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面倒な僕を助けてくれ  作者: 柱蜂 機械
第三章 二年一学期編
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第43話 テスト勉強(笑)[6]at home with Sora

 おっひさーしぶりでーす。

 はいすみません。

 僕は今リビングに居る。食卓に体を向けて座っている。


 例の、大川井(おおかわい)(はなだ)から鍵が預けられた日からそろそろ一週間強が経とうとしていた。というか、つまり明日がテスト実施日だ。最後の追い込み的なのを掛けねばなるまいが、何なんでしょう、テスト近付くにつれて勉強したくなくなる症候群って。頭が勝手に「一日やったってもう変わんねぇよォォッ!?」とか無意識の内に思っているのだろうか。ついついダラダラしてしまうのだ。

 今なんかも意味も無くあの鍵をつまみ上げ嘆息している。これ、ペンダントの錠とか開かねぇかな……。


「どうしたのお兄? また目死んでるけど」

「もう目だけ取っ替えてくんないかなぁ……」


 何で皆「目」「目」って言うのかね。女々かよ。どんだけ女性らしいんだよ。


 (そら)はよっこいせと、一仕事を終え僕の真正面に座る。


「流石にそれは無理だって。でも、お兄のそれは、まぁチャームポイントの一種だって」

「どこが……。んな事言ったらバイオのゾンビとか魅力的過ぎて人惹き付けまくりだろ。どんだけモテんだよ」


 引き付けるとかバッティング上手そうだな。


 空はわざとらしく手を広げ、はぁとため息をつく。


「そういう事言ってるんじゃないんだよなぁ……。折角女の子が褒めてるのに。やっぱお兄はそういうとこがゴミぃなぁ……」

「はいはい……」


 空は湯呑みの茶をズズッとすすり飲み、ぷはぁと息をつく。おい、可愛いな。

 そして何かに気が付いたように尋ねてくる。


「で、お兄、それ何なの?」

「ん? これ?」


 僕は左手を開き、テーブルに鍵を置いた。


「部室の鍵」

「あぁ……。何だっけ……? えっと、ぶん……文化部? みたいな名前だったけ?」

「まぁ間違っても無いが、厳密に言うと間違ってんな……。正しくは文芸部な」

「あぁそれそれ。それが言いたかったの。でも、何でお兄がそんなの持ってんの? エンチョー行って無断で作ったの?」

「犯罪だろそれ。……部長に預かったんだよ」

「部長……。あぁ! えっと……大おかわり……みたいな名前だっけ?」

「何ソイツ、どんだけ飯食うんだよ。『大川井』な」

「あぁそうだっけ」

「名前うろ覚え過ぎだろ。逆に凄いわ」


 僕が言うと空はテヘッ☆と片手拳を頭に添える。

 クソ……流石に我が妹。可愛いなぁ……。

 気だるげそうな目と小さく出された舌が、何だか知らんがマッチしている。多分そんじょそこらの女子がやってたら「キモ……何アレ可愛いアピールっすか……?」とか思ってたりする所だが、空は実際に可愛いので何の問題も無い。まぁ恐らく宇宙一可愛いんじゃないでしょうか。


 空は「あ~」などと言って天井を見上げる。


「アタシも会ってみたいなぁ、その大川井って人。お兄が進んでパシリになるなんて、その女性(ヒト)どんだけ可愛いんだろ」

「進んでないけどな……。でも、止しといた方が良いぞ。自分が世界で一番可愛いとか思っちゃってるんだぞ。男にはバカみたいに言葉汚いし」

「え、そう? 強い女の人って憧れない?」

「あ、そう……?」


 えぇ……空ちゃんもそういう娘になっちゃうのかしら……。

 僕はがっかりして空の出した茶を飲む。


「ねぇ、お兄って好きな娘居ないの?」

「ン!? ……ゲッホ……ゴホッ……ちょ、ちょっと……何言ってんの?」


 空は「おー」と言ってパチパチと拍手をする。どうやら茶をぶっ飛ばさなかった事を評価しているらしい。いや、そんな事より……。


 空は首を傾げ怪訝な顔をする。


「だってさ、お兄の話聞いてるとさ、最近女の子周りに多くない? って思うんだよ。何かおかしくない? お兄だよ?」

「いや……まぁおかしいかも知れないけど、そうなっちゃってんだからしょうがないでしょうが」


 うぇ……喉が苦しい。お茶、変なとこ入った……。


「やっぱ、そう言うよね……。まぁそれは良いや。だからさ、そんな状況なら、いくらお兄だからって好きな娘の二人や三人はいるでしょ?」

「僕はそんな浮気性じゃねぇよ」

「んじゃ一人は?」

「居ない居ない。好きな奴なんて居ないよ」

「ホントのとこは?」

「だから、居ないって」


 僕がげんなりして返すと、空は怒ったように眉を顰める。


「……強いて言えば?」

「強いて言えば? えー……ポニーテールが可愛くて美人で運動出来て料理も上手くて実はお兄に凄ーく優しい妹、かなぁ……」


 他には空とか空とか空とか。あと空かな。まぁあと一人言うなら空だな。うんまぁこの位だろう。そのムスッとした表情も可愛いっすね。


「はぁ……やっぱお兄はお兄のまんまかぁ……」


 呆れられてしまった。いや何でだよ。


「そんだけお兄、女の子と一緒に居るんだったら何か変化あると思ったんだけどなぁ……。お兄の女の子センサーは感度ゴミだからかなぁ」

「『女の子センサー』って、もっと名前工夫しろよ。ヤバい言葉にしか聞こえないんだけど。ってか別に、お前に心配されるような事じゃないからなそれ」

「いや、それアタシにとって超大事だから。お兄がどこかの鈍感難聴主人公みたいになったらキモすぎだし」

「どこかのって何処だよ?」

「え? だから、吸血鬼になっちゃった人とか、ギャングの娘と恋人なっちゃった人とか──」

「分かったから、もういいや、言わなくて。聞いた僕が悪かった。ごめん」


 その内もっと色々な人が出てきそうだったので取り敢えず止めさせておく。うーん、やっぱ一緒にアニメとか見ちゃうとそうなっちゃうのかなぁ……。


 僕がそう考えていると、空はまたしてもため息をつく。


「そうなんないか、アタシ心配なんだよね……」

「……別に、その点は問題無いと思うけど」


 そうだ。鈍感難聴? ふざけてるのか、あんなの有り得る訳が無い。物語の中ではよくある事だが、現実では絶対に起こり得ない。相手が恥ずかしがって顔が赤いのを「熱でもあるのか?」とか聞いたりしないし、ニコ動で「え? 何だって?」と、ネタにされるような事もしたりしない。僕はそういうのに敏感だ。今まで女子と接しなかった所為で、肩が少し当たっただけでも「すすす、すみましぇん……」とか言っちゃうくらいには敏感だ。違うか。

 さらにコイツ僕の事好きなんじゃね的な事をいつも意識している位にも敏感だ。自分が落としたシャーペンを拾ってもらっただけでアレ僕の事……とか、考えている。勘違いも甚だしいが、それによって僕は今まで生きているのだ。


 所詮はその勘違いも女子に対する僕の甘い期待でしかない。そして、期待して、いつも自分が転んでいる。


 だから、勘違いも期待も自分の中で完結させる事にしたのだ。決して勘違いを悟られないように。本当がそこに来るまでは、足を踏み入れず、手を伸ばさず、首を突っ込まず。ただ待つ。待って、来なかったらそれで一件落着だ。あぁ、結局勘違いだったのかと、そう思って終わるだけだ。もし、勘違いでないとしたら、それはそれで歓喜すべき事だし素直に受け入れたい。まぁ、()()()の話だ。

 しかし、結局は鈍感難聴主人公さんもそこに帰結するのだろうか。「自分なんか……」と思い込む事で、有り得ない様相を呈す訳だからだ。

 だから疑う。本当に自分を見ているのか、自分を考えているのか、自分が原因なのか、自分を好いてくれているのか、そもそも自分の事なのか。疑ってやる。勘違いは慢心だし、(おご)りだ。もう、そんな物には懲りている。


 僕の言葉を聞いた空はニヤリと笑う。


「……そうみたいだね。その大川井さんも、お兄には、そんなヒドイこと言ってないみたいだし」

「いや……え?」

「だって、他の男子は追い返すんでしょ? だったら、追い返されてないお兄は何な訳?」

「え? いや……え? 何、マジ?」


 空はフフと小気味良さそうに笑って、何も言わずに茶を啜る。


 いや、待てよ。確かに僕は大川井さんには普段の男子のように暴言を吐かれたり、無視されたりはしていない。からかいの対象にはなっているようだが、同時に特別扱いもされている。

 い、いやぁ……? しかし……。それって単にコイツ面白いわね、みたいな風に思われてるだけの可能性が高いし、むしろそれが普通だし、何で前提として空の話があるのかも謎だし、どうしてこんなに必死に考えちゃってんだろキモいなってのもあるし……。いやいやいや…………ねぇ……。


 僕がうんうん言っていると、空はにやつきながら思い出したように口を開いた。


「あ、テスト終わったらお兄、文化祭じゃん。行ってあげるよ」

「……あ? あぁ。まぁ来ても良いけど、何も無いよ、アレ」


 一番の目玉は、吹奏楽部の演奏会ぐらいなものだ。去年も本当に音がデカ過ぎだった。校舎裏で一休みしてた時も五月蝿かったから、こっそり学校を抜け出してマックスバリューに足を運んだのを思い出すなぁ……。


「お兄はああいうイベント好きじゃないもんね……」

「いや好きだよ。人がせっせと働いて、仕事終わっただの終ってないだのって言い争いしてるの見るの超好きだから」

「クズいなぁお兄。よく殺されないよね、凄いわ」

「そうだろう。僕は凄いんだよ」


 だからもっと休ませろ。何であんな人が多い中何時間も突っ立ってなきゃなんないんだよ。看板持つ仕事は一生やらないと心に誓った。


 空は呆れたような目を僕に向ける。


「クラスは……お兄の居場所ないか……。お兄の部活って、何かやんないの? 文化部展みたいのあるんでしょ?」

「ちょっと、何か変なの聞こえたんですけど?」

「気のせい気のせい。で、何かやるの?」

「……いや、そう言われると……」


 そう言えば何も聞いていない。ウチの部活は幽霊同然──部員が幽霊なのではなく、部活自体が幽霊──なのだが、何か催しを開くのだろうか。やんないかな……? まぁそっちの方が美味しいけど。


 空はふぅんと言うと「二年一組って何やんの?」と尋ねてきた。だからそれ僕のクラス。


「あぁ……お化け屋敷、だったかな?」

「えぇ? 劇とかやんないの?」

「あんなのお話の中だけの事だよ。実際は色々あんだよ……」

「お兄関わりも無いのにそんな色々って……」

「あるもんはあるんだよ……」


 やはり勉強など手に付かず、可愛い妹との談笑に花を咲かせてしまう夜だった。

 最後までお読み下さりありがとうございます。

 いやぁ忙しいって大変。ってかこれしか言ってないっていうね。マジで一日28時間ぐらい欲しいんだけど。

 何か謎展開でごめんなさい。次は一週間後かも知れないし、一ヶ月後かも知れないし、一年後かも知れないし、もしかしたら更新されないかも……。

 まぁ待ってて下さいませ。

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