第4話 オッサン、告白される。
「オレのスキルがさ、【剣術】なんだ」
「オレのスキルは、【隠密】です」
「……お、おう?」
顔を見合せ、頷きあったイスカとコルリの突然の告白に、ノスリはたじろいだ。
ヤイロが泣き止んだと思った途端――これだ、意味が分からない。
「お願いします! ヤイロに魔法指導を、いや、オレたちに指導して下さい!」
「オレからも頼む――じゃなくて、頼みます」
「私もお願いします! 先生!」
「いやいや、俺のスキルは、【収納】だぞ。まぁ、アイテムボックスの方が有名だけどな……、と言うわけで、君たちの師には向いていない。他のやつらの方が、よほど適任だと思う」
餅は餅屋とはよく言ったものだ。どちらかと言うと、アイテムボックスとは揶揄する意味が強い。
便利ではあるが、それ一つを極めたところで人生は成功しない。そういった意味で、癖があるのだ。
――剣術なら剣士、魔法適正なら、魔法を極めるだけで良いからな。
商人ならばアイテムボックスは有利だが、当然、商才がないといけない。接客にプレゼンの対人技能、仕入れの動向や価格設定といったセンスも要る。
「俺は商人ってガラじゃあない。だから、冒険者として生きてきた。ただ、それだけのオッサンだ。それでもいいのか?」
「だってオッサンのナイフ投げ、かっこ良かったぜ! 謙遜しやがって」
「ヤイロへの指導も、すごかったです。ずっと、魔法がうまく撃てなくて困っていたから」
「うん。先生がいい!」
「……はぁ。元々、しばらくはパーティーを組む予定だったんだ。その間、俺はオッサンのお節介を焼く、それだけだぞ」
ヤイロのまっすぐに向けられる羨望の眼差しに、断れなくてノスリは肩をすくめる。
イスカとコルリも、期待を込めて見つめてくるのだから困ったものだ。
「それでも構いません。オレたちは駆け出しで足りてないところだらけだから、冒険者としてやってくって決めたから」
「スキルで使い方が分かっても、うまく動けないしなぁ。オッサンがヤイロ見ててくれるなら、オレはオレのスキルともっと向き合える気がする」
「……いいや、これは大人の怠慢だ。ヤイロが持つような上位スキルは、子どもには強すぎるんだ。スキルが発覚した時点で本来、学びの機会を提示しなければならないというのに。悪いな……俺の、埋め合わせなんかで済ませていいもんじゃないが」
「そんなことない。私、初めてちゃんと魔法を使えたの! 先生の元で学びたい」
「だけどな、ヤイロ……。俺が教えられるのは、あくまでも基礎の範囲だぞ。今度、冒険者ギルドに俺が口利きをしよう。基礎以外も学ばないといけないからな」
「ありがとう。先生!」
「……先生は止めてくれ、ガラじゃない」
わざわざノスリに声を掛けてきてくれた子どもたちだ。路傍で曇らせるには、惜しい原石でもある。
少しでも手助けが出来るなら、それも悪くないかと思った。
◇◆◇◆◇◆◇
それから数日ノスリとイスカ、コルリ、ヤイロの四人は、ダンジョンの一層で基礎を練習し、今日から二層へ進んでみることにした。
「イスカ、下がって! 《フレイム・ショット》」
ゴブリンの群れに向かって、杖を構えたヤイロが火の玉を放つ。イスカは声掛けで横へと跳び避ける。
「はっ!」
火から逃れたゴブリンを、気配を消したコルリが背後から斬りつけた。
それをノスリが離れたところから見ている。
――ショットだけをひたすら撃たせたから、だいぶ安定するようになったな。
パーティーの火力担当にもうじきなれるほど、戦力として動けるようになってきたヤイロ。
二日ほど戦闘には参加させず、ひたすら的当てをさせたのだ。
――ヤイロを気にしなくてよくなった、イスカとコルリの動きも磨きがかかってる。
イスカは火力を重視しなくなり、【剣術】スキルを活用しながら大立ち回りするようになった。
コルリが気配を断つことで急所を狙い、確実に数を減らす。最初の戦闘と、真逆のスタイルへ変わっていた。
「【隠密】の周囲の気配に敏感なところを利用し、ヘイトを管理していたのもありと言えばありだったが……」
冒険者として駆け出しのコルリには、近接戦闘を長時間するだけの技量と経験が足りない。結果、初回のような無茶に繋がってしまっていたのだ。
「【剣術】スキルで一撃の重さに頼ったイスカも、子どもの体躯では火力を発揮しきれないからなぁ」
代わりに、【剣術】スキルで近接戦闘は得意なのだ。今の適材適所で、役割を交代したということである。
「基礎を身につければ、その後はいくらでも応用していけばいいからな」
うんうんと腕を組んで頷いていたら、ノスリの元にゴブリンを片付けた三人が集まってくる。
「ノスリ、どうでしたか?」
「ああ、悪くないぞ。コルリは急所を的確に狙えるように積極的に攻めろ。カウンターのリスクが減る。こればかりは、身体に覚えさせる繰り返しだなぁ」
「はい!」
「私、は?」
「ヤイロは、大分安定して標的に放てるようになったから、小石のイメージからもう少し大きくしてみるか。火力を上げられればパーティーの要になれるぞ」
「ノスリのオジサン! オレは?」
「イスカは倒せるなら倒していかないと。集団相手に怪我をしなくなったのはいいが、囲まれたままずっといるのは良くないな。退路は意識しておけよ?」
「辛口!! でも、わかった!」
子どもたちに乞われるまま、ノスリは先程の戦闘で思ったことを告げた。
コルリは剣を見つめて思考し、ヤイロは杖を握りしめて頷く。イスカは悔しそうに笑っていた。




