第4話 意外と家庭的?
「う~~~ん……悪くないけど…………そっちも試してみたいわね」
「かしこまりました」
「………………」
ある日の朝、雷華は朝からアンナたちの着せ替え人形となっていた。
『とびっきり可愛い格好で迎えましょう!!!!』
久しぶりに父親であり、デリルガーナ家の現当主であるランゾが戻ってくる……その目的が雷華改めスランということもあって、アンナは朝から娘に一番似合うドレスを探し、実際に着せて確かめていた。
(初めはびっくりしたけど……もう慣れてきたなぁ…………)
前世でそこまでファッションに興味がなかった雷華だが、それでもドレスというものに関して、一度ぐらいは着てみたいなと思っていた。
そんなドレスを初めて着れた時は久しぶりに格闘技や武器などではないことで若干興奮したが……もう完全に慣れてしまった。
(それにしても…………いったい幾らするんだろ?)
用意されているドレスの数は、一着や二着だけではない。
それこそ、目に見えて解るだけでも数十着はある。
(…………お金持ちというか……貴族、だなぁ~~~)
本当に凄い家に生まれてしまったと改めて思う雷華。
そうしてスランの燃えるような赤髪に似合うドレスが決まり、到着まで着たまま待機。
当然……ドレスを着た状態では、レドルスから貰った木製の剣を満足に振るうことも出来ないため、非常に退屈であった。
(……本でも読もう)
既にこの世界の文字は覚えており、まだ読んでいなかった魔術に関する本を取り出し、眼を通していく。
「……スランは魔術師になりたいの?」
「うぅん。ただ、気になるだけだよ」
「そうなのね」
デリルガーナ家は、武家の名門。
剣こそが、武器こそが至上!!!! 魔法なんて軟弱者が使うものだ!!!!!! と、現当主などは考えていないが……それでも戦闘で武器をメインに扱う以上、魔法というものを見下す傾向にあり、デリルガーナ家の者として生まれた者は基本的に魔術師の道には進まない…………家の空気が、進ませようとはしない。
(胸の中心にあるものを感じ取り、全身を駆け巡るイメージを浮かべ、実際に循環させることで出力などを高める…………胸か腹かの違いだけで、高め方は闘気とあまり変わらないみたいね)
魔法を使う者は魔力を……武器を扱う者は、闘気という力を扱えるようになる。
当然、スランは後者の道に進むつもりである。
しかし……前世の記憶があるスランにとって、魔法という存在は武器たちと同じく興味が惹かれる存在であり、胸を高鳴らせてくれる。
(術式の展開……ものによっては詠唱が必要なんだよね……詠唱………………やっぱり、恥ずかしいね)
雷華の頭の中に、中二病という単語が浮かぶ。
勿論、熟達した魔術師たちは詠唱が必要な魔法であっても詠唱を破棄して魔法を発動することが出来るようになる……しかし、敢えて詠唱を行うことでより威力を高める効果もあるため、一概にただ恥ずかしい行動と断言は出来ない。
(……やっぱりそういうのを潰す為には、早く闘気を使えるようにならないと、か…………瞑想? を頑張るか)
空手なども習っていた雷華にとって、瞑想という動かない鍛錬方法自体は苦手ではない。
ただ、最近は木製の剣を振るうことに夢中になり過ぎて頭からすっかり抜け落ちてしまっていた。
「っ、来たわよ、スラン。行きましょう」
「はい、おかあさま」
まだ……まだ若干むずむずするものの、アンナのことをお母様呼びすることには徐々に慣れてきた雷華。
まだ少しむずむずが残る中、アンナや騎士たちと共に帰還した騎士たちとデリルガーナ家の現当主……ランゾを出迎える。
「「「「「「「「「「お帰りなさいませ、ランゾ様!!!!!」」」」」」」」」」
両側に並んだ多くの騎士たちが声を揃え、覇気が伴った出迎えを行う。
本来であれば、この場にアンナ以外の妻たちやスラン以外の子供たちも並ぶのだが……ランゾの指示もあって、身内の中で出迎えたのはアンナとスランだけだった。
「お帰りなさい、ランゾさん」
「あぁ、今戻った。息災だったか、アンナ」
「えぇ、勿論です!!」
満面の笑みを浮かべながら、アンナは軽く娘の背を押した。
「はじめまして、おとうさま。スランです」
「ほぅ……歳の割にハッキリと喋るな……俺がお前の父、ランゾだ…………とりあえず、中へ入るとしよう」
「「はい!!」」
防具を取り、上着を脱ぎ、三人で食堂へと向かう。
「…………ふっ、相変わらず美味い飯を作るな」
「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいです」
アンナも貴族出身の女性……いわゆるご令嬢という存在だったが、珍しくちょっとお菓子を作る程度ではなく、がっつり料理が出来る。
そこが、ランゾがアンナを気に入った点の一つだった。
(……さっきまでと、全然雰囲気が違う)
門から中へ入ってきた時のランゾは、そこら辺の騎士がミジンコに思えるほどの覇気を纏っていた。
ランゾがわざと威厳を見せるようにしているのではなく、自然と身に付いてしまった圧力だった。
しかし……今はまだ強面顔のせいで圧を感じるものの、先程とは反転して家庭的な温か味というものを感じ取れる。
(というか、本当にデカい……二メートルは…………余裕で越えてる? けど、体が軽そうにも感じる…………本当に、あの人が父親なんだ)
そんな事を考えながら、雷華は一歳ながらもりもりと食事を食べ続ける。
そして家族での食事を終えた後……雷華は一人、ランゾの私室へと呼ばれた。




