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お腹の子を守る決意

「なぜ王妃殿下は秘密の通路を教えたのでしょう?」


「分からないわ。ただあの人は楽しければいいと思う人なのよ。退屈が何より嫌いで、その騎士に隠し通路を教えれば面白い展開になると考えたのではないかしら?」


⋯⋯そんな理由だったの? 確かにイザベル様はその騎士の子を妊娠して部屋から出られない状況になっている。もしイザベル様の妊娠が王に知られて逆鱗に触れれば、二人とも処刑されてしまうかもしれない。そんな状況が王妃にとっては楽しいのだろうか。

⋯⋯でも王は常にお酒に溺れていて正常な判断ができない可能性もあるし、すでに知っているけど気にしていないのかも。

とにかく王妃の性格が歪んでいるとしか思えない。そういえば王妃は隣国の王族との会食の時、イザベル様をいじめて楽しんでいた気もするし、市政にイザベル様の変な噂も流している。⋯⋯それもすべて退屈しのぎだったって事?


「でね、その女性は大好きな人との間にできたお腹の子だけは守りたいのよ。自分もその騎士もどんな罰を受けてもかまわない。でもこの子だけは⋯⋯あとひと月は何としてでも生き延びて、産み落とさなきゃね」


「イザベル様⋯⋯」


「だからレオンスお願い。もしこの子に今後何かあったり、困っていたら助けてあげて欲しいの」


「?!」


 壁にいた侍女達と近衛騎士が一斉に私に礼をした。イザベル様の侍女も近衛騎士も皆一丸となってイザベル様を守っていたのだ。


「⋯⋯分かりました」


この瞬間、私は大嘘つきになる覚悟をした。



 そして次の日、私が15時の交代に王宮へ向かうと、イザベル様とその侍女、そして副団長、イザベル様の近衛騎士は王宮から消えていた。


「誰もいない⋯⋯」


そういえば第二王妃は国境付近の町で取り押さえられ、牢獄に入れられたと歴史の先生は言っていた。そして獄中で出産し、処刑されるのだ。


壁に仕掛けた監視用魔法陣を回収しつつ、昨日のイザベル様の話を思い出す。


『だからレオンスお願い。もしこの子に今後何かあったり、困っていたら助けてあげて欲しいの』とイザベル様は私に言った。ならば自分達が捕まってしまう事も考えていたのではないか。


「捕まってしまったら、その時は私に子を託すという事? だから私を一人ここに置いて行ったの?」


どうしょう⋯⋯でもあのお腹の子はアントワヌ様だものね。歴史を変えない為にもなるべく手は出さず、見守る感じで確実に生きられる様にしないと⋯⋯ならば⋯⋯



仕事が無くなってしまった私は、騎士団長に会いに団長室に向かった。


――コンコン――


「失礼します。いらっしゃってよかったです」


いつもお忙しい騎士団長が今日は書類仕事をしていた。イザベル様や副団長、騎士達が消えた責任もすべて彼の失態となるのだろうか。


「レオンスか⋯⋯良かった。君はここにいたか」


「⋯⋯はい」


どう見ても疲れている顔。でも書類を裁く手はとても速い。その姿が私には⋯⋯団長が終活をしている様に見えた。


「イザベル様の近衛騎士の任は解く。レオンスは騎士を辞めなさい」


「⋯⋯分かりました。ですが少しだけ手伝わせて下さい。この書類の量はお一人では大変かと」


「もう給金が払われるのか分からないし、王宮は危険だ」


「では一週間だけ手伝わせて下さい」


私は無理を言って一週間のみ副官の仕事をする事を認めてもらった。私は諦めが悪い方なのだ。それに書類から得られる情報もある。



 最近の食事は侯爵と二人の時が多い。もう何日イゴールと任務についてのすり合わせをしていないのだろう。少し心配になる。


「今日もイゴールは泊りですか?」


「そうだね。彼も真面目だよね」


 そろそろイゴールに25年後に戻る魔法陣の進捗を聞きたいのだけれど、イゴールはあの魔術研究室にいるのか侯爵家に帰ってこない。イザベル様の子であるアントワヌ様を見守る件もあるし、革命後も少しだけ滞在したいと思っている事について話したいのに。


⋯⋯きっと革命前に魔法陣を仕上げたいと思っているのね。それで根を詰めているのかも。

革命後は魔術研究を続けられる状況ではなくなるかもしれないし、何より危険。もし暴動に巻き込まれてイゴールが命を失う様な事になってしまったら私は25年後に戻れなくなってしまうかもしれない。

革命が起きる前に会いに行ってみましょう。


「なぁ、未来の儂は元気なのだろう? じゃあ市民に襲われたりはしないよね? 最近怖くて」


「さあ? 私は存じません」


「え~?! 大丈夫だよね?! 問題ないよって言ってよ! 怖くて外に出られないよ!」


「魔法で結界でも張っておけばよろしいかと」


私は騎士だし田舎出身なので過去の魔術師長については知らないし、歴史の教科書に書かれているのは王家についてだけなので、侯爵家については分からない。何件か王都にある貴族の屋敷は市民に荒らされ強奪される運命だが、この侯爵家については知らないのだ。


「では屋敷も儂も全部魔術で覆ってしまおう! もう明日からは仕事に行かない」


「⋯⋯大雑把ですね」


もしかして私は今、歴史を変えてしまう発言をしてしまったのかな? 大丈夫だよね?

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