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一体誰が父親なのか

 とうとう四月になった。獄中出産が可能な期限まで、残り四か月となった。

仕事が終わり、部屋でゆっくりと過ごしつつ、今回の任務について考える。


「⋯⋯私は色々と見落としている気がする」


もう一度冷静に考えてみよう。もしすでにイザベル様が妊娠しているとすると、相手として考えられるのは夜間警備をしている同僚の近衛騎士だと思う。その中で一番怪しい人物は⋯⋯駄目だ。全員怪しい。近衛は家柄も良く、見目麗しい人達の集まりで、イザベル様と恋仲になってしまったとしても納得できてしまう。

そして皆でイザベル様とその愛人を庇っている気がする。仕事仲間は皆、私と普通に接してくれてはいるものの、時々何となく感じる壁というか、一歩引かれている感じがしないでもないのだ。これは私が新人だし、女性だからなのかと思っていたけど⋯⋯違うのかもしれない。


朝、昼のみの担当は私とアレクシー、それにもう一人いるが、彼はまだ16歳なので夜勤はさせない様にしている。そして私とアレクシーはお気に入りなので朝か昼担当と言われているが、もしかしたら夜勤を担当しない様に仕事が組まれているのかもしれない。


「とりあえず夜間の王宮にいない二人は、父親である可能性はない」


一度は怪しんだ副団長も基本的には朝、または昼を担当をしていると聞いた。副団長という仕事上、日中は王宮にいる必要があり、定期的に会議もあるし、書類の提出等もあるから普通だろう。よって副団長は父親ではないと思う。

それに王妃の近衛をしている派手な副団長が第二夫人の元へ通うのは目立つ。どんなに仲間が匿っても、少しは噂になるだろう。王妃の住む場所と第二夫人の住む場所はかなり遠いので、確実にメイドや第一騎士団の王宮警備兵には見られるはず。だがそんな噂は一度も聞いた事がない。


そうなるとやっぱり怪しいのは同僚の近衛だと思う。もちろん彼らの中には結婚している者や婚約者がいる者もいるが、こんな世の中なので信用はできない。父親である可能性は十分にある。


かなり低い可能性も一応考えると⋯⋯近衛を買収している男でもいるのだろうか。金儲けとイザベル様のご意思により、部屋へ通している可能性がある。


「そうなると誰だか分からないわよね⋯⋯」


でも王宮に入るには、第一騎士団の警備兵の書類に王宮に来た理由と名前を記入しなくてはならない。毎度明確な用もなく王宮に入るのは怪しいと疑われるはずだから⋯⋯いや、今の王宮なら疑われ無さそう? それでも夜間は非常事態や緊急の要件が無い場合以外、王宮門を開ける事はないはず。


「そうなると王宮内にいる人物よね」


やっぱり王が気まぐれにふらりと寄って? それともまだ妊娠していない?

週に一度は診察にやって来るイザベル様の医者は、妊娠なんて口にした事もない。でも、もし彼も共犯だったら⋯⋯あの医者はイザベル様を小さい頃から診ている方だと聞いたので、あり得るのではないだろうか。そうなると侍女も共犯? あの侍女達は元々王宮にいた侍女ではなく、イザベル様の実家から連れてきた者達だと聞いたし⋯⋯それを聞いた時は、王宮の侍女が足りなくて仕方なく実家から送ってもらっているのだと思ったが。


「どうしよう? すべてが怪しい⋯⋯そうだ!」



「イザベル様の実家? モンターニュ子爵家だね。山があって酪農で有名かな?」


 私は夕食の時、侯爵にイザベル様の実家について聞いてみた。もちろん皆が知っている一般常識的な事はすでに私も知っていたが、知る人ぞ知る噂などが知りたいと思ったのだ。時に噂は侮れない。


「そうですか。何か過去に社交界で話題になる様な噂はありましたか?」


「う~ん? 妻なら知ってるかもしれないけど⋯⋯何? 何か気になる事でもあるの? 教えてよ!」


「あ、いや⋯⋯」


任務の内容は、この侯爵が相手であっても言ってはいけない決まりがある。その決まりを定めたのは25年後のあなたですよ? 侯爵。


父親候補が多すぎるのでイザベル様側から考えるべきだと思ったのだけれど、噂好きの女性から聞くべきだったと反省した。


とにかくあの医者はイザベル様の妊娠に気付いて何も言わないのか、本当に妊娠していないのかを知らなくてはならない。私は近衛騎士であって侍女ではないのでイザベル様の月の物が正しくあるのかも分からないし、入浴時や着替えの時は部屋の外のドアの前で待機なのだ。それは以前からの決まりらしい。女性の近衛がいなかったのだから当たり前だろう。こちらも一度だけ『私は女なので部屋の中に入れます』と伝えたが、『王宮に危険なんてありませんから』と侍女にやんわりと断られた。流石にそれ以上は言えず、入浴時や着替えの時には中に入れてもらえていない。


「よし! イザベル様が妊娠していないか、何としてでも確かめるわよ!」


私は一層気合を入れて、明日から仕事に行く事にした。

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