ひょろひょろ勇者
俺の突然のプロポーズは、当の相手であるレフィーナさんだけではなく、妹の三琴にも衝撃を与えた。
レフィーナさんは、エルフ族(※エルフという姓だと思っていたのだが、どうやら種族の事らしい)で、寿命も生活も人間とは違うと、三琴から強く窘められた。
レフィーナさんからも、寿命は1000年程で、御年は 77才であると告げられたが、年上萌えし、俺の気持ちはますます高まるばかりだった。
「お、俺っ! 年下で、頼りないかもしれませんが、頑張ってあと800年ぐらい生きて、レフィーナさんを守れる強い男になりますんで、どうか俺と結婚して下さい!」
「一さん……!!/// また、『結婚して下さい』って……!!」
更に押すと、レフィーナさんは再度驚き、真っ赤になった頬に両手を当ててエルフ語で何かを呟いた。
「→→♂♡♀ ≪♀♂❀※$!?↑↑♂♂※※♡♡」
ん? 一体なんて言ったんだ?
エルフ語が分かる三琴を見遣ると、すごく驚いた顔をしている。
望みアリかナシかどっちなんだ?
「一さん。あの、私……」
「は、はいっ……!」
俺がドキドキしながら、返事をしようとするレフィーナさんの言葉の続きを待っていると……。
「ちょ、ちょっと待ったー!!」
「「「「?!」」」」
突然木の陰から一人の男性が現れ、ね◯とん宜しく俺とレフィーナさんの間に割って入った。
「そんな事言っても無駄だ! 彼女の心はもう既に決まっていると思うぜ? このボキュに!」
そう言って、自分の胸を指差した素朴な顔立ちにおかっぱ髪の男性は、ひょろっとした体型にピカピカの鎧を纏っていて、とてもアンバランスな印象を与えた。
エルフ族ではなく、俺達と同じアジア系の人間に見えるこの男性は、レフィーナさんの恋人なのだろうかと胸がざわついたとき……。
「はい? 誰に心が決まっていると言うのデス? 冗談はやめて下サイ。弟がドラゴンに攫われた時に急にいなくなった護衛役の干さん」
「うっ」
レフィーナさんに刺々しい口調で指摘を受け、護衛役の干という男性は気まずそうな顔になった。
その雰囲気から言って、どうやら彼はレフィーナさんと恋人関係にはないようで、俺は少しホッとした。
「い、いや〜、さっきは、急に腹が痛くなって。もうちょっとでボクがドラゴンをやっつけたのに! 同郷らしいが、庶民のあんたらに見せ場を奪われたな〜」
「?! 同郷という事は、もしかしてあなたは日本人なんですか?」
「日本語を話してるなとは思っていたけれど、この人も私達の世界からこの世界に来たっていう事……!?」
干さんの言葉に、俺も三琴も驚きの声を上げた。
「ああ。あんたらも、日本人だろう? ボクはこの世界に召喚されし勇者、干風舞だ!」
「ええ! 勇者さんなんですか、すごいですね!」
「ええ……。あなたが勇者? (風吹いたら飛ばされる洗濯物みたいに弱そう……)」
胸を逸らす星さんに、俺は感嘆の声を上げたが、三琴は疑わしそうに目を細めた。
「まぁな。あんたらと違ってな、ボクはちゃんと麓のペラン王国に勇者として召喚された特別な人間なんだ。だから、魔王の生贄に選ばれたレフィーナさんの護衛の任務に……」
「ええ、私の護衛について頂いていた筈の勇者の干さんが、ドラゴンが現れると、急にどこかへ消えてしまったので、零さんの子孫さんに助けを求めたというわけなのデス」
勇者の干さんに白い目を向けながら俺達に説明するレフィーナさんに、彼は慌てて主張した。
「いやぁ、今回は体調不良で実力をみせられなかったけど、次に魔王の手下が来る時は全員ぶっ倒してやんよ! だから、レフィーナさん、安心してくれ!」
「わぁ。それは、安心デスー。(棒読み)でも、今日のところはもう護衛は大丈夫ですから、お引き取り下サイ」
「えっ。いや、でも……」
笑顔でレフィーナさんに、干さんは言い縋ろうとしたが……。
「お引き取り下サイッ!!☠」
「ひっ!」
般若のようなオーラを纏ったレフィーナさんの圧に干さんは縮み上がった。
「うわぁん! ママにもそんなに怒鳴られた事ないのにっ……! ボクがいなくて後で困っても知らないからな〜〜っ!」
「さよならー!」
「サヨナラー!」
泣きながら逃げ帰っていく干さんを、レフィーナさん、ロフィーニくん姉弟は笑顔で見送った。
干さんの姿が見えなくなると、三琴は呆れたような顔でレフィーナさんに話しかけた。
「あの人、本当に勇者なの? なんか頼りないね」
「ええ。肝心のところでいないのに、いつも後ろを付いて来て「ボク、まだ結婚してないんだよな〜。将来有望な勇者だから、口説くなら今のうちだぞ?」とかブツブツ言って来て、あの人一体何なんデショウカ?」
「うわ、キモッ! しかも、言い方男らしくなっ。完全にストーカーじゃん」
げんなりした顔でため息をつくレフィーナさんに三琴は自分の体に抱き着くような仕草を取り、気持ち悪がっていた。
勇者にも関わらず、女子軍に嫌がられまくっている干さんに若干同情しながらも、俺は首を捻った。
「でも、あの人、どこかで見たことがあるような気がするんだよな……?」
✽あとがき✽
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