第11話 非常に重要なこと
「「「「「「「「「「っっ…………」」」」」」」」」」
(……まぁ、とりあえず前世通り頑張ってみようか)
普段は試合の時ぐらいしか関わらないスランを前に緊張する騎士候補たち。
対して……自分から人との距離を詰めるのは苦手な雷華だが、今目の前にいるのは子供たち。
子供たちの相手はジムや道場に在籍していた際、バイトとしてジュニアコースの子たちの相手をしていたため、絶対に無理というほど苦手ではなかった。
「皆は、得物を振るう時にイメージを浮かべてるかな」
「イメージ、ですか?」
「うん、そう。あそこで騎士たちが素振りをしてる……正解の動きをしてくれてるんだけど、まずはそれを覚える。多分だけど、私はそれを0歳の時にしてたんだと思う」
「「「「「「「「「「えっ!!!???」」」」」」」」」」
驚くな、という方が無理な話であった。
だがそれと同時に、五歳六歳の子供たちは大人たちからスランが初めて剣を振った時の話を耳にしている。
まだ……まだ幼いものの、彼らもまた将来はデリルガーナ家に仕えるための教育を受けており、そこら辺の平民たちよりは高い理解力を有している。
「そして、頭の中に正解の動きをしている自分を何度も何度も思い浮かべるの」
「そ、それがスラン様の……強さの秘密、なのですか」
「そうなんじゃないかなって思う。だから、皆もやってみない?」
「「「「「「「「「「は、はい!!!!」」」」」」」」」」
同世代の者たちは気合の入った返事で応える。
元々デリルガーナ家の令嬢という羨望の存在ではあったが、そこに加えて先日普段からそこそこ調子乗りであったパルガとルカナを試合でぶちのめしたこともあって、割と同世代の者たちはスランに対する好感度が高かった。
「ロングソードだと……多分、あの人とあの人、かな」
「「はい!!」」
「双剣だと……あの人を見本にした方が良いと思う」
「「「解りました!!」」」
「戦斧だと…………あの一際体の大きな人、かな」
「うっす!!!!!!!」
「槍だと……あの金髪の髪が長いお姉さんと、黒髪の短髪のお兄さんが良いかな」
「「はい!!!」」
「大剣は………………あそこの全体的にがっしりしてる人が見本、かな」
「「はいっっ!!!!!!」」
スランは武器に合わせて見本となるであろう……まず、正統派の扱いをしている同じ武器を扱う者たちを指さした。
すると、騎士たちは普段から気合を入れて訓練に取り組んでいるものの、普段以上に候補の子供たちが視線を向けてくるということもあり、頑張ろう熱がかなり高まっていた。
(とりあえずはこんな感じで良いよね……まだ、誰にどういった動きが合ってるとか解らないし)
もしかしたら、この子は正統派の動きじゃない方が、というトレーナー視線の考えは少々あった。
なんなら、武器すらこの武器は本当にこの子に合っているのか、という疑問すらあった。
だがしかし……まだ、彼らは今のスランと同じく子供。
まだまだ体は出来上がっておらず、変則的なスタイルが合っていたとしても、まずは基礎が出来ていた方がいざ戦闘になった時に間違いなく役に立つ。
「見本の動きを頭に入れられたら、今度はその動きを真似してみよう」
「「「「「「「「「はい!!!」」」」」」」」」」
「それで頭の中にあるイメージとズレているなと思ったら、また見本を見てどんどん直していこう」
「「「「「「「「「「はい!!!!!!」」」」」」」」」」
(返事が良いね……本当に、よく話を聞いてくれるというか………………やっぱり、こういう家にいる子たちだから、普通の子供とは違うのかな)
雷華の知る幼稚園児たちは、ここまで聞き訳が良くない。
素直な子も勿論いるが、割合で言えば落ち着きのない子の方が多い。
というより、雷華自身……自分のアドバイスを本当の意味で異世界の騎士候補たち……子供たちが理解出来るとは思っていなかった。
(根本から違うのか、それともやっぱり教育の差? …………こういうところも凄いな~~~)
同世代の騎士候補たちに感心しながらも、スランはスランで自身の鍛錬を行う。
理想を目指す為に多種多様な武器を振るい、シャドーを行い……その後は闘気を使った鍛錬へと移る。
(…………武器を振るい続けるんじゃなくて、ちゃんとイメージが足りないと思ったらちゃんと見てる…………うん、やっぱり凄い)
助言を伝えた者として、スランはしっかりと騎士候補たちが自分の伝えた助言通りのことを行っているか確認していた。
すると、思っていた以上に子供たちはイメージとズレていると思えばそれがなくなるまでひたすら素振りを重ねていくのではなく、しっかりと元となるイメージ摂取を行っていた。
(後は……何が、出来るだろう)
一応、今回の目的はただ同世代に助言を伝えるだけではなく、自分の派閥をつくること。
であれば、もっと彼ら彼女たちからの信頼を得る必要がある。
(ん~~~~……)
騎士たちの食堂で一緒に昼食を食べている間もスランは考えていた。
しかし、考える力はあってもあまりそういった方面のことを考えてこなかった影響か……それとも実はそうだったのかもしれない隠れコミュ障が発生しているのか、これといったアイデアは思い浮かばなかった。
(……あぁ、そういえば…………自分の訓練に集中しててすっかり忘れてた)
昼食を完食したタイミングで、非常に重要なことを思い出した。
そして再び訓練場へ移動した後、開口一番にそれを伝える。
「訓練してて解らないことがあったら、私に訊いてね」
「「「「「「「「「「わ、解りました!!!」」」」」」」」」」
雷華の前世であれば……まだ最初に今日の先生と名乗っている分、子供たちも自ら質問しやすかった。
だが、今世雷華と彼らの立場は超名門の令嬢、いつかはその家に……もしくは令嬢に仕えるかもしれない騎士候補たち。
いきなり助言を貰えたからと言って「なら、俺たちから質問しても全然大丈夫か!!!」とはならなかった。
そのため、まずは雷華から質問しても良いよと言葉で伝える。
その行動が非常に重要なのだった。




