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革命後の生活

 革命後の夜の王都は妙な熱気で溢れかえっていた。武勇伝を語る男に何も手に入らなかったと嘆く者、そして現実に戻り、明日からどう生活したらよいのか一気に夢から覚める者⋯⋯


農作業をほっぽり出して革命に参加した者の畑はそのままだし、飢えて革命に参加した者は飢えたままの現実が目の前にある。革命を成功させて王がいなくなっても、いきなり幸福になる訳でもなければ、食品が目の前に現れる物でもない。国庫は空っぽ。下がった国力はゆっくりと地道に上げていくしか道はないのだ。


「アルバン様に国王になってもらうべきだ」 「そうか? もう王政はいらない。市民から――」 「何一つ国を動かす統べも知らぬ者に舵取りなど無理だ」 「自分の利益しか考えられない視野の狭い者は駄目だ」 「実績だって欲しい」 「教育の無い者にはあり得ん」


政治犯として投獄されていた人の中には優秀だった者も多く、連日に渡り会議が行われた。


「昔の偉人が言っていた。優秀な王が治める国こそが一番幸せであると」


そして彼らはアルバン様に打診し、新しい国王、アルバン王が玉座に就いたのだった。



 ちょうどその頃、国境付近では逃げ隠れていた第二夫人イザベル様が捕まり、王都方面に送られていた。

新聞で読んだ内容からイザベル様以外の生存は絶望的だと思われる。革命中に市民が王を殺してしまったので、その現場にいなかった者はいまだに怒りが収まらない部分があり、他の王族を生け捕りにして民衆の前で処刑すべきだという意見が多いのだ。怒りの落としどころが必要なのだろう。


「侯爵、イザベル様は今どこでしょうか?」


「新聞によると、もうすぐ王都らしいぞ。でも王妃は見つからないなぁ」


「⋯⋯そうですか」


イザベル様があの監獄に来るのなら私は⋯⋯あのパブに行ってみよう。



「すみませんステファンさん、また監獄で働いてもいいですか? 当分仕事がなさそうなので」


「お! レオじゃんか。あの下働きのヤツか? あ~前に働いてた爺さんが戻っちゃったんだよ」


「え⋯⋯」


「だが新しく牢獄の騎士を募集してるみたいだぞ? 応募してみたらどうだ?」


長く働くつもりはないけどイザベル様の出産は近い。私は募集しているという場所に行ってみた。



「あ、飯を作ってた子だね? レオンス・ローヌ伯爵令嬢で元王宮騎士? ⋯⋯へぇ~監獄襲撃の手助けの為に自分よりも身分の低い奴らに使われてたの? 凄いじゃん。採用」


担当者は革命側の人だったし、私は元王宮騎士なので簡単に採用された。そしてまた監獄で働き始めたのだった。


監獄で働く騎士は王宮で働く騎士とは違い二流で、身分も低いし、やる気もないし、王宮で問題を起こして飛ばされてきた騎士も多いのだとか。私も目立たないようになるべく適当な人間を装って適当に働いておく。


そして数日後、イザベル様を乗せた馬車が到着した。


「どんな悪女なんだろうな?」 「王は王宮にいたが、第二夫人は逃げてたんだろ? 無責任だよな」


市政に撒かれていた噂のせいで到着した馬車は酷い有様だった。市民から石や泥を投げつけられて馬も興奮気味で危険な状態だった。


⋯⋯王は寝たまま死んで、善良だったイザベル様にはこの仕打ち。騎士団長の事もあるし、この世界に神なんていないのだと思う。


「降りろ」


馬車から一人で降りてきたイザベル様は満身創痍の状態で、だがお腹はもうはち切れんばかりの状態だった。

そして並んでいる騎士の中に私がいる事に気づいたのか一瞬目を丸くしていたが、そのまま目の前を通り過ぎていった。


「へぇ~あれが」 「なんか普通だったな」 「そう見えて男に取り入るのは上手いんじゃね?」


何も知らない人は好き勝手なことを言う。イザベル様は皆の前で囚人服に着替えさせられ、薄汚い牢獄に入れられた。今は夏、歴史通りならば来年の初春までこの悪臭漂う牢獄内で過ごすのだ。冬は相当寒いと思う。


以前と同様に私は食事を配膳する仕事を率先して行う。あの大きなお腹には水と硬いパンでは食事が足りないので、こっそりと果物や干し肉やチーズを手渡していた。


「ありがとう」


「いえ」


控え目な声でお礼を言われるけど、私にはこんな事しかできない。


そしてとうとうこの日がやってきた。


「第二夫人の陣痛がきてます!」


「あ? そう」 「産まれたらどうすんだろうな?」 「子も処刑だろ?」


「あの⋯⋯産婆さんは⋯⋯」


「誰も来ねぇよ」 「そりやそうだ」 「誰が好き好んであの王とあの女の赤子なんか取り上げるんだよ?」


「⋯⋯」


どうしょう⋯⋯? アントワヌ様をきちんと産み落としてもらわないと後世の歴史が変わってしまう⋯⋯

歴史の教科書には出産の現場にいた人物なんて書かれていなかったし、イザベル様が一人で産み落としたのかさえ分からない。それに私のせいで歴史が変わってしまった可能性もある。


「わ、私が手伝うしかないわよね⋯⋯」


「真面目だなレオンスは」 「まぁ女同士だもんな」 「産まれてもどうせ短い命だよ」


出産なんて全く経験はないけど、やるしかない。とりあえず布類をかき集めてお湯も必要だったっけ?!


あの時の私には、とにかくやってみるしかなかった。

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