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面倒な僕を助けてくれ  作者: 柱蜂 機械
第二章 春休み編
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第21話 僕が幼馴染みと運命の再会とか有り得ない[2]

 イエーイ! 死ねテストォ!

「本当、に……?」

「うん。本当に」


 僕の問いに、四ノ宮(しのみや)紅葉(くれは)はきっぱりと、答え切った。


 僕の目の前に、彼女が、紅葉がいる……。


 僕が紅葉を見て硬直していると、彼女は不思議そうに尋ねてくる。


「どうしたの?」

「え、どうしたのっていうか……何か、ビックリした……。何にも、変わってないな」


 紅葉をチラッと見る。

 何だか三年前のまま時が止まってしまったかのように何も変わっていない。縦も横も厚みも全く変わっていない。


 紅葉はかぁと赤くなり、反論する。


「か、変わったもん。身長伸びたもん!」

「え……。何センチ?」

「え……? それは、その、あの……」

「ん?」


 さらに一歩、問い詰める。

 紅葉は口をわなわなさせて、俯く。


「えっと……0.……3センチ……」

「……マジか」

「うんホント。ごめんね背低くて!」


 紅葉は目をうるうるさせて頬を膨らます。あぁ……怒らせてしまう……。


「あぁいや、別に良いんじゃないの? 背低くても。ほら、そういうのが好きっていう男もいる訳だしさ」

「え……? そ、そうなの……?」

「そうそう」

「そ、そっか……。なら、良い、かな……」


 紅葉はポンッと、音がしそうなくらいに顔を紅くして少し嬉しそうに笑った。

 よしよし。これで泣かれるのは回避。

 にしても、三年も前の特徴をよく、覚えているな僕は。まぁそれより長い年月の知り合いなんだから当然と言えば当然だが。


 僕はまた一つ、紅葉に尋ねる。


「なぁ……紅葉がいるってことは、アイツも?」


 紅葉はムスッと、頬を膨らませる。


「アイツって言わないの。ちゃんと名前で言ってよ」

「あ、あぁ……。っと……紫苑(しおん)も、いんの?」

「うん、来てるよ」


 紅葉は笑って言う。

 あぁ……いるのかぁ……。久々に会っても嬉しいのか嬉しくないのか微妙ランキング一位のあの人が来てしまっているのかぁ……。


 しかし、紅葉の言葉は続いていた。


「──後ろに」


 え? と思って振り向こうとしたその時、ガッと左腕が掴まれ、手首が曲がっちゃいけない角度を越えて曲げられそうになる。

 イタイイタイイタイイタイ! マジでイタい!


 犯人は、知っていた。


「ギブギブギブ……!」


 辛うじて声を出すと、その関節技らしきものから解放される。

 こんなことをするのは、僕の知る限りこの世に一人しかいない……。


「三年経ったというのに……相も変わらず──いえ、以前と比較すると、弱くなりましたね」


 後方から女性のものと思しき、アルトの声音が耳に入る。


 僕は左手首を右手でさすりながら、振り向いて返す。


「生憎、普段から手首固めなんてされないんでね」

「なるほど。それもそうですね」

「……久し振りだな」


 僕が言うと、金髪少女も頷いた。


「そうですね。お久し振りです、水野(みずの)君」

「……しかしまた、目立ちそうな格好してんだな……」

「そうでしょうか? 確かに今日は普通の日ではないですが、別段おかしなところはないと思います」


 由比藤(ゆいとう)紫苑──金髪ショートヘアの少女は、自らの着ている服装を確認する。

 ──黒のパンツスーツ。普通じゃねぇ……。

 紺色のYシャツに、キュッと締められた黒のネクタイが胸の所で人並み以上にうねっている。しかも、パンツスーツのおかげで全体的に余計にスタイルの良さが表れている。決してアピールじゃないと分かっていても、何だか身長高くなったというか、脚長っというか、そんな印象を受ける。まぁ160とかは優に超えている。三年で二人の間にこんなにも差が生まれてしまうとは……。


 紫苑は納得行かないといった表情だったが、その後ろに控える紅葉は不服そうだった。あぁ……まぁ、あんまり女性を見るのは良くないよね……。


 顔の造形は深いのにそれでいて日本人離れしていない美人顔。キリッとしたヴァイオレットの瞳とキュッと細くなった顎部、日本ではまず滅多に見かけないブロンドに輝く髪。

 それらが、やはり彼女らが戻ってきたのだと、僕に実感させた。


 しばらく黙って見ていると、背後から肩を叩かれる。振り向いてみると、(そら)だった。コイツ……やっぱり……。


「フッ……ドッキリ大成功」


 空はしてやったりと、満足そうにカッコつけて言う。


「……んなことだと思った」

「ホントに?」


 空は懐疑的な目線を僕に向ける。


「当たり前だ。こんな人が多い場所で、僕がそんなドラマチックなことになる訳ないだろうが。どんな確率だ」

「どらまちっく……」


 紅葉が何だか独り言を言っているが、まぁ前からよくあった事だし、とりまスルーの方向で。


「しっかし……、何でまたこんな手の込んだ悪戯(いたずら)を? 冗談がすぎるぞ」


 紅葉と紫苑が僕とまぁまぁ仲が良かったのは覚えている、というか事実だと僕は思ってるし、他に覚えておくべきこともなかった。

 しかし、悪ふざけをするにしても、何年も経っている訳だし、彼女らだって忙しいだろうに、何で僕にドッキリを仕掛けてくるのだろうか。

 確かに、仲は良かった。幼稚園から中一までのつき合いだ。家も近かったし、登下校も一緒になるする事が多かった。いや、うーん……。でも、何でドッキリ? そこが分からない。普通に会うんじゃダメなのかしらん?

 それに、元々こっちにいた別の友達とかにでも、本当はやるべきなのでは? いや、それはそれで迷惑か。ってことはつまり彼女らは、大切な時間を割いてまで僕に嫌がらせをしたということになる。あれ、僕、実は嫌われてた?


 あれこれ思案していると、紅葉が紫苑に尋ねる。


「確か、やろうって言い出したの、紫苑ちゃんと奈津(なつ)じゃないっけ?」


 四ノ宮奈津は、紅葉の妹で、空と同学年である。空と彼女も勿論仲が良かったと記憶している。


 紫苑は一瞬硬直したが、すぐに咳払いをして答える。


「……ええ、そうです。二人の再会が印象的なものになり、少しでも古きを思い出されればと思いまして」

「何で古き思い出す訳……?」


 僕が疑問を以て尋ねると、紫苑はジロリと睨みつけてくる。


「水野君は気にしなくて宜しい」

「え……あ、はい……」


 えぇ……。何で気にしなくて良いのかなぁ? 何で睨まれたのかなぁ? 気になるなぁ。まぁ、この人も昔から怖かったからな。そっとしておこう。

 何か知らんが、印象的にしたかったんだと。謎だね。

 勝手に納得する。できてないけど。

 紅葉の方は少し首を傾げたが、紫苑の形相を見てかビクビクしている。おい……御主人様が泣きそうだぞ。


 空は何だか話題を振ってから一気に静かになったのだが、一連の会話が終わると口火を切った。


「じゃあ、アタシ帰るね」

「え、帰んの? このタイミングで?」


 おかしくね? 例えドッキリでも、互いの再会を喜び合わない、普通?


 空は一瞬ダルそうな目で僕を見たが、あっけらかんなように言い放つ。


「うん、なっちゃんに会ってくるから」

「奈津は既に、静岡の邸宅に向かわれました」


 紫苑が捕捉した。どうやら知らないのは僕だけらしい。まぁそれなら納得だが。何か僕に開示されてない情報多くない?


 そして、ふと気になり尋ねてみる。


「『静岡の邸宅』って……あそこなのか?」

「あそこです」

「あそこかぁ……」


 三年前まで四ノ宮家が住んでいた中々広い家。豪邸、という程ではないのだろうが、何せ庭でフットサルできたし、車おベンツだったし、プール作ろうか迷ったとか言ってたし……。まぁ言っちゃうと、金持ちなのか。


「それじゃ、お兄も頑張んなよ」


 空は僕の肩をポンポンと叩いて、フラフラと行ってしまう。


 ってか、頑張んなよ……って、何を? 


 解せない思いで居ると、空が紙袋を持っていることに気がつく。あれは、土産か……?

 うーん、このタイミングで僕も帰ろうと思ってたんだけど、できそうにないなぁ。


 ガヤガヤと騒々しいコンコースに取り残された僕たちは、三者が三様に、互いの顔を見つめるという謎行動を取っていた。キョドり担当は僕。慌て担当は紅葉。困り担当は紫苑。


 最終的には紫苑が面倒臭くなったようで一言口にした。


「少し、場所を変えましょうか」

 最後までお読み下さりありがとうございます。

 一週間振りですね。いやぁテスト辛い。特に英語。マジで何言ってんのか分からん。ここ日本なんだが……?


 それは兎も角として、漸く物語が動き出した感有ります、自分の中ではですが。もう暫く、多分物語内の時間がGWに行くまではたらたらかと思いますが、もし宜しければお付き合い下さると自分としても幸いです。

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