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面倒な僕を助けてくれ  作者: 柱蜂 機械
第一章 入部編
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第9話 お昼ご飯[2]

 フハハ、待たせたなぁ!


 いや、投稿遅くて普通にすんません。

 僕は逃げるようにして購買の人波に飲まれた。人間が多くて助かるのはこういう時ぐらいのものだ。

 

 いつも通り焼きそばパンを購入し、ついでに、飲み物を忘れたので自販機でブラックを手に入れる。

 フタを開けて中身を口に流し込む。少し苦めの味がして目が覚める。

 ブンブンと頭を振り、約束の地、と言うと何か格好良いが、その渡り廊下へ向かおうとする。

 廊下を歩き出した時、目の前にぬっと人影が現れ僕の両肩をがっしりと掴む。


「おい、水野(みずの)。アレは一体どういうことだ?」

「お、おおぅ……ビックリしたぁ。お前かよ……。ん? 何だ『アレ』って?」


 急に現れたのは僕が唯一まともに会話できる級友、深沢(ふかざわ)(れん)だ。明らかにパリピ感が漂っているがれっきとしたオタクだ。

 しかし、彼も一人の少年。

 深沢は抑え切れないといった様子で僕に畳みかける。


「アレはアレだ! 何で大川井(おおかわい)がお前ごときとランチ、ンゴッ!?」

「バッカ……! 声がデカい!」


 僕は手で深沢の口を押さえ、辺りを見回す。幸い、混雑によって誰も聞いていないようだった。

 はぁと、安堵のため息をつき、深沢の口から手を離す。すると、深沢は声のトーンを微塵も落とさず喋り出す。


「おい、だから何で、ンブッ!!」

「だからデケェって言ってんだろ……!」


 僕は同じように深沢の口を押さえつけ、肩を持って購買の人だかりを後にした。

 

 「大川井さんとランチ」情報が出回ってしまったら、学校中がパニックになり兼ねない。まぁそんなことを言っても今の情報網は凄いし、明日にはほとんどの生徒の知るところとなっていよう。だから何と言うか、ほんの時間稼ぎみたいなものだ。


 僕は深沢を連れ、静かな廊下を歩く。


 大体、コイツみたいな連中が考えるのは「なぜお前が?」という事だろう。それも一応様々な経緯(いきさつ)があるにはあるのだが、あまり公にはしたくない。というか説明がダルそう。


 とりあえずはそういうことも含めた上で、深沢には説明した。

 コイツは、まぁ学校で一番身近な存在だし何かと問われそうだったので、女子グループ抗争の牽制役であることや、あくまでも仕事としてで、ほぼ被害者とういうことも言い含めておいた。


 深沢は聞いているのかいないのか良く分からない様子で、ふーんだの、ほーんだのと相槌を打っていた。

 まぁ聞く気がないのならそれでも良いんだけど。


 話すこともなくなり暇になったので、コーヒーを啜ろうと缶に口をつける。

 深沢は両の手を後頭部で組み、天井を見上げてポツリと呟く。


「はぁ……、これで水野もリア充ハーレム主人公への第一歩を踏み出した訳か……」


 ブフーッと盛大にコーヒーを吹いた。


「……ゲフッ……ゴホッ、おい……、何……ゴッホッ……、言ってんだ……?」


 体内では、コーヒーが気管支の方まで行ってしまったらしく大いに()せる。

 深沢は目を一度こちらに向けてから、再び天井を見上げる。


「いや、だから、リア充ハーレム主人公かぁ、と」

「ゲッホッ……、何で僕が……」

「だってそうだろ? 挙げると、学年一可愛い大川井(はなだ)、いつでも明るくて天真爛漫の中村(なかむら)(あや)、それとあの不思議ちゃんで名の知れたツインテールの宮城島(みやぎしま)美優(みゆ)、だぞ?」

「え、あの人って宮城島って言うのか?」


 素朴な疑問であったのだが、深沢は目を見開く。


「は? 知らなかったのかよ?」

「うん……」


 そういや名前聞かずにずっと「ツインテール」って心の中で言ってたな……。何か聞くタイミングがなかったし。

 深沢は聞いていないのだが、ぺちゃくりと説明を始める。


「宮城島美優、八組では無口な姿と奇怪な言動から、エキセントリック宮城島で通ってるらしい」

「何そのホテルみたいな名前」

「変人って意味でエキセントリックがついてる」

「まぁ……なるほど」


 確かに変だよね、自分と比べると、ってだけだけど。

 何か失礼にも思えてきたので話を元に戻す。


「で、何でハーレムになんだよ……?」


 深沢はニヤリと笑みを浮かべる。


「よく考えて見ろ。学校で一番勉強できて一番可愛いツンツンキャラに、活発で明るい元気系キャラ、口数が少なくて謎のオーラを放つ不思議キャラ。あら不思議。普通にハーレムのでき上がり、だぞ? おい、どのルートを選択するつもりだ? このヘタレ」

「あぁお前が洗脳されてるのは良く分かった。あと、ルートって言うな。人生はギャルゲーと違う」


 ギャルゲーなんかと言っては怒られそうではあるが、アレはプログラミングされたゲームだ。とどのつまり現実は現実で、ギャルゲーはギャルゲーだ。そこをリンクさせている時点で前提として間違っているのである。


 まぁギャルゲー主人公に転職するのも悪くはないかなぁ、なんてどうでも良いことを考えていると深沢が僕の肩に手を置いてきた。そして、爽やかな顔で言った。


「少年よ、少女を抱け」

「それ完璧ヤバい言葉なんだけど」


 何だ少女を抱けって。しかもコイツ「いだけ」ではなくて「だけ」と発音しやがった。もうエロさまで出てる。

 深沢はそんなことなど気にしない様子でとっとと教室の方へと戻ってしまった。


 アイツは何も言わなかったが、勝手に昼飯場を独占したり、別の相手と昼飯を共にすることになってしまったりしたのは悪かったと思っている。まぁでも、深沢だから良いか。


 僕は止まっていた足を動かし、渡り廊下の方へと向かった。


 校舎を出ると、三階渡り廊下ならではの海風を感じる。南東からのそれは暖かな春の風とも呼ばれるものだ。 

 校舎の上を見る。ぽつりぽつりと白インクを垂らしたような僅かな雲があるだけの空は、ほとんど澄んだ青地のままだった。

 南中を少し過ぎた太陽の下、僕は横に並んだ二つのベンチで昼飯に興じている三人の女子と、女子っぽい男子一人を見つける。

 その中の一人は僕を認めると「おーい、水野ー」とか言って、手をブンブンと振ってくる。あ、今弁当箱から何か落ちたぞ。

 中村さんは愕然とし、落ちた人参をティッシュにくるんでしまった。あぁ、三秒ルールがあるのに……。


 東向きのベンチは右の方に大川井さん、中村さん。左の方にツインテールこと宮城島さん、ゆっきーこと三島くん、といった並び順だ。


 ゆっきーくんは掌よりも少し大きい程度の水色の弁当箱をチョコンと自身の膝上に置いて、小さく手を振ってくる。だから、女子か。

 宮城島さんはちらと僕を一瞥し、何故だかフッと笑った。

 大川井さんは僕を見て口を開く。


「随分と遅かったじゃない」


 あん……? 普通だろうが。

 何だか誤解があるみたいだ。


「いや、ちょっとクラスの奴に捕まってさ。ほら大川井さん目立つから、さっきのも」

「ま、仕方ないわね。私可愛いし」


 うわぁメンタル強し……。他にも女子がいるこの状況で自分可愛いって、言えちゃうとこが常人じゃない。基本、私可愛いですアピールはキモいことが多いが、ここまで堂々と言えてしかも実際そうだといっそのこと爽快ですらある。

 大川井さんの発言を聞いた中村さんはヒヒッと笑う。


「こういうのが縹らしいな」

「どういうことよ?」


 大川井さんが問うと、中村さんがしれっと説明する。


「だって、そんなこと言える女子、他にいないぞ? でさ、男ってそういう、何て言うの? 女王様ぁみたいなのが好きだったりするらしいじゃん? それだからあんなに寄ってきちゃうのかもなぁ、って」

「確かにそうかもだけど、男って何だか知らないけど皆ゴミ虫みたいなのよね」


 大川井さんは残念そうに言う。僕はそれを聞いて、とても残念に思いました……。


 見ていると、こうやってお喋りするのが女子のランチなのかなぁと思い、落胆する。いつも深沢と食べてる時ってろくな会話してないから、マジでごはんがススムくんなんだが。しかも量が少ないから夢の超特急並みのスピードで食べ終わってる。その後は、時間を持て余すのがオチだ。結局一緒に食っている意味がないのである。……何で僕たち一緒に食ってんだろ。?


 考えていると、皆がじっと僕を見ていることに気がく。え、何……? これが深沢の言う、ハーレムの予兆というやつなのか……

 ……なんてことはなくて、中村さんがきょとんとして言う。


「座んないのか?」


 そういえばずっと立ったままだった。何だかそれをずっと見られてたと思うと、少し気恥ずかしくて死んでしまいそうだったので座る場所を考える。

 そのままあぐらは……、ダメだ。パンちらの可能性がある。そんなのを見てしまったらどうなるか……想像もしたくない。

 彼女たちの後ろの手すり……、ダメだ。安定しない。急に振り向かれたら、驚いて、のけ反って、落ちて、死んでしまうかも知れない。しかも、ご飯食べるって言ってるのに一人が後ろから見てるとか、キモすぎて僕が自発的に飛び下りて死んでしまうかも知れない。


 色々含めて考えると、少し距離があるが向かいのベンチに座った方が良さそうだ。

 僕はのっそのっそと歩き、どっかりと腰を下ろした。


 顔を正面に向けると、左から大川井さん、中村さん、宮城島さん、ゆっきーくんと並んでいて、それぞれの体格の違いが一目で分かる。

 やはり、最も身長が高いのが中村さんだ。中々スレンダーな体付きをしている。

 大川井さんもそれに準じる背丈で、スカートから覗く脚がやけに白くて隣の中村さんとの白黒がはっきりしすぎである。白黒つけないのがカフェ·オーレ。

 ゆっきーくんは学ランこそ着ているものの男子平均に比べると明らかに低く、まぁ女子だ。

 宮城島さんは……、いわゆるロリッ娘という奴か。言っちゃうと、ちっちゃい。


 ちなみにウチの高校は男子は詰め襟の学ランにスラックス、女子はブラウスの上に紺のジャケットもしくはベストで、下はもちのろんスカートである。

 今時古臭い気もするが、地方の公立なんてまだこういうのが主流だ。まぁ僕は嫌いではないが。


 さささっとそんなことを考えてると、中村さんから声が飛ぶ。


「おーい、水野。そんなとこで良いのか?」

「そんなとこって……、四メートルも離れてないけど」

「んー……、まいっか」


 中村さんは僕との話を切り上げて、再び身内の会話に興じる。


 結局僕要らないじゃん……。


 僕は焼きそばパンの袋を開けて端からかじる。やはりパンは焼きそばパンに限る。炭水化物+炭水化物=最強 という方程式が成り立つ。


 そして、パンで取られた口の中の水分をブラックで補填する。この組み合わせ、中々に良さげである。学校に毎日来る気になるのはコイツのお陰だ。なかったらサボってたかもなぁ。


 僕がボーッとしていると、不意に大川井さんと目が合う。

 二人とも何だかじっと固まってしまった。大川井さんは喋らないし、僕も口を開かない。

 しばらく、二人の無言タイムは続いた。


 しかし、大川井さんがプイッと顔をそっぽに向けたので、そこでそれは終了した。


 まぁ良くあることだ。人と目が合うと、別に用でもないのに人の出方をついつい窺ってしまう。人が自分にどう接して来るのか、人間はそれを知りたい生物なのだ。


 三月中旬は東風(こち)を伴って、僕たちに春の訪れを告げた。

 最後までお読み下さりありがとうございます。

 gwが有ったのに何でこんなに遅いんじゃボケナスという意見が有ります事は重々承知しております。うん、中々忙しくて…………部活とか。

 そして、来週にはついに中間テストというね。

 はい、ますます忙しくなりそうです。

 気長にお待ち頂ければ幸いです。

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