
船を操縦していたとはいえ、テュッティの動きに気がつかなかった。
それでみんなに迷惑をかけてしまった。
(オレも、まだまだだな)
悔しい思いで首を右に向ける。
その方向には窓があり、光る海が広がっていた。
船で旅をしているんだから、当たり前か。
船には八部屋程の個室があり、シトラス達はそれぞれ好きな部屋を使っていた。
涙が出てくる。
その涙を拭うと、
「ロック、どうしたの? 頭痛いの?」
シトラスとジェニファーが心配そうに顔を覗いていた。
「シトラス、ジェニファー。平気だよ。ちょっと考え事をしていただけさ」
「そう。でもどこか痛かったら言ってね。あたし出来る限りの事するから」
「俺もだぜロック」
「ありがとな二人とも。持つべき者は親友ってか。オレ、生きてて良かった〜」
「ホントよ。あの時、ロック死んじゃったかと思ったもん」
「けど、タリスマンを使ってオレを回復してくれたんだろ? ジェニファーのおかげだな」
「テュッティは、直接お前の頭を狙ったんだ。あんな硬いもんが当たるなんて。守れなくて、ゴメン」
「お前のせいじゃないさ。オレも注意が足らなかったんだ。前にお前が頭を怪我した時の気持ち、分かる気がする。ハハハハ」
「もう、ハハハハじゃないよ」
「まあ、賑やかですね〜」
ルナンが氷水を持って入ってくる。
温かくなったタオルを替えてくれた。
気持ち良くなって、ロックは少し眠気が襲って来た。
「まあ。眠たいのですね。よろしいですよ。わたくし達が側にいますので、どうぞお休みになって下さいませ」
「うん、悪いけどそうする」
シトラス達に静かに見守られ、ロックは心地よい眠りに誘われた。
悲痛な面持ちでドラモスは手を合わせる。
木の棺には、テュッティが入っていた。
魔王城の裏側。
今まで亡くなった魔族が、火葬される場所だ。
ここに新たな遺体が来た。
「テュッティ……」
スーリアが泣く。
魔族の中でも子供で、スーリアやトーラ、ターラにも良く懐いてくれた。
生意気だが、可愛げもある子供だったのに。
「何故、こんなに早く……」
「あたし達より先に逝くなんて、テュッティ、急ぎ過ぎるよ」
トーラ、ターラも言葉にならない。
棺に火が点けられた。
その炎を見つめながら、ドラモスが怒りの言葉を吐く。
「ガルディス、許さんぞ。よくも我が可愛い部下を……! 厳しくした部分もあったが、それでもテュッティは、ついて来てくれたのだ。この恨み、必ず我が……!」
魔王は、口には出さなかった。
それでも悲しみは、皆と同じだ。
(テュッティよ。頑張ったな。勇者を倒すまではいかなかったが、それでも、仲間の一人に傷を負わせた。魔族の一員として、褒めてやろう。今は休め。テュッティ)
赤々と燃える炎の中、テュッティの魂は登って行った。
二日後。
船はようやくレナン大陸に到着した。
なるべく火山の近くに船を停める。
これから、山頂に向かって歩くのだ。
やっぱり暑い。
フレイルの洞窟は山の途中だったが、今度目指す場所は山頂。
どのくらい時間が掛かるだろう。
道なりに歩いて行けば大丈夫か。
「また、この火山を訪れるとは思いませんでしたね。ご主人様」
「そうだな。まあ、道があるみたいだし、何とかなるだろ?」
「途中で道が別れてたらどうすんだ?」
「シトラスって、たまに何も考えてない時があるよね」
「ロック、ジェニファー。その時はその時。行くぞ」
「あ〜あ……」
シトラス、ジェニファー、ロック、ルナンは先に行く。
ティナとガルディスは少し呆れていたが、
「元気ね。まあ別れ道があって駄目だったら、引き返せばいいし」
「そうだな。どっちに行くかビシッと決めてやるか」
「あら、ビシッと?」
「何だ? 俺にも少しは格好つけさせろ」
「はいはい。いつでも格好いいわよ。でも別れ道に宝箱とかあったりして」
「おいおい……」
と、ノロケを交えて後ろを追った。
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