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剣は命を守る物

「レオンスおはよう。朝鍛錬かい? 近衛の仕事はどうだった?」


「おはようございます、騎士団長。近衛の仕事は今の所は特に問題はありませんが、このレイピアが少々⋯⋯」


せっかくの機会なので剣について団長に訴えてみた。


「なるほど。近衛は鍛錬をしない者ばかりなので通常の剣が重くて扱えないのだ。それに見た目重視なので美しい彫刻を施したレイピアがアクセサリー感覚になっている。よしレオンス、あそこにある鍛錬用の剣を持て」


「はっ」


「構えろ、行くぞ!」


気づいたら騎士団長と打ち合いをしていた。


細身に見えたから力よりも速度勝負かと思っていたけど、力の使い方に無駄がないから重いのに速い! 王宮は腐っているけど流石は騎士団長!


「強いな。これなら剣を携帯してもいいだろう。許可する」


「はぁはぁ、ありがとう、ございました」


剣を熟知して極めている者の剣だった。団長は息が上がってもいない。 少し悔しい。

団長って年はいくつなのかな? こんなにも剣を極めているのだからそれなりの年だとは思うけど⋯⋯


整った顔だが表情はあまり無いし、礼儀正しいけど淡々としているから謎だ。悪い人ではなく、むしろ真面目で面倒見は良さそうだけど。


とりあえず王宮騎士団の剣を手に入れられたのでよかった。今は革命の一年前なのでイザベル様の妊娠はまだだけど、これからは何が起きるか分からないしね。もちろん大事なのは歴史を変えない事だから無暗な争いは全力で避けるけど、この任務は完遂したい。最悪、私が無理でもイゴールだけは守り切って26年前に戻さないと。



「おいレオンス! なんでそんな無骨な剣を持ってんだよ! 美しくないぞ!」


「あら~今日も可愛い⋯⋯じゃなくて、アレクシーはそれしか食べないの?」


昼食の時間になり、可愛い先輩のアレクシーと一緒に食事を取る。


「沢山食べたら太るだろ! ブクブクになったらデブ羊みたいになるって家族に言われたんだ! って、そうじゃない、剣だよ!」


ふわふわの白い髪の毛を見て確かに羊! と思ってしまった。でも可愛いからアリだと思う。どうしてあんなにも丸々と太った動物達は可愛いのだろう?


「この剣じゃないと私は振れないの。レイピアは軽すぎるし、刺す剣は使い慣れていないから折ってしまうわ」


「そんなに簡単に剣は折れないよ! それにそんな剣はそこら辺で王宮警備をしているゴリラみたいな騎士が振り回す物だろ? 近衛には必要ないよ」


はて? 見た目重視を信じてやまない近衛騎士をどの様に説得すべきか。それにしてもここの昼食は美味しい。


でもこれも税金なのよね⋯⋯せめて残さず食べて鍛錬は欠かさない様にしないと。路上で物乞いしている人達に申し訳ないし。


近衛騎士には他の騎士達とは違う食堂があり、騎士と言うよりは優雅な貴族の昼食だった。

結局アレクシーは打っても響かない私に痺れを切らせ、プンプンと怒って先に行ってしまった。



「おい!」


 昼食を取り終え、一人で仕事に戻る途中に後ろから誰かに声を掛けられた。


「おい女! そこの近衛のお前だよ。何で振れもしない剣を持ってるんだ?」


「はい? 私ですか?」


「お前しかいないだろう? お綺麗なお人形ちゃんなのに、剣持つなど恥を知れ!」


「はぁ?」


この失礼な人は誰だろう。制服が青いので王宮警備の第一騎士団の人だとは思うが、これはきっと新人イビリ的な何かかもしれない。


だが私も昔から女のくせにとか、親の七光りだのと悪口を言われ続けて来たので慣れている。

たとえ練習であっても男性が女性の私に負けると自尊心が傷ついてしまうのだろう。


さて今はどうやり過ごすべきかな。あまりこの時代では目立ちたくないと思うのに。


「何だ? 俺とやり合うか? こっちは剣を持つにふさわしいだけの力量を持ってるんだ。お前らと違ってお遊びじゃない。この剣を持つために日々相応しい人間であろうと努力してい――――」


「素晴らしい心構えですね! まだ王宮も捨てたものじゃない。あなたにお会いできて良かったです。今は時間がないので後日打ち合いをしましょう! では」


「は? おい! 何なんだお前!――――」


 こんな腐敗の進んだ王宮内で、剣に真摯な騎士と出会えて嬉しくなってきた。何故だか残りの仕事も頑張ろうと思えたのだった。

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