第44話 ドラマとかアニメの文化祭って、何であんな高確率でロミジュリやりだすの?
こんにちは。
最近寒いです。
何かに当たったらしく腹を壊しました。自分史上、最も壮絶な苦しみを味わいました。死ぬかと思った……。
自分みたいにならないよう、皆様もご自愛下さい。
文化祭で何をやるかについてはGW前に一度話があった。
「あー、まぁそろそろテスト勉強したいという気持ちもあると思うが、今日は文化祭についての話だ」
「おー」「ついに来ましたー」などドンドンパフパフ(どっから鳴ってる?)と、歓声と音色が響く。
小澤望先生は説明を開始した。
「分かってると思うが、六月のアタマ、金土の二日間で文化祭が催される。そこで、21HRとして何をするかという──つまりは出し物の話だ。開催まではまだ一ヶ月あるが、準備期間は勉学を疎かにしないために原則としてテスト後の二週間強という事になる。期間が限られている。それまでに実現可能な物、クラス中が参加出来る物にしろとのお達しだ。時間が無いからな、この時間の中で決定する。……何か意見がある奴はいるか?」
先生が言い終えるとクラスからは「マジかー、やっぱ短くね?」「それなー。ってか何やる何やる?」みたいな声がちらほらと聞こえてくる。
この学校、文化祭までの期間が異常に短い。一体二週間で何をしろと。
そんな期間では大した物は出来ず、去年も最初は劇やろうだどうのなどと言っていたが、やはり無理だという事が判明し結局簡単なカフェみたいな物になってしまった。
で、何かというと時間が無いのだ。
僕が頬杖をついて周りを見ていると、一名の男子が声を上げた。
「演劇とかって、どーすか!?」
ほぼクラスの中心に位置する席に座っているのは頭丸刈り野郎だ。何だっけ名前。えっと……分かんないなまぁ良いや。
ってか何言ってんだコイツ。だから時間が(ry
何だかバカみたいに「面白そう!」という顔をしている。まぁああいう奴は往々にしてその通りである事が多い。つまりアイツの名前は馬鎌 留狩とかそこら辺だろう。知らないけど。
丸刈りの発言にクラスは少しざわつく。
「何やるロミジュリ?」とか「面白そうだけど……」「無理くね?」という声が耳に入ってくる。ってか最初の疑問何だよ。疑問じゃなくて自分やりたいの言っちゃってんじゃん。
しかし聞いていると、どうやら困惑めいた発言が多いように思われる。
そりゃそうだ。こんな短い期間で、脚本、俳優、衣装、機械類を準備するのは勿論、他にも練習や開催の告知などやらなければならない事は大量にある。クラスに配分される予算もそんなに大きい物ではないだろうし、演じる場所の問題もある。もしやるとしても体育館は文化部展で使えないし、教室は狭過ぎる。
劇は規模が大き過ぎる。途中で破綻したり、中途半端な物を演じるリスクを高めたりする恐れがある。それよりかは、身の丈にあった展示等を完璧に仕上げる方がベターだろう。
僕が丸刈りを見ていると、先生も僕と同じ考えに行き着いたらしく丸刈りに言う。
「うん……確かにクラス全員で出来る物ではあるが、流石に時間的に無理があるぞ。……それに、学校と生徒会から許可が下りるかも分からないな」
おおっ流石大人。大人っていうのはちゃんと先を見据えてリスクとリターンを考える人の事だと思いましたはい。
しかも、よく考えると確かに許可が下りるかどうかの心配もある。許可を取らねばならないというのは、つまりクラスでの決定後にそれをするという事だ。もしクラスで「演劇? ウェーイ!」とかいう空気になっているにも関わらず、それが却下されるとしたらダメージはなかなか大きいだろう。上げて落とすのが、やる気を削ぐ最善手だ。
「えぇ、マジすか……?」
丸刈りは諦めきれない様子で少し肩を落とす。ってか何でそんなに演劇やりたいの高校生は? ロミジュリ教徒なの?
一つの案が却下された事により再び皆がざわざわと相談し出す。
……何というか、バカみたいに暇だなこの時間。こんなんやる位だったら英語の勉強に分けて欲しいぜまったく。
まぁでも日本人が英語やるとかね、ホントはね、もうね、甘えですよ甘え。あんなたった26文字しかない物に頼るとか日本語出来ませんみたいなもんだからねうん。
しかも日本に居ると使う機会が全く以て無い。金閣寺を紹介する時に「Kinkakuji Temple」と言って「それ寺寺じゃん。マジ卍なんだけど、ウケルー」ぐらいしか用途が思い付かない。
あと何で最近あんな英語の歌詞のある歌多いの? 日本人が聞いて分かる歌詞にして欲しいんだけど。
で、何が言いたいかというと、英語が出来ません。
と、こんな感じに脳内で自分の意見を作り裏付けと批判をする事で、文章力の向上と共に自身の考えの正当性を改めて感じ、しかも精神が強くなるという三つの良い事がある。素晴らし過ぎる。皆さんにもオススメ。ただ唯一の欠点としてはその考えが誰にも伝わらないという事。ってかそれオススメ出来ないじゃん。ボッチの為せる技でした。
というように独リア充レベルをガンガン上げていっているのだ。誰得だよ。
「んじゃあさ、喫茶店とか良くない? タリーズ的な」
今度は教室後方。
茶色っぽく──染めてんのか……?──見える髪をまっすぐに下ろしている女子だ。
アレはえっと……藤ヶ谷……湍さんか……。確か大川井さんとやり合ってた人だ。アレはどうなったんだろう……。
ってかあなたも清水駅周辺ユーザーなのね。
彼女は続ける。
「喫茶店なら期間とかの問題なさそうじゃない?」
まぁ確かに。喫茶店ならそれまでに店内の準備や下ごしらえさえすれば、後は当日頑張るのみだ。僕の去年のクラスもそんな感じだった。
だが──
「──それって、お金どうするの?」
鋭い指摘が飛んだ。……大川井さんだ。
藤ヶ谷さんはキッと発言者を睨む。
クラスが静まった。……こんな時に喧嘩とかおっ始めないでよ。
「店内部の装飾は除いても、喫茶店とやらで出す料理の食材費なんてバカになんないわよ。予算をオーバーしても儲かれば取り返せるけど、損失が出たらどうなるのかしらね?」
大川井さんは片目を閉じて小馬鹿にしたように藤ヶ谷さんを笑った後、小澤先生を向く。
先生は意を受け取ったらしく口を開く。
「……学校からの予算の配分は既に決まっている。超過した経費や損失分の補填費用は出せん。そもそも、限られた予算内で作品を仕上げる、というのも目的の一つだ」
大川井さんは再び藤ヶ谷さんを見て「だそうよ」と言う。そしてわざとらしく声のトーンを上げる。
「……ということは、個人のお金で超過経費も出して補填もしないといけないって事ね」
それを聞いた藤ヶ谷さんは、さらに怒りを募らせてしまったようだ。
「……なら、損出さなきゃ良いだけの話じゃん」
「へぇ自信あるのかしら。まぁ明らかにおかしな経営をしなきゃそれなりの利益は上がると思うけど。でも他にも調理器具の借用、搬入とか、調理する人間、ウェーター、ウェイトレスの選抜、会計、店への勧誘とかも考えて言ってるのよね? あと、一週間前までに保健所に申請もしないとね。でないと店は出せないし。そこまで考えてるなんて凄いわ」
大川井さんはにっこりと笑ってバカにする。
しっかし……よくもまぁこんなにネガティブになれるな……。そんなに藤ヶ谷さん嫌いなのかしら。
「あ、でも大事な事、一つ分かってないみたいね。まぁちゃんと調べれば分かる事だけど」
「……何?」
藤ヶ谷さんはジトッとした目で大川井さんを睨む。
「生徒会も喫茶店やるのよ、調理室使って。どっちに人が集まるかしらね」
大川井さんはニコリとしてとどめを差す。
終わった……な。やっぱりこの人、喫茶店に恨みでもあるんだろうか。徹底的に潰しに行ったなぁ。
大川井さんの言う事には筋が通っている。
ウチのクラスの去年なんかも、人員の配置が下手くそで、僕なんかは看板持って外に行かされたが暇過ぎて途中でエスケープしてしまった。聞く所によると、店内では客が多くないにも関わらず厨房がてんてこ舞いになってしまったとか。忙しい人間と暇な人間が同時に存在していたのである。
幸いにも店は利益を上げて閉店と相成って、利益分は皆に分配された。ねぇちょっと僕の分は……? とか考えてはいけない。まぁ何もしてなかったし良いんだけど。
大川井さんの話し方も最悪だった。話の術とか使わずにただただネガティブを積み上げていくという。
最後の生徒会とのバッティング話で皆もアンチ喫茶店になっただろう。
まず生徒会という時点で何か強そうだ。今の生徒会は真面目だから、もうメニューとかも考案して保健所に申請を出しているかも知れない。
次に生徒会のやる喫茶店の場所だ。調理室は校舎一階にある。しっかりとした調理器具が使用できるだけでなく、学校に来る人が殆ど通る。また一階にあるので、教室は直接外とも通じている。故に校舎内、校舎外の二つの出入口を設ける事が出来、集客も容易だ。
これに一般クラスが即興で作った喫茶店が勝とうとは、実に荒唐無稽である。
これに皆も気付いたはずだ。
クラスには不穏な空気が立ち込める。ならダメなんじゃないかとか、なかなかムズいななどとそういう言葉もあちらこちらから、音量は決して大きくはないが聞こえてくる。
小澤先生はその様子を見兼ねたか、声を発する。
「大川井、もう良いだろう」
「はい、結構です」
あっけらかんと答えた。
「……確かに良い案だったが、そうやって金が絡んでくると色々と面倒な事になる。藤ヶ谷、今回は残念だが折れろ。文句は生徒会と教育委員会と保健所に言え。手伝ってやる」
手伝っちゃうのかよ。この人、学校とかに楯突きそうだしなぁ……。ってか保健所何も悪くなくね?
藤ヶ谷さんは大川井さんを恨めしそうに見て「文句なんてありません……」言って着席した。取り敢えず、今回は大川井さんに軍配が上がったって事か……。いやぁ怖いなぁ……。
小澤先生は大川井さんに問い掛ける。
「大川井、散々言ったんだ。他に良い提案の一つくらいあるんだろうな?」
大川井さんは「そうですね……」と言って暫く考える。そして、小さく首肯する。
「それなら私は──」
最後までお読み下さりありがとうございます。
前回まで「テスト勉強」などと銘打っておきながらこの体たらく……お詫びの言葉もございません。次の次にはテストなので許して下さい。テヘペロ☆ はいすみません。




