エルフさんにプロポーズ
金髪翠眼の美しい姉弟が感動の再会を果たしている間、弟を攫おうとした翼竜は、さっきのダメージが抜けていないのか、ふらふらしながら山岳地帯へ飛んで行った。
お姉さんはそれを見遣り、ホッとした様子で弟くんの頭を愛おしげに撫でる。
「この子は村の宝なんデス。本当によかった……」
そして、改めて俺と三琴に向き直る。
「申し遅れマシタが、私はこの近くのム・フィーニット村の村長の娘、レフィーナと申しまマス。この子は弟のロフィーニデス。
助けてくれて本当にありがとうございマス」
「ア、アリガトウ……ゴザーマス」
「あぁ、いえいえ!// 当然の事をしただけですので。俺は一ノ瀬零の孫、一と言います!」
「どういたしまして。レフィーナさんロフィーニくん! 同じく一ノ瀬零の孫の三琴で〜す!」
レフィーナさんに流暢な日本語で、ロフィーニくんに片言の日本語で、丁寧に挨拶されお礼を言われ、俺は恐縮しながら、三琴はテンション高く自己紹介する。
「ハジメさんに、ミコトさん……! どんな字を書くのですか?」
「漢字、分かるんですかぁ? えーと、よいしょ……」
三琴はしゃがみ込み、地面に落ちていた小枝を拾うと……。
「兄は『一』……、私は『三琴』……と書きます」
それで土に字を書き付けていく。
「まぁ! お二人共、お名前に数字が入っているんですね?」
レフィーナさんは、地面に書かれた文字をのぞき込むと、ぱぁっと明るい表情になり、彼女も小枝を拾った。
「実は、私達も名前に数字が入っているんデスヨ? 私・「レフィーナ」はエルフ語で『4枚の葉』……という意味で……、弟・「ロフィーニ」は『5枚の葉』……という意味なんデス」
レフィーナさんは三琴が書いた『一』『三琴』の文字の隣に、整った字で『四葉』『五葉』と書き込んだ。
「わぁっ、そうなんだ! レフィーナさん話す方だけじゃなくて書く方も上手!」
「ああ! 俺よりもよっぽど綺麗な字だ!」
三琴と俺は歓声を上げると、レフィーナさんは照れたような笑顔になり、ロフィーニくんは、書く方はあまり得意でないのか地面に書き付けられた文字を眺めて、首を傾げている。
まぁ、そうだよな。日本語は表現が豊富で、文字も、ひらがな、カタカナ、漢字三種類あり、習得が最高に難しい言語と言われている。
異世界に住んでいるレフィーナさんが、どうしてここまで日本語を使いこなせるのだろうと疑問に思ったので聞いてみる事にした。
「レフィーナさん、日本語はどうやって習得したんですか?」
「ああ! それは、昔、レイさんが村に遊びに来てくれて、日本語をエルフ語に翻訳するノートを書き残してくれたからなんデス。村の皆、レイさんが大好きだったので、彼がいなくなってからも一生懸命日本語勉強しマシタ!」
「ははっ。そうだったんだ……!」
「ぷふっ。じぃちゃん、エルフさんに日本語普及してたのすごっ……!」
言語学者だったじぃちゃんの昔の足跡を知ることが出来、俺と三琴は顔を見合わせて、笑い合った。
「そう言えば、じぃちゃんも、名前に数字が入っていたんだっけね……」
三琴が、俺の左隣に『零』の字を書き足す。
「「俺の名前『零』は、何もない事を表す数字のゼロの他に、無限の可能性という意味が込められているんだぜ!」って、じぃちゃんよく言ってたなぁ……」
いたずらっぽい笑みを浮かべたじぃちゃんのセリフを懐かしく思い出していると、レフィーナさんは感慨深そうに頷いた。
「まぁ! 零さんのお名前にそんな意味が込められていたなんて……。
こうやって並ぶと、私達皆、零さんをお祖父さんに持った家族みたいデスね? ふふふっ」
……!!
そう言って屈託なく笑うレフィーナさんはとても綺麗で……。
陽に照らされ、キラキラ光る金髪の長い髪。大きく穏やかな緑の目。
白い肌にぷるんとピンク色の唇。
俺はその全てに見惚れてしまい、思わず呟いていた。
「レフィーナさん……。 本当の家族になりませんか?」
「え?」
緑の瞳に戸惑いの色を浮かべて、彼女が俺を見上げた時、もう高まる胸の鼓動を、弍乃にも感じた事のない迸るような想いを抑えられなかった。
「レフィーナさんっ! 俺と結婚して下さいっ!!!」
「えっ? えーーっ!??////」
「あ、兄ぃーーっ?!」
「???」
俺の突然のプロポーズに、レフィーナさんは目を見開き真っ赤になり、三琴は驚愕の表情で俺を見遣り、ロフィーニくんは可愛らしく首を傾げ、その場は大混乱となったのだった……。
✽あとがき✽
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