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面倒な僕を助けてくれ  作者: 柱蜂 機械
第三章 二年一学期編
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第52話 文化祭一日目[2]荷物持ち

 お久し振りです。

 2019年、どんな年になるんですかね? 楽しみですね。

 「Azurite」というバンドの、思い掛け無い演奏は大歓声の内に終了した。その時には、クラスで整列していたのが完全に崩壊し、皆ステージすぐ下でキャッキャワイワイウェイウェイとノリに乗っていた。しかしながら僕も、後ろで一人待機するのは逆に目立ってしまうため、それとなく彼らの集団の後方でピョコピョコ跳び跳ねていた。アチィ……。


 演奏後のウェイウェイ感はその後クロレッツ並みの持続を見せ、つまらない事で有名な校長の話も、皆笑顔で聞いていた。おい、スケジュール考えた奴天才だな。


 いよいよ開祭式が終了し、皆ゾロゾロと体育館を後にして各々の展示場へと向かう。文化部展は体育館の一階、科学研究部発表は北校舎の一階の化学室と生物室、クラス展は南校舎のそれぞれのクラスだ。その為、原則として北校舎の二階、三階と──勿論だが──屋上は立ち入り厳禁になっている。


 ウチのクラスの展示──お化け屋敷(笑)──は21HR、三階だ。昨日までに皆(僕以外)の総力を結して完成した物だ。クラス全員(僕以外)が自信を持って来場者を楽しませようとしている。いやぁめでたい。


 今日は一応、校内のみでの文化祭だ。明日は学校を解放し、地域住民を対象とした文化祭となる。だから、今日よりは明日の方が忙しいという訳だ。面倒臭……。


 なんだか前にシフト制という話があったが、そう言えば人を驚かすぐらい人と接してなかったので驚かし方を忘れてしまっていた事に気付いた。驚かされたり、人をムカつかせるのは得意だが、今求められているスキルじゃない。……という事がバレてしまったのかは分からないが、半日看板を持っているだけの簡単なお仕事を仰せつかった訳である。

 あわよくば、無職を狙えるのではと画策していた僕にとっては、仕事を与えられた時点でもう負けが確定してしまっている。仕事は仕事。


 教室に辿り着いてからは、暗室と化した教室の中に放り込まれていた複数の看板が引っ張り出され、その後各々に分配された。今日は午前を担当し、午後はフリー。結局お化け役はやらないので、リア充を恐怖のドン底に落とし入れる事が出来なくて少し残念だ。


 展示スタートは午前九時。今の内に昼飯を手配しておこうと思い、そそくさと教室を後にする。食品の引き換え券を買い求めるために購買部へと向かうのだ。

 購買部には、未だ人は少ない。ほんの七、八人がスマホ片手にそれぞれの友と談笑している。

 コーンとビニールテープで区切られた列に僕も参加し、販売員が来るまで暇を持て余す事にした。


 ボーッとポケGOを開いて画面を見ていると、ちょんちょんと後ろから背中をつつかれた。

 不審に思って振り返ると、そこには学ランに身を包んだ少女がいた。


水野(みずの)くん、おはよう」

「……」


 ……誰、この娘? 僕の事「水野くん」なんて言う人、二人しかいないぞ。


 で、誰? 学ランを着た女子って、何? 応援団? 今日の出番って、さっき開祭式の最後でやってた奴だけじゃ……じゃなくて、そんな知り合いいないんですけど。

 一度よく見てみる。


 ボーイッシュな髪型だが、優しそうな目と口元が可愛らしい。しかし……ハッ! まさか、これは夢? 前から学ラン着た女子って可愛いさ余って可愛さ百倍って思ってたんすよ。それが夢で出てきたって事かな? 納得。

 という訳で、家に帰ったら(そら)に学ラン着て貰おっ。「お兄の臭いしヤダ」とか言うのかな。もう、照れちゃって。可愛いなぁ。グヘヘ。


 で、誰?


「水野くん?」

「え、あぁ……おはよう……」


 よく分からなかったが、その場しのぎ的に適当な挨拶を返してしまった。この切り返し、僕じゃなかったら可愛さにやられて死んでた。自分のコミュニケーション力が怖い。


 少女は少し心配そうに両手を胸の近くに持ってくる。あれ……さてはこの娘、可愛い?


 僕が内心でドキドキキュンキュンしていると、その少女の背後からさらにぬっと人影が現れた。


 頭の両側からピョンと跳び跳ねて垂れるツインテール。「もう」どころか「未だ中学生」と僕の中で話題の四ノ宮(しのみや)紅葉(くれは)よりもさらに一回り低い身長。……あ……思い出した。


「水野、キョドってる……」

「キョドってないですおはようございます」

「水野の癖に生意気だな……。おはよう……」


 ロリータ臭さを感じさせる体型の宮城島(みやぎしま)美優(みゆ)は、いつも通り、やる気の無さそうな目でスマホの画面を眺めていた。

 こっちは学ランじゃないのか……。


 と、いうことは……。


 ちらと、視線を横にずらす。この学ランの女子、実は女子じゃなくて「ゆっきー」こと三島(みしま)祐樹(ゆうき)だ。男だ。良かった、気付いて。危うくそっちのルートに突入しそうだったぜ。


 ゆっきーくんは僕と宮城島さんの会話を聞いて安心したのか、笑顔で問い掛けてくる。


「水野くんもお昼ご飯買いに来たの?」

「ん、まぁ。……そっちも?」

「うん、そう。生徒会の人の全員分を特別に朝から用意してもらったんだけど、全部運ぶ事になっちゃって……」


 成る程、ゆっきーくんは生徒会の人間なのか。初めて知ったなぁ。

 という事は、宮城島さんもそうなんだろうな。


「全部って何人くらい……?」

「うーん、応援団もいるから、20人強かな……」


 ゆっきーくんはアハハ……と苦笑い。

 クッソ、こんな可愛い娘……じゃなくて男子に、全員分持たせるなんて、考えた奴頭どうかしてるぜ! 脳ミソかち割ってやる。


「マジか……。それ、二人で持ってけんの……?」

「ちょっと……微妙かなぁ」


 ソウカー。ソレハ困ッタナー。大変ダナー。


 流石に「手伝うか?(キリッ)」とかいうのはイキリだし、勇気無いし、面倒だしなぁ。……よし、ここは言わざる、だな。


 僕が必殺攻撃「場内手前でATS作動」を発動させていると、ゆっきーくんはこう言う。


「あの、水野くん……もし、良かったらなんだけど、運ぶの、少し、手伝ってくれない……?」


 僕は彼を見ていた。


 何で上目遣い? 何で顔が赤い? 何で手をモジモジさせている?


「あ、その……別に忙しかったら、その、良いんだけど……」


 色々ツッコミどころはある。


 だがしかし、僕にだって優先するべき事ぐらいある。ゆっきーくんには悪いが──




「い、良いよ……?」


 勿論ATS解除である。一気に場内に進入して、またさらにATSの力で緊急停車である。これで勝つる。


 なんか声が裏返って疑問形になったが、そんな事はどうでも良い。

 ゆっきーくんはパァと明るい笑顔を輝かせ「ありがとう」と伝えてくる。

 僕も「別に、当然の事だよ」の一言ぐらい言いたかったが、頬がニヤつきに固定されてしまったので「うん……」としか言えなかった。


 宮城島さんはスマホから目を外し、チラと僕を見る。


「水野は可愛い女子に弱い……。ただのキモい変態か」

「ちょっと待った。それ、健全な男子高校生は皆そうだから」

「そうか。皆キモ変態か。知ってた」

「そっちじゃない。可愛い女子に弱い、の方だ」

「僕、女子じゃ無いんだけどなぁ……」


 ゆっきーくんは少しシュンとして苦笑いする。


 あの……何か、ごめんなさい……。


「三島、まだ大丈夫。今の水野はそこまで行ってない……」

「この人これから行くみたいな言い方してるけど、これからも行かないから」

「う、うん……」


 ゆっきーくんは困惑というか「そういう慰め方されてもなぁ……」みたいな感じの顔になる。いや、何かホント……すみません……。


 そんな事を話していると、購買部の扉から恐らく販売員と思われる生徒たちが現れた。

 その中でも特に元気の良さそうな黒髪ショートの女子生徒が呼び掛ける。


「今から食品の引き換え券の販売始めるんで、お求めの商品言ってって下さーい」


 あ……。


 その後順々に販売がなされ、すぐに僕の番まで回ってきた。一歩歩み出て注文しようとする。へへ、注文が多いのは料理店だけじゃ無いぜ。


「よぅ水野。顔色悪いけど、大丈夫か?」

「あぁ……多分いつも悪いから大丈夫」

「そっか。じゃ、注文は?」


 興味あって聞いてるのか分かんなくなる反応の薄さだなぁ。


 中村(なかむら)(あや)は快活な笑みと受け答えを見せる。

 どうやら彼女も生徒会の人間らしい。

 やっぱりよく分かんない人は多い。単純に人とあまり一緒にいない、というのも要因ではあるが。


「え……と……、弁当? 一つ……」


 販売員──中村さんの後ろに価格と一緒にメニューが貼り出されているのだが「弁当」という商品がある。こんなシンプルな名前の弁当聞いた事無いな。

 口にすると、中村さんは驚きの価格を提示する。


「弁当一つな……。500円だぞ」


 は、マジ? ワンコインだけど、一番デカい価格の硬貨だな。だったら休んでマック行った方が安いな。


 内心納得は行っていなかったが、財布からちょうどあった500円玉を取り出しテーブルに置く。どう、この太っ腹感。

 その間にも、中村さんは紙片の束から一枚を取り出し僕の500円玉のすぐ横に置く。


 僕が引き換え券を受け取ると、中村さんは「まいどありー。その内引き換え来いよ」と言う。

 「了解です」と返し、その場を退いた。


 ドア付近で佇んで暫くすると、大量の弁当をえちっちらおっちらと運ぶゆっきーくんが現れた。

 ふん、男の癖にやわだな。ん? 僕に手伝って欲しいのかな? しょうがないなぁ、よおし手伝っちゃうよ☆


「持つか……?」


 僕が問うと、腰を屈めて辛そうな顔をしていたゆっきーくんは笑顔になって「ありがとう」と言う。

 もう、男でも何でも良い。可愛ければ性別なんて関係無いのだ。男女平等万歳。


 特別に用意してあったという、弁当の入った袋を一つ受け取る。

 よし、余裕。

 ゆっきーくんの袋だったら何袋でも持てちゃいそうだったので、どうせなら「もう一つ、僕が持つか(キリッ)?」とか言おうかななどと考えていると、尻に何かがドスと置かれた感触がある。

 マッサージは受ける気無いんだけどなぁと振り返ると、宮城島さんがそのロリっぽい脚を上げ、僕の臀部を蹴るようにその足裏を当てている事が明らかになった。


「さっさと私のも持つ……」

「余裕で二袋持てそうなんですがそれは」

「うるさい。持つ……」


 何で僕がアンタの分も……と思ったが、ゆっきーくんも見ている事だし、ここは一つ僕が男である事を示そうじゃないか。

 そう決め付けて、宮城島さんから一袋を受け取る。

 僕が二袋、ゆっきーくんと宮城島さんがそれぞれ一袋ずつ持ち、その場を後にする。




 三人で向かったのは北校舎のとある教室。立ち入り厳禁区域にあり、どうやらここが今日明日の生徒会の本拠地らしい。


 ゆっきーくんがドアに手を掛け、丁寧に引く。


「みんなー、お昼ご飯買って来たよー」


 アハ、可愛い……っとぉ、いかんいかん。彼は男。男は彼。女子じゃないんだぞしっかりしろ。女子じゃない、女子じゃない……女子じゃ、ないのかぁ……。


「おーサンキュー」

「ありがと。そこ、置いといてー」

「うん」


 僕もおっかなびっくりしながら入室し、指示のあった机に弁当の入った袋をまとめて置いていく。ふぅ、大変な仕事だったぜ……。残業代は出るのかしらん? まぁある訳無いんだけど。


 一息ついてぐるりと教室を見回す。

 弁当の数の割には人が少ない。僕たちの他には五人しかいないのだ。

 恐らく他は外での仕事があるのだろう。

 残った人間はMac一台と共にあーでもないこーでもないと、ディスカッションに取り組んでいる。

 みんな仕事に夢中なようで、僕には誰も気を留めない。ヤバ、この忍者スキルの高さですよ……。


「じゃぁ、僕戻るけど……」


 一応声を掛けて行こうと思い、別れの挨拶を口にする。


 ゆっきーくんは「ありがとうね」と、僕が蕩けるような笑顔でそう言う。

 やはりキョドってしまい「い、いや……」とかいう、何が言いたいのかよく分からないゴニョゴニョした返事をしてしまう。


「水野……」


 声がし、そちらを向くと、主は通常通りスマホをいじっている宮城島さんだ。何、もしかして「ありがとう」とか言ってくれちゃうの? かと思ったが、別に全然そんな事は無かった。


「大川井の事……宜しく」

「はぁ……? 何、宜しくって……?」

「意味そのまんま。……とにかく頼んだ」

「はい……?」


 何か頼まれてしまったが、意味がさっぱり不明だ。さっぱりし過ぎで寧ろ味ぽんまである。いや無いな。


 ──大川井の事……宜しく


 何、娘を頼んだとかと同じ意味? あの人もらっちゃって良いの? 確かに話は凄く良いんだけど……性格がなぁ……。あと、ハイスペック過ぎて僕と不釣り合い……ってかどういう意味だってばよ。


 分からなかったが、それきり宮城島さんは発言しなくなってしまったので、恐らくだが、僕に伝えるべき事柄は伝え終わったのだろう。全然伝わってないけど。


 まぁ良いかと決め付け、ゆっきーくんに軽く会釈し、教室を出た。


 で、えっと……何するんだっけ? 帰宅……じゃないんだよなぁ。一応教室戻るか……。


 のそのそと歩き出した。

 最後までお読み下さりありがとうございます。

 新年初っぱなに投稿して息巻いておきながら何で投稿おせぇんじゃ、と皆さんお思いになられていらっしゃるかも知れません。すみません。忙しいんじゃ。

 で、これからも忙しくなりそうで、ストックも無くなってきたので投稿ペースが落ちると思います。重ねてお詫び申し上げます。

 忙しくなくなるまで(イライラしながら)お待ち下さい!

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