第13話 それで当たり前
「明日かぁ……」
派閥づくりに賄賂の為の商品づくり? も日常に入り始めてから約二年が経過し、七歳となったスラン。
そんな彼女は明日……モンスターという、怪物と戦うことになる。
(なんとなく漫画とかで見たことがあるけど、怪物かぁ…………熊と戦ったりはしなかったからなぁ……やっぱり緊張するのかな)
某ボクシング漫画に出てくる主人公の先輩が熊と戦っている話を読み、一時本気で熊と戦り合ってみたいなと思っていたスラン。
だが、当然ながら住んでいた場所が一応都会に近い場所だったこともあり、そのような機会は一度も訪れることはなかった。
「一応話はしたし……大丈夫、だよね?」
明日のモンスター戦に参加するのはスランだけではなく、スランが助言を伝えていた同世代の騎士候補たちも参加する。
雷華から視ても、子供たちはそれなりに成長していた。
なんなら、八歳で……七歳で一星となり、闘気を獲得した者たちもいる。
闘気を会得すれば、モンスターの代表格と言われている緑色の小鬼……ゴブリンという存在には負けないとされている。
(出来る限りの対策はしたと思うけど………………やっぱり、私って人のことは結構心配性だよね)
同じジムや道場の同世代が大会などに参加する時は、いつもスパーリング相手などになり、トレーナー志望としてサポートを行っていた。
もう大丈夫だろうと思うぐらいにはサポートを行うも、試合の前日やいざ試合が始まると……期待の気持ちもあれど、同じぐらい心配の気持ちもあった。
「…………信じないって言うのも、あの子たちに失礼だよね」
最後にサポートする側に出来ることは、信じることだけだ……そんな師のことを思い出し、スランはそれ以上考えることを止め、明日に備えていつもより少し早目に眠りについた。
「それでは行くぞ!!!!」
教官騎士の太い声と共に複数名の騎士……そして多くの騎士候補の子供たちとデリルガーナ家の五女、スランが共に街から離れた場所へと向かう。
(…………闘気の循環でもしとこう)
馬車に揺られる間、前世の様に暇を潰せる物がないため、雷華は闘気の扱いや出力などを向上させるための瞑想……闘気循環を始めた。
スランがそれを行うならばと、既に星に目覚めた組も同じ様に闘気循環を始め……まだ星に目覚めてない者たちも緊張を落ち着かせようと瞑想を始めた。
(……新米騎士……いや、熟達した騎士たちの集団を見ているようだ…………確かに子供たちも頑張ってはいたが……その中心となったのはやはりスランお嬢様……カリスマ、というものなのだろうな)
英才教育を受けている子供たちとはいえ、長い時間馬車に揺られる間は各々自由に楽しく話すものであり……騎士たちもそれを咎めることはない。
しかし……今回野外実戦を体験する子供たちはスランの行動に従い、全員実習場所の最寄り街に到着するまで闘気循環、瞑想を続けた。
「明日に備え、しっかりと英気を養うんだぞ」
「「「「「「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」」」」」
最寄り街に付いてからも特にすることはなく、言われた通りしっかりと飯を食べ、湯船疲れを洗い流し、早目に就寝する。
リーダーと認識されているスランがそういった行動を取るから……というのも多少あるが、既に彼らの中でふざけることなく……遊ぶことなく、全力で明日の実戦を成功させてやるという気持ちで満ち溢れていた。
(皆気合入ってるねぇ…………こういう時って、私が何か声を掛けた方が良いんだっけ)
前世とは違い、雷華はトレーナー候補側ではなく選手側。
そして、同じ選手たちを纏めるリーダー的な存在であることに変わりはない。
柄ではない……自分ではそう思いながらも、雷華は一度自室に子供たちを集めさせた。
「「「「「「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」」」」」」
「集まってくれてありがとう。戦いが始まったらもう言う時間がないから先に言っておくね……モンスターは、私たちとは違う存在……異形の怪物。だから、それを前にして恐ろしいと思ったり、怖いと思うこと自体はおかしなことじゃないと思う」
「「「「「「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」」」」」」
まさかの言葉に、子供たちは困惑。
あのスランにそう思うものがあるのかと……あのスランがそう思うのであれば、自分たちなど全く敵わないのではないのかと思ってしまう。
「けど、皆はそういう奴らを倒す訓練を積んできた。今の皆にはモンスターたちを倒せる力がある……だから、必要以上に恐れることなく戦おう」
「「「「「「「「「「「「「「「スラン様……」」」」」」」」」」」」」」」
「それと、勿論自分の力で倒すということを大事にしたいかもしれないけど、それでも……仲間を頼るということを忘れないようにね」
前世では、選手時代だった雷華やトレーナー候補としてサポートする側の時も、リングに上がってしまえば……戦うのは基本的に一人。
だが、今回は違う。
森に入って試験が始まってから絶対に一人で戦わなければならないという訳ではない。
(モンスターって存在と戦うってことは、本当に死ぬかもしれないからね……そこで意固地にならないでほしい)
基本的に無表情なスランとはいえ、ここ二年間助言を伝え、共に訓練してきた彼らに対して大なり小なり情というものがある。
だからこそ……願うならば、誰一人として欠けることなく屋敷へと戻りたい。




