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面倒な僕を助けてくれ  作者: 柱蜂 機械
第二章 春休み編
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第15話 いざ、さらば[2]

 こんにちは。日曜って色んな事にやる気が出ませんねw

 靴を履いて家の外に出ると、姉──水野(みずの)(うみ)が怪訝そうな表情で僕を見ていた。


「何、取ってきたの?」

「カメラ」


 短く答え、鍵をガチャとかけて、てててっと家の向かいへと移動する。

 ブラックペアン──じゃなくてブラックデジカメの電源を入れ、家全体と海、(そら)が被写体人物になるように構える。


 僕のこの行動が何なのか分からなかったか、姉はボーッと、突っ立ったままこちらを見ていた。


「……取り敢えず、何かポーズ取って」

「ポーズ……? 写真撮るの?」

「そうだよ。はい、空も姉ちゃんの隣入りな」


 空は自分を指指して目を丸くする。


「え? アタシも? いや、いいよ」


 両手を前に出してブンブンと(かぶり)を振る。そして、たったかとカメラの画面外へと出て行った。


 遠慮してんのかなぁ……。


「まぁ良いか。……じゃあ、姉ちゃん行くよ」

「え、あ、待って……」


 姉の慌てた様子と僕たちの家をしっかりとレンズで捉え、ピントを合わせてシャッターを切る。


 カシャリ。

 

 申し訳程度の機械的シャッター音が鳴り、現実が保存される。


 姉は、はっとしてプンスカ怒り始める。


「ちょ、ちょっとぉ、待ってって言ったじゃん!」


 頬をプクーと膨らませて、腕をブンブン振る。子供か……と、ツッコみたくなるもなるが、実際まだ未成年だし、そっちの方が可愛くてモテるんじゃないですかと思い込み、ハイハイと言って再びカメラを彼女に向ける。


「今度はポーズ取ってからで良いよ」

「う、うん」


 姉は答えると、あれやこれやと手を(せわ)しなく動かす。


「……何してんの?」

「ポーズって……何すれば良いの?」


 あぁ……そういうことね。まぁポーズ取れって言ってもすぐ自分で決められる訳じゃないしな。


「別に良いよ。家の前で、笑って立ってれば」

「あ……そう?」


 姉は少しだけ顔を紅くして、モジモジしてからにこりと笑う。


 いやぁ、そういう反応されてもちょっと対処に困りますね。

 でも、笑顔の方はというと満点をあげても良いくらいの優しそうなものだった。


 よし、これなら良い写真が撮れそう。主に被写体とカメラの性能によって。


 カメラの画面を除き込み、見えない相手に呼び掛ける。


「いくよー、はい、チーズ」


 またもカシャリという音が鳴り、姉のにこりとした顔が写っている。

 

 保存した写真を見て思わず苦笑する。

 いやぁ、はい、チーズなんて言ったのは何年振りでしょう。いや、言ったことすらないかも……。それなのに案外と、すらっと言葉が出てきたことに、僕自身ちょっと驚いている。

 もっとも「チーズ」は、撮られる側が発音した時に口角が上がって笑顔になるように、なんてそんな理由でそうなっている訳で、実際撮られる側が「チーズ」と言わなければ意味がないのである。まぁ、言っても詮ないことではあるが。


 僕は再びカメラを戻し、家の左手に寄っていた空に呼び掛ける。


「空も姉ちゃんの隣入りな」

「え、アタシは──」

「いいから」

「分かったけど……。あ、でもやっぱ三人の方が良くない?」

「いや、良くないけど……」


 まず、自分が被写体になるというのがどうしても嫌だという点。

 次に、誰かと一緒に撮られるのがどうしても嫌だという点。

 さらに、身内とは言えども女子二人と一緒に写るという罪悪感にも似た面映ゆさがどうしても嫌だという点。

 最後に、そうなってリア充してる感が出てしまうのが何となくどうしても嫌だという点。


 以上四点から僕は写りたくないんだけど……。


 そんな長ったらしい説明をする暇もなく、空はキョロキョロと家の周りを見渡す。

 あれ、不審者いるって通報されちゃうよ。でも、こんなに可愛いんだったら多分お巡りさんも許してくれるはず!


 あっと言うと、空は僕の後ろの塀をポンポンと叩く。塀だけにHEY HEYってか。


「お兄、カメラここに置いてさ、何? あの、時間差で撮れるヤツ。アレやろうよ」

「セルフタイマーね。ってか人んちだよ、そこ。しかもちょっと塀高いし……いや、でも、良いのかなぁ……」


 少し撮る位置が高くなっても、実は問題ないかも……。

 今まで身体全体を写してたから、低い位置にカメラを合わせていたが、これ、下半身とか切れても別に大丈夫ですよね。むしろ狙った感があって、僕カメラの扱い上手すぎ! とか勘違いしちゃうまである。


 よしと決め込んで、向かいのお宅の庭に不法侵入する。どうやら留守らしい。半ば盗人気分である。

 こういう時、庭にBOW BOWとか鳴いてくるアメリカンなドッグが居るのがお決まりではあるが、居ないので安心。


 こそこそと庭を移動し、塀の上にデジカメを置く。ちょこっと、ほんの薄い小石をそこに挟む。

 画面を覗くと、やはり見立て通り海の下半身が切り取られているものの、その代わり家全体がよく写っている。

 幸い、僕達の家は太陽に向かう南向きなので、逆光の心配もない。


「お兄、早くしてよ」


 空が斜め向かいから塀に手を掛けて、焦れったそうに言ってくる。ってか、やっぱ僕も撮んのね……。


「ちょっと待ってな……」


 僕はちゃっちゃか画面を操作し、撮影設定をセルフタイマー10秒にセットする。


「姉ちゃんと空は、先にそっち行ってて」

「はーい」


 空は返事すると、たったか姉の方へ駆けて行き、腕を取る。二人ともにこにこ笑顔である。うおぉ……これに、僕が、混ざってしまって……良いのだろうか。

 両手に華という言葉を良く耳にするけど、持たれてる二つの華ってどういう気分なんだろうか。何コイツ、ニヤニヤしてるキモッとか思ってるんですかね。

 僕が入ると見栄え悪くなるどころか、インスタバエとかいう虫が発生しそうである。良いのかなぁ……。


 少しばかり躊躇ったが、もう終わりだからなと、自分に言い聞かせる。


「あー、もうちょっと右動いて……。あ、うん。そうそこ」


 しっかりと空と海に位置を指定し、シャッターボタンに指を掛ける。


「いくよー」

「はーい」

「了解ッ!」


 分かると思うが、順に僕、空、姉である。


 二人の返事と同時にボタンを押す。

 

 ピッピッピッと警告音じみたカウントが始まり、それと同期して赤色ライトが点滅を開始する。


 それから逃げるように、僕はお向かいさんちを飛び出す。やっぱ盗人だったな……。


 十分に残りカウントを残し、二人の右側へ移動し、カメラの方を向く。構図としては、僕達三人は写真の左下に位置していて、中心に近い順に姉──海、空、僕──(りく)である。改めて考えると、安直な名付けだなぁ……。親父、楽したな。


 僕の位置は本当の左隅なので、邪魔にはならないはずだ。


 頑張って笑う練習をしていると──べ、別に普段からキモい笑い方をしてる訳じゃ、ないんだからな!?──ふいに左腕を掴まれる。見ると、僕と空の間に姉が入り込んでいた。


「お姉ちゃん? え、何?」

「ちょっと、何やってんの……?」


 空と僕の驚きに、彼女はしてやったりといった顔でニカッと笑う。


「こーしてた方が、キョーダイっぽいでしょ。お姉ちゃんの言うことを聞きなさいっ」

「えぇ……? っまぁ、別に良いけどさ……」


 空は呆れたと言いたげに、頷いた。


「いや、僕は、ちょっ──」


 赤色ライトの点滅間隔が短くなる。


 残り三秒。


 僕は未だ動揺している。

 こ、こここ、ここれはああああ、あああ悪質タックルってヤツでは!? 監督にやれって言われたのか!?

 いや、だって、アレですよ? 僕さ姉といってもゴミといっても取り敢えず女の子に腕を取られちゃってるけどそればかりか楽しそうな笑顔見せつけられておぉシャンプー良い匂いとか考えちゃうんですよ男ですよあと心臓の鼓動もすごーく速くなってますねええ悪質だな悪質です僕はそんな指示は出してないんだけど、だから──!

 今、僕は相当恥ずかしい姿を──。


「ほら、二人とも笑ってー」

「はいはい」

「だっ、待っ──!」


 その瞬間、カシャとシャッター音が鳴った。

 最後までお読み下さりありがとうございます。

 自分的には、今回はいつもよりネタが多くなった感があります。

 前日は、静岡はほとんどの高校が文化祭でした。そのノリの所為ですかね。

 次の回が多分問題です。鉄道ネタが豊富に含まれる模様です。


※お嫌いな方は飛ばし読みするかブラウザバック推奨。

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