第53話 文化祭一日目[3]Dogeza
お久し振りです。
友達に薦められて「かぐや様は告らせたい」という漫画を読んだのですが、驚きました
「何か(自分の作品と)被ってない!?」
という感じに。
いやぁ名字被ってるわ、お嬢様だわ、メイドは金髪クォーターだわって、ホントにビビりました。
自分が知らない間にパクったのかと思いました。いや、パクってはいなんですけどね?
土下座。
日本の伝統的且つ芸術的な、相手への謝罪の意を表す行為である。
今では専らその用途で使用されるが、古くは相手への敬意や感謝を表すためにも用いられた。
基本的に、土下座をすれば何故か大抵の事は何とかなる。
土下座とはそういう不思議な力を持った行為なのだ。
Dogeza is a Japanese traditional culture. Would you try dogeza with me?(土下座は日本の伝統ある文化だ。君も僕と一緒に土下座しようぜ?)
「遅いです」
「……すみません」
目の前──というか頭上で腕を組み、僕を気持ち良さそうに睨んでいるのは、金髪が目立ち過ぎる由比藤紫苑だ。
そんな彼女に潔く美しい土下座を捧げているのは誰であろう、この僕──水野陸だ。完璧な土下座。大和田常務も顔負けである。
困った時は「ドゲザセップクハラキーリ」だ。何で二回も死んでんだよ。
まぁこの土下座なら何も言われまい……と思ったのだが……。
「土下座で全て解決出来ると思っているのでしたら、大間違いです。或いは、今すぐ社畜にでもなったらいかがでしょうか。余程土下座がお好きでいらっしゃるようです」
「あ、いや、それはちょっと……」
「失礼しました。冗談です」
「ですよね……」
「水野君は土下座のまま靴を舐めるのをご所望でしたね」
「冗談、ですよね?」
「……」
「え……?」
「冗談です」
「……良かったぁ。あと、さっきから頭の上に乗ってる足どけてもらえます?」
「失礼。足が滑りました」
「うん……」
そうだよね。滑ってたんなら仕方無い。僕は器の大きな人間。周りからの残念な視線とか痛くも痒くも無い。寧ろ快感。それは嘘。
大器は晩成するし、やっぱ土下座してればその内金持ち説あるな。土下座万歳。
頭の悪い事を考えていると、ローファーが漸く僕の頭を押さえ付けるのを止めたため、よっこいせと立ち上がる。
で、何について謝罪していたかというと、営業開始十分前にはクラス全員集合のはずの中、僕だけがその場に居なかったという事に、だ。
確かにギリギリの時間に間に合うように購買部に行ったのは覚えている。というか、途中からクラスの事とか忘れてた。
クラスの皆様も、しかと僕の事なぞ忘れていたであろうが、そんな中彼女──紫苑はいち早く僕の不在に気付きこのように僕をお嬲りになられていたのだ(涙目)。
僕が感動していると、紫苑はどこかの大佐よろしくゴミを見るような目を向けてくる。
「早く、その看板を持って私の目の前から消えて下さい」
「え……あ、はい……」
あれ、全然優しくない……?
「……他の人の姿が見えないけど……」
周りを見ても、いつものギャーギャーした連中や、四ノ宮紅葉や大川井縹の姿は無い。そうか、皆、僕が遅れて来たのを「プークスクス」と笑ってしまうと僕が傷付くと思って、そういう事が無いようにわざわざ僕が見えない所にいるのか。いやぁ優しさだなぁ(涙目)。
「皆さん、各自の持ち場に移動されたんですよ。残りは私の目の前にいる社畜土下座君だけです」
「名前違うんだなぁ……。まぁ、看板持ってれば良いんだろ……」
なら簡単だな……。
「言っておきますが、看板を持って、しっかり宣伝して下さいね?」
「……や、やだなぁ。そんなの分かってますよ」
めんどいなぁ……。
落胆していると、紫苑がため息をつく。
「まったく……少しは今日の大川井さんなどを見習って欲しいものですね」
その一言に、思わず反応してしまう。
「大川井さんを……?」
「そうですよ。私自身も彼女に劣っているとは全く思っていませんが、それでも、あそこまで様々な事をこなされています。並大抵の方ではありません」
「そう、だよな……」
そう。並大抵の方では無いのだ。家の仕事や勉強を何でもこなせてしまう紫苑でさえも、そう思う程に。
「……大川井さんって、今どこにいるか分かるか?」
紫苑は怪訝な表情になる。
「それは……バンドの方なのでは? ……何故です?」
「いや、ちょっと気になっただけ……」
「そうですか。……それよりも、早く持ち場に移動なさって下さいよ」
紫苑は少し眉を顰めるようにしたが、すぐに僕に背を向け、教室の中に入って行った。
紫苑は仮装もしていないし、恐らくは受付係でも担当するのだろう。確かに客引きには良いかも知れない。でもちょっと怖いかなぁ……。
暫くボーッと突っ立っていたが、じゃあ行くかと思い立ち誰かの手作りの木製看板を持ち上げる。
思っていたよりも木の重みがあり、少し腕が辛い。
肩で支える事にし、歩き出す。
何故、紫苑にあんな事を聞いたのかは分からなかった。
単に気になっただけというのは本当の事なのだが、何故気になって、さらに尋ねてしまったのだろう。
空に茶化されたから……。中村さんに言われたから……。いや、それよりも彼女のあの言葉を思い出したのかも……。
恐らく最近の何やらで必要以上に彼女を意識してしまっているのだろう。あの時に彼女が見せた表情は、何かに失望したようなそれだった。今となっては、拒絶を表していたのだろうと思われる。誰にも踏み込まれてはならない、彼女の場所がそこにはあるのだ。
しかし、差し出がましくも僕の自己満足はその場所は間違っていると声明を上げる。彼女は苦しんでいるのではないかと、それなら助けられるべきだと勝手に思い込み、自分なら実行出来ると痛々しいくらいの勘違いをしているのだ。
やはり気持ち悪い。いつになっても、この横柄な心は消えてくれない。
文化祭を謳歌せしむ生徒たちは皆笑顔に溢れている。それが本物なら、きっと美しいのだろう。
そんな物は昔に捨てている。それでも、ほんの少しの羨みを抱いていると思うとひどく格好悪い。
僕には、そういう事が出来る相手など居るはずも無いのだから。
最後までお読み下さりありがとうございます。
短くてすみませんでした。次回はもうちょっと長くなると思うのでご了承下さい。




