第16話 確信がある
SIDE 雷華
(二時間ぐらいは経ったかな……後八時間……良いね。あと八時間もある)
既にゴブリン、スライム、ラージマウスにファットボア、ポイズンスネークといった五種のモンスターを討伐し終えていた雷華。
彼女にとって普段の生活も楽しいものだが、その生活の中で培われた力を発揮できるという機会は……この上なく楽しく、至高の時間と言えた。
(けど、あれだね……もう少し強いゴブリンとかと戦ってみたいな)
ポイズンスネークやファットボアといった獣や爬虫類系のモンスターとの戦いも十分楽しんでいる雷華だが……まだまだ前世の感覚が抜けておらず、どこか人型との戦いを求めている。
その点、ゴブリンは中々良い。
そこら辺のガキんちょには出せない本物の殺意を出せる。
加えて……相手がメスだと発揮する、種付けモンスターとしての性欲。
当然、雷華も女性ではあるため、それは普通にウザい。
ただ……それはそれとして、戦闘が始まることを考えれば、それは自身に恐怖を与える材料へとなる。
そこに殺意も加われば、雷華の闘争心を更に燃え上がらせるベストな状態となる。
なのだが……如何せん、ゴブリンたちの戦闘力がしょぼい。
複数体に囲まれたとしても、今の雷華であればあっさりと対応出来てしまう。
(上位種っていうのがいるんだったけ……そういうのと出会えば、もっと楽しい経験が出来るかな)
一応、今回の狩りは試験。
当然……子供たちが殺される可能性はあるし、なんなら状況次第では雷華であっても殺される。
だが、今の彼女はそういった安全よりもスリルを……戦いで得られる楽しさを求めていた。
そうなるとどうなるか……答えは、一つ。
なんとなく覚えている地理を頼りに、向かわないようにと告げられているエリアへと足が動いてしまう。
「…………ふふ、こんな感じだったな」
異世界に転生してからは全くやっていなかったが、雷華はたま~~~にいたずらをするところがあった。
それこそ、前世の幼い頃は頻繫に行っていたやんちゃガールでもあった。
その際に感じていた緊張が含まれるドキドキ感が今、再び彼女に高揚感を与えていた。
(とりあえず、いつでも使えるようにしておけば良い、よねっっ!!!)
ついに、そのエリアに足を踏み入れたタイミングで、投石が彼女を襲う。
「体が一回り大きくて……剣を持ってるってことは、ゴブリンナイト?」
「ギギャ…………ッッ!!!!」
スランからの問いに答えるわけがなく、ゴブリンナイトは地を蹴り自ら接近し、どこで拾ったのかと疑問を抱くロングソードを振り下ろす。
(ッッ!!! うん、良い、速さッッ!!!!)
雷華は……スランは迷わず、自身も短剣を抜剣して剣戟を始めた。
(ふ、ふふっ、ふっふっふっ……あっはっは!!!!!!)
十、二十、三十と斬り結ぶ中、心の内からこみ上げてくる笑い声。
勿論、ゴブリンナイトのことをバカにしているわけではない。
ただただ目の前のモンスターとの戦いが楽し過ぎるが故に笑ってしまっていた。
(凄い、凄い! 凄い凄い凄いッッッ!!!! これが、本気で、更に濃くて明確な、殺意ッッ!!!!!!)
ゴブリンナイトはこれまで雷華が遭遇してきたゴブリンとは違い、彼女のことを性的対象として見ていなかった。
適当に気絶させ、持ち帰ることが出来れば性欲がむくむく膨れ上がるが……現状では、殺す気で戦わなければ自分が殺されると本能が理解していた。
加えて、ゴブリンと比べて圧倒的に身体能力が高い。
ナイトという上位種に成長したからこそ身に付いた剣技の腕前。
そのどれもがスランの闘争心を高ぶらせる。
「良いね、君、本当に、良いよッッッ!!!!!」
「っ!? ーーッ、ギ、ギギャッッッ!!!!」
自分が使っている得物より短い武器に押し負けるとは思っておらず、驚きの表情を零すも直ぐに立て直し、再び目の前のチビ人間? と斬り結ぶゴブリンナイト。
それが五分……十分と続くも、まだ決着は続かない。
「っ、っ……ギギャギャギャッッ!!!!」
何故だと、ゴブリンナイトは目の前の現状に納得がいかず、焦りを感じていた。
自分の剣が当たらない。
相手の剣も当たっていないが、それでも自分の剣が敵に届かなければ戦いに勝てないということは理解している。
「は、ははっ! はっはっはッッ!!!!」
「っっ、ーーーーーーッッッ!!!!!!」
にもかかわらず、目の前の雌は笑い続けていた。
笑われれば、ムカつく。
だが、それも自身の剣が当たれば怯えに変わるだろうと思っていた。
そう思って振り続けるも……当たらない。
全く当たらないどころか、掠りすらしない。
そして、目の前の雌は変わらず笑いながら剣を振るう。
ゴブリンナイトに……初めて、不気味という感情が思い浮かんだ。
しかし、すぐさまそれを塗りつぶすような怒りが溢れだし、力の籠った一撃を叩き込む。
「っっ、ふッッ!!! ……あっ」
「ギ、ギャ、ァ、ァ…………ッ…………」
「ん~~~~~~……まぁ、仕方ないか」
やや大振りであり、全力で叩き伏せるのを目的とした斬撃。
パワーはあるが、読みやすい一撃。
戦闘に関する経験値だけは一流に達している雷華からすると、あまりにも読みやすく……考えるよりも体が先に動き、カウンターの斬撃を喉にぶち込んでいた。
(仕留めれたのは良いことだし、良い経験にもなったけど…………本能的に反応したのは良くなかったな)
最後の攻防……雷華が相手の隙を見事突いた形だった。
だが、世の中にはわざと隙を晒して誘導し、クロスカウンターを叩き込んでくる猛者もいる。
前世ではそう見なかったが、この世界では強くなればなるほどそういった芸当が出来る者が増えてくるという確信がある。
「魔石魔石……あった、っと」
一難去ってまた一難……ではなく、娯楽が向こうからやってくる。
ゴブリンナイトが使っていたロングソードを使って投石を防いだ雷華。
投石が放たれた方向へと目を向けると……そこには人型の狼が唸りを上げていた。




