第14話 本物の殺意
「それではこれより十時間、君たちにはこのガザブスの森で探索し、モンスターを狩ってもらう」
翌日の早朝……スランたちは普段よりも早く朝食を食べて出発し、街から離れた森へと移動。
そこはデリルガーナ家が保有している森であり、多くのモンスターが生息している。
当然ながら……スランたちであっても、入りエリアを間違えれば瞬殺するほどのモンスターが数多くいる。
「諸君らも知っているとは思うが、モンスターにはこういった魔石というものを有している」
試験監督の騎士が取り出した物体は、紫色の小さな石。
その魔石と呼ばれる物はモンスターにとって第二の心臓とも呼べる物であり、討伐の証明と呼べる素材。
「諸君たちにはこの魔石の素材を……そして可能であれば、モンスターの中でも一番金になる素材を手に入れてもらいたい。それが、諸君たちの成績へと繋がる。勿論、今の君たちでは所有してながら移動できる量には限界があるのは解っているため、騎士団方からこれを貸し出す」
「「「「「「「「「「「「「「「っっ…………」」」」」」」」」」」」」」」
騎士が取り出した物は、一見すればただの袋。
しかし、中は亜空間となっており、見た目以上に大量の物を収納することが出来るマジックアイテム、アイテムバッグという代物。
中には一定時間、収納した者の時を止めたり、屋敷ほどの者を収納できるほどの空間を有する物もあるが……さすがに今回スランたちに貸し出される物はそこまで高性能なものではない。
それでも、子供がモンスターの素材や魔石を集めるには十分過ぎる空間を有している。
「その中に各々が手に入れた魔石、素材を収納してくれ。結果によって、デリルガーナ家の方から褒美が支給されることもある……それでは、君たちの健闘を祈る。散!!!!!」
「「「「「「「「「「「「「「「「ッッッ!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」
試験監督者の言葉と同時に、雷華たちは一斉に散り散りに動き出す。
(あんまり、皆と場所が被らないところは良いよね……それじゃあ、向こうかな)
なんとなく感じる皆の気配があまり感じない方向へと駆け出すスラン。
「ギギャギャギャっっ!!!!」
「……ゴブリン、だよね」
肌は緑色であり、現在のスランたちとそこまで身長が変わらないサイズの子鬼。
「ギャギャ、ギャギャギャっっ!!!」
「っっ、っと……ふふ……やっぱり、パルガやルカナたちみたいな、紛い物とは訳が違う、ね」
パルガのような、本当にお子様が零すものではなく……パルガよりはまともであったが、それでも所詮は子供の域を出ない紛い物ではない。
野生の生物が放つ、本気の殺意。
その殺意が……雷華の闘志を燃え滾らせる。
「っ、ふッッッ!!!」
「ギャっ!? ァ…………」
「あっ…………終わっちゃった」
掴みかかろうとする右手を捌き、右手の手刀を喉元に叩きつける。
その一撃で、あっさりとゴブリンを仕留めてしまった。
雷華としては、もう少しモンスターが醸し出す本気の殺意というものを堪能するつもりだった。
しかし……その殺意に当てられて普段以上に闘志が燃え上がった結果、一瞬にして終わらせてしまった。
「……意外と、何も感じないものなんだね」
そう言いながらナイフを取り出し、ゴブリンの腹を搔っ捌き始める。
そうしなければ、お目当て魔石が手に入らない。
(…………これもまた、意外とって感じ…………前世で普通に料理したり……魚を捌いたりしてたから?)
自分がこういったものに、光景にはなんとなく耐性があるとは思っていた。
それでも騎士たちから初体験時の内容を聞いていたため、もしかしなくても自分も吐いたり怯えたりするのではないかと予想していたが……予想に反し、雷華は捌かれたゴブリンの中身を見ても特に朝食がリバースすることはなく、気持ち悪いと感じることもなかった。
「よし、次いこ」
魔石を回収後、即移動して次の標的を探す。
すると十分もたたず、もう一体のメジャーなモンスターを発見。
(…………ド〇ク〇のスライムと、ちょっと違う……あんまり可愛くない。それに、ゴブリンと比べて……あまり殺意がない?)
対面したスライムは、想像していたものよりもどろどろしており、ゴブリンと比べて自分に対して殺意や敵意を向けているとは思えなかった。
「…………っ!!」
「っと! ……ふふ、そうだよね。モンスターだもん、ね」
「っ……っ」
スライムは目の前の敵に対し、酸を飛ばして殺そうとする。
口らしい口はないが、殺し終えた後は全身で覆い隠し、そのまま飲み込んでじっくりと溶かして栄養にしてしまう。
(これは、ちょっと、面白い、かも)
同世代の者たちと試合を行っている時と比べ、スライムの散弾はどこで飛んでくるか解り辛い。
それが、スランにとっては逆に面白く感じ、一種の訓練になっていた。
「っと、ひょっと……っ……おぉ~~~。連射も、出来るんだね」
「……………………」
「どうしたの、もっと撃ってきてよ」
「…………っ」
「あっ、待って」
撃てど撃てど、全く当たらない。
既に数十発以上も撃ったにもかかわらず、一撃も当たらない。
そんな現実を目の当たりにして、スライムはあっさりと諦めて逃げ出した。
だが……その移動速度では、本気で地を蹴る捕食者から逃げ切るのは不可能だった。
「っっ!!!! 今のは、凄かったね」
「っっ!!!??? ……………………」
最後まで勝機を諦めていなかったスライムはスランが一定の距離まで近づいた瞬間、狙いを定めて散弾を放った。
しかし、それを圧倒的な反応速度で躱し、闘気を纏った左手を突っ込み……ぷよぷよと浮かんでいた魔石を掴み取り、引き抜いて絶命させた。
「よしよし。それじゃあ、次行こっと」
十時間後までは、まだまだ時間はある。
スランにとって、お楽しみタイムは始まったばかりであった。




